28話 王都攻防 一
主人公視点ではありません
光る二つの魔法陣から現れたのは、意外なものであった。
「なんだ?アレは?」
「戦車?」
「戦車だなどう見ても。」
「識別完了、ライブラリに該当あり、国防軍10年式中戦車です。」
三人とも目を疑ったのだが、どう見ても自分たちの世界の自分の国の戦車である。
「もう一つから出てきてる人型はなんだ?」
「見たことが無いですね、会長や亜由美、美奈なら知ってるかも知れませんが?」
「あの手の物はさすがにライブラリにもありません。」
彼らが何か判らずに悩むものをヨウコが見たらきっとこう言っただろう。
「スコ○コキタコレ!」と。
丸い頭部に三つのレンズをターレット状につけた顔、
武器はマシンガンかバズーカの様な物を持っている。
中には盾にパイルドライバーを装備しているものもあるようだ。
大きさは四メートル位とヨウコの用意したゴーレムの半分以下の大きさである。
正直自分たちの世界に実在か想像ではあるが存在しているものが出てきたことに、
困惑しか感じられない若林たち。
同じような困惑は実は魔族の二人も感じていたのだ。
「おいおいおい、なんでござるかアレは!どう見ても護衛艦に大戦中の軍艦でござるよ。」
「しかも陸の上に浮いてるなんぞなんて非常識なのじゃ、責任者でてこいなのじゃ。」
「であるが、神の命でござるゆえ、戦うでござる、戦車隊前にでござる。」
「なのじゃ、戦争の「犬」たちよ、敵を討つのじゃ!」
ここに、剣と魔法の世界で近代兵器?同士の戦いが始まったのであった。
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戦いが始まって若林たちは戦況の不利を感じていた、
倒しても倒しても向こうはつぎつぎと魔法陣から出てくるのだ。
「どれだけ倒せばいいんだ?」
「しかも、あちらの兵器も油断なりません、障壁を貫いてきます。」
「まあ、向こうは百二十mm滑空砲装備だからな。」
「単純に比較はできませんが、砲威力は向こうのほうが上です、
こちらが勝っているのは発射速度と、ミサイルなどのバリエーションでしょう。」
「数に関しては完全に向こうの勝ちだな。」
こちらに残っていた部隊は決して弱くはない、
数もそこそこ居るのだが向こうの数が半端でないのである。
「人型の機動もすばやいのでなかなか当てにくいようです。」
人型のほうは地面をすべるようにして進んでくる、
かなりの速さと俊敏な動きで的を絞らせないのである。
近接防衛兵器(CIWS)でも倒せる装甲の薄さだがその動きでなかなか倒せないのだ。
こちらの部隊の旗艦はこんごうである、
彼女も代行者権限を持っているので正人が居なくても指揮が取れるのだ。
(あぶくま隊後退中、せんだい中破、じんつう、とね小破。)
(いすず、もがみ魔力枯渇のため後退、きたかみ、おおい敵中に孤立)
(ミサイル艇はやぶさ隊救援に向かえ!)
(了解!)
予備として温存されていた六隻のはやぶさ隊は敵部隊に切り込んでいく、
上部兵装は大和の五分の一の五十メートルしかないが、
部隊一の快速で敵の包囲網を破っていく、
「速射砲撃ちまくれ、道を切り開く、対艦誘導弾発射!」
六隻から発射されたミサイルは敵戦車と人型を吹き飛ばし、
包囲されていた味方を救出した。
「こりゃあ、まずいぞ、きりしま、正人に救援を頼んでくれ、
このままじゃ押しつぶされる。」
「了解しました!」
直ちに連絡を取る、遠く鉄鋼王国に居ても衛星通信で連絡がつくようにしたのは、
まさにヨウコの慧眼というべきだろう、
そう思っているときりしまが声をかけてくる。
「すぐこちらに来るそうですが、あちらも首都を魔族が襲撃中で応戦しているそうです。」
「二正面作戦か、いやなやつらだな、あちらも正人に抜けられて大丈夫なのか?」
「判りませんが・・・すぐ向かうとだけ。」
きりしまも判断に悩むようだ、
すでに若林たちのとこにまで人型が迫っており、
迎撃に移らねばならないのであった。
「今のところこちらにだけ攻撃してきて王都は無傷だな。」
「彼らは王都を攻めないのでしょうか?」
「もしかしたら・・・狙いは俺たちだとしたらつじつまは合うな。」
迎撃しながら話していると、不意に転移阻害装置のアラートが鳴った。
誰かが転移してくる。
「来てくれたか。」
そして天空に巨大な魔法陣ができそこから彼らが現れた。
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