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プロローグ
おかしい。俺は普通に学校から帰ろうとしていただけのはずだ。
進路相談が遅くなって日が暮れているけど、普通の下校のはずだ。
コンビニで漫画を立ち読みしていたけど、そんなに遅くなっているわけじゃないはずだ。
近道をしようと、工事中のどこぞの企業の社宅の近くを通ったけど、よくあることのはずだ。
何でだ。何で俺は、今、こんな異常に巻き込まれているんだ。
散らばるコンクリートの破片。
半分が崩れたまだ建築途中の家屋。
砕け散った建築機材。
どうなってんだ。
それに、どうして、この世とも思えないこの場所に、彼女が、彼女がいるんだ。
「あら、揚丞。そこは危ないわよ。早く帰りなさい」
なぜ、彼女はあんなにも落ち着いているんだ。
目の前の『あれ』は何だ。大型の建築機器が人の形のようになっている。
俺は夢でも見ているのか。
それに、大きな『あれ』に立ち向かうように走っていく人たちがいる。
彼は、彼らは一体何をしているんだ。
まさか、まさか『あれ』と戦っているっていうのか。
どうなってんだ。
一体全体、俺は、何に巻き込まれちまったんだ。