11話 招かれざる客
予定より遅くなってしまいました、申し訳ありません。
鬱蒼と茂る森の中を魔導車は進む、一般道並みの速度で進んでいる。
端末の地図で確認しても間違いなく里にまっすぐ向っているようだ。
道案内を買って出てくれた森の妖精は俺の隣に座っている。
「道が整地されてて走りやすいな、樹が生えてたなんて思えないよ。」
俺がそういうと、緑の髪の幼女はドヤ顔で言った。
「妖精の辞書には不可能という文字はないからな。」
大きく出たぞ、そもそも妖精が辞書を持ってるか?
半刻くらい問い詰めたい気持ちになったが、自制した。
運転中だからな。
ドライアドが妙に親切なので不思議に思ったが、
もらった魔力がいつもの数十倍だったのでサービスしてくれているそうだ。
「おいしかったんで、ついいただきすぎちゃった。」
まあ、半分以上持って行ったしなあ、こちらはすぐに回復するからいいけど、
おんなじことされたら普通は死ぬね。
さくさくと進み気が付くと周りが霧に囲まれていた。
「これは、エルフの結界の一つだよ。」
ドライアドが教えてくれた、道に沿っていけば問題ないそうなので、
道から外れないようにスピードを少し落とす、
透視の魔法で霧の向こうを見ながら進む。
しばらく行くと古めかしい石造りの門が見えた。
「あれが、ハーミットの正門だよ、あそこで受付すれば中に入れるよ。」
ドライアドはそう言って車から降りる。
「帰りにも呼んでくれればまた道を開くよ、先払いしてもらったし。」
手を振って森の中に消えていった。
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門の前の受付で中に入る手続きをする。
「ドライアドに案内させてくるものが居るとは・・・」
受付のエルフは呆然としてたらしい、
そんなに珍しいのか?
「彼らに払う報酬の魔力がかつかつで、
みんな何とかたどり着いてたからな。」
冒険者ギルドの証明が付いた身分証を確認しながら受付は首を振る。
「ヒルマの紹介状も持ってるのか、では里長の所に案内しましょう。」
そう言って、受付は隣の女性に案内を命じた。
その命令を受けた女性は・・・ヒルマさん?
「あ、驚かれました?私はイルナ・ ヴィルタネン、ヒルマの姉です。」
そっくりに見えたので俺は相当驚いていたのだろう、
イルナ女史はヒルマと違って少しゆったりとした優雅な服に身を包んでいる。
まあ政府の代表代行のヒルマ女史は少しお堅い格好も居るのだろう。
案内を受けて、里の中を歩く、外は霧が濃いのに中はすっきりと落ちついた世界だ、
やはり見える限りの住居は木で出来ているが、
相当立派なたたずまいで、生活レベルは高いようだ。
向った先には長の屋敷だろう、ひときわ違う建物だ。
屋敷の門番にイルナさんが声を掛けて中に入る、
俺たちもついていく。
「ほほう、神の巫女殿二年ぶりかのう? 息災で何より。」
俺たちは広い応接室みたいな部屋で長と対面している。
ヨウコは以前長と会っているので顔見知りである。
だが、あまり友好的ではない感じだ。
「来て早速なのだが・・・」
ヨウコは世界の歪みを直す手立てを長に話すのであった。
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「・・・・・・・・」
ヨウコの話が終ってからも長は無言であった。
ナニかあったんだろうか、難しそうな顔をしている。
さらに、ヒルマさんの書いた親書(クリストフェルの引渡しをお願いしたもの)を読むと、
さらに険しい顔になった。
「お引渡しは出来ない、お断りすると伝えてください。」
そして断ってきた。
「しかし、洗脳されたままでは・・・」
「洗脳?彼ほどのものならばすでに解いております、ですから心配は無用でしょう。」
「・・・・・・」
「そして、ヨウコ殿、世界の歪みの修正に世界樹が必要とのことであるが、
世界樹は我ら一族にとって神聖不可侵なものであり使わす訳にはいかん、
まして、その身を偽るものなどにはな、神様。」
「!」
なぜ、ヨウコの正体を知ってるんだ?
「我々は、世界樹と共に長い時間をすごしておる、当然改変される前の世界の情報も、
世界樹は記憶しておるのでな、ゆえにこの世界が(複製され、改変された世界)であることも
我らは知りえたのだ。」
その事を聞いてヨウコは真っ青になっている、まさかこの世界の創生の秘密を知られているとは
思わなかったからだろう。
俺たちの側でもその事を知らなかった者たちが居るわけで。
(どういうことなのですか?)
テレーゼが困惑気味に聞いてくる、見ると、ミリヤムやリアンナも同じ表情だ。
(それについては後で話すよ。)
その時、何か緊張を強いられるような雰囲気が部屋を支配した。
「!! 何だ!このプレッシャーは?」
直後、大地が揺れ、轟音が響いた。
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次回投稿は8月3日19時の予定です