閑話3 命名
カン!カンカキィン! ギャリーリィィィィン!
木剣を叩き合う音がこだまする、打ち合うのは、グリーゼとテレーゼである。
森へ向う前に装備の確認と訓練を兼ねた模擬試合をしているのだ。
グリーゼに打ち負けるどころかしばしば打ち込んでいるテレーゼである。
以前剣に関してはテレーゼの方が上だと語ったとおりである。
もちろん、オリジナルであればだが。
今の彼は、正人と一緒になったことで正人の習った剣術も使えるのだ。
そして魔法に関してはすさまじい力を発揮する。
未だにこのギルドの闘技場では魔法障壁が直らないので魔法の使用は禁止になっている。
そのため、魔法無しでの打ち合いになるが、途中から攻守が入れ替わってきている。
グリーゼが今までとは違う構えから剣を打ち込んで来ているからだ、
獣王暗殺未遂犯を倒した示現流の構えからの一撃に、変幻自在の打ち込み、
さらには抜刀術などこちらの世界では見た事も無い剣法である。
基本的には日本刀用なのだが。
「ここまでにしよう、お疲れ様。」
「流石ですね、最後の方は受けるのがやっとでした。」
二人はタオルで流した汗をぬぐいながら、お互いを讃え合う。
ギャラリーも好勝負に喝采を挙げる。
「テレーゼ、凄い!」 亜由美たちが声を掛ける。
「剣を振るうのも久々でしたのでうまくいくかなと思いました。」
「そんなことないよ、あんな斬撃の速さ追いつけないよ。」
次に闘技場に上がったのははつゆきである、手にはあの軍刀がある。
相手は、黒鋼と呼ばれる鋼のインゴットである。
これを台の上に立てると、居合いの構えをとる。
しん、と静まり返る闘技場、そして、爆発的な闘気が膨らんだと思ったときにはすでに抜刀していた。
そして、刀を鞘に収める。
「チンッ」 刀が収められる。
直後、インゴッドに変化が起きる、塊に線が走ったかと思うとそこから切れ目が出来、ばらばらになったのだ。
「「「「オォォォォオォォォォ!」」」」
「凄い、あんな一瞬でどんな事をしたらあんなにばらばらに出来るんだ?」
「全然見えなかった。」
「神速の斬撃だ!」
闘技場から降りてくるはつゆきは無言だったが、満足しているようだ。
してなかったら、「つまんないもの・・・」を言うはずだからな。
「はつゆきも凄いね、その刀も切れ味がものすごいけど。」
「そういえば、この刀名前とかあるんですか?」
美奈がそう質問すると、 「名前は無いの」とのことである。
しかし、神剣級の刀が名無しなんて変な感じなので、名前を付けようということになった。
候補を考えて夕食後に決めようという事になった。
そして、次に上がったのは、リアンナと亜由美だ。
亜由美もこちらに来る前に神の元で修行をしており剣術はできる。
だがリアンナの中身はギリルなのだ。
彼女の剣は魔法無しでも苦戦するだろうと思った。
結果は当然ながらリアンナが勝った。
やはり、ギリルの剣術が上回っていたようだ。
「リアンナ、良くやったな。」
「えへへ、褒めてもらっちゃった。」
そして、早めに切り上げた俺たちは、宿へ戻るのであった。
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夕食が終った後、みんなであの刀の名前を考える。
「虎徹」 「菊一文字」 「正宗」 「クサナギ」 うーんなんかしっくり来ない。
はつゆきも同意見のようだ。
「同田貫」 冥府魔道に落ちそうなので却下。
「鬼切」 強そうだけどねえ。
「天羽々斬 」
これは、なんかいいかも、由来を聞くとスサノオがヤマタノオロチを切った剣だとか。
「その名前気に入った、命名したい。」とはつゆきも賛同して、
正式に名前を付けた。
刀を抜いて掲げはつゆきが告げる、「命名する、汝の名は天羽々斬 」
刀は一瞬光るがまたそれは収まった。
「喜んでる、いい名前をもらったと、礼を言ってるよ。」
見るとさっきよりも刀身の輝きが増しているようである、
それを見ていた俺とはつゆきは顔を見合わせて微笑んだ。
ここまで読んでいただいて有難うございます。
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次回投稿は7月30日19時の予定です