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星徳学園

「お嬢様、この学園のことはどのくらい知っていらっしゃいますか?」

 この学園のこと?

「お嬢様学校ってことと、全寮制ってことぐらい」

 この学園に来る気なんてなかったし。

「わかりました。では、この学園のことをご説明させていただきますが、よろしいでしょうか?」

 まあ、教えてくれないと明日からの学校生活困りそうだし、聞いておこう。

「はい、お願いします」

 そう言うと、彼はにこっと笑った。

「では、こちらにお座りください」

 彼はソファーのほうを示した。

 言われた通りに座るが、彼は向かいのソファに座ろうとしない。

「あの、座らないんですか?」

「私は執事ですので、お嬢様の傍で立っているのが仕事なのです」

 やっぱりここも、あの家と一緒なんだ。執事なのだから、これが普通なのか。

「座ってください。そういうの、嫌いなんです」

 私がそう言うと、彼は少し考え、

「では、失礼いたします」

 そう言って一礼したあと、向かい側のソファーへと腰を下ろした。

「まず、この学園には二つの(コース)があります」

 お嬢様だけじゃないんだ。

「お嬢様のようなご令嬢が通われるのが普通科。私のような執事を希望する者が通うのが執事科です」

 執事科?

 彼は、自分の持っていたメモ帳とペンを取り出し、紙に普通科と執事科と書き、それぞれを丸で囲んだ。

「一応言っておきますが、普通科には女、執事科には男しかいません」

 ふうーん。

 彼は紙に女と男と書き込んだ。

「普通科の方々は、執事科の者一人を執事としなければなりません。それが契約です」

 執事をつける? 嫌だよ。そんなの、差別になっちゃうじゃん。

 彼は普通科、執事科と書かれているところを線でつないぎ、契約と書き込んだ。

「その証となるのが、この二つの指輪です」

 二つの指輪を見せた。

 今だ!

 私はルビーの指輪を取ろうとしたが、取れなかった。

 この人、今私が取ろうとしてること知ってて指輪見せただろう。動きが速かったし。

「お嬢様、人が話しているときに人の物をとろうとしてはいけません。それに、お嬢様がはめになる指輪はこちらの指輪です」

 またサファイアの指輪を渡してきた。

 その指輪は私のなんだからいいじゃない。

「私は契約するなんて一言も言っていません」

 契約をすると言った覚えはない。

「確かにそうでございますね」

 よし! 返してもらえる。

「では、お嬢様がお選びください」

「えっ!?」

 選ぶ? 何を?

 彼は手を出して、順に指を立てていく。

「ドS、変態、私。この中からお選びください」

 次々と指を立てていき、最終的に三本の指を立ててそう言った。

 私は首を傾げた。

 意味わかんない。

「ドSと変態は余った執事のことです。執事科のほうが普通科よりも人数が多いので余ってしまうのです。まあ言い方は悪いですが、わかりやすく言えば落ちこぼれです」

 落ちこぼれ……。

「じゃああなたは?」

「私は契約してと言われても断っていますので、落ちこぼれではありません。私がこの中では一番お得だと思いますが」

 確かにそうかもしれないけど。

「では、私の質問に答えてください。どうして私を主にしようと思ったんですか?」

「あなたに救われたからです」

 私が救った? そんなはずない。私といれば、人は必ず不幸になる。私といて、幸せになれるはずがない。

「悪いけど、出ていってもらえますか? 私、荷物を片付けないといけないので」

「執事をつけなければ退学ですよ? お嬢様」

 彼は笑った。だが、さっきの笑顔とは違う。

 私はその笑顔に違和感を覚えた。

 退学……。そうなるといろいろと面倒なことになる。

「わかりました。では数週間様子を見るということで、仮の契約とします」

「かしこまりました、お嬢様」

 彼はサファイアの入った指輪を渡してきた。

 私はそれを受け取り、指にはめた。

「契約成立でございます。お嬢様、この二つの指輪には、ルビーとサファイアが入っております。なぜこの二つの宝石が入れられているかご存知ですか?」

 私は首を横にふった。

「ルビーの宝石言葉は努力。サファイアの宝石言葉は思考と集中。つまり、普通科の方々にはまず、執事に選ばれるほどの努力を。執事科の人には、誰が自分の主にふさわしいのかを決めるために知識と経験を。そしてそれを交換するということは、普通科の方々には自分の家系にふさわしい女性になるために知識と経験を積み、そのことに集中する。執事科の人はその主を守る努力を、という意味が込められているのです」

 自分の家系にふさわしい女性、か……。

「説明してくれてありがとう。それじゃあ私、これからご飯作るから。あなたも自分の部屋に戻ったら?」

「いえ。私の部屋は、今日からお嬢様と同じお部屋になります」

「えっ!?」

 同じ部屋? なんで?

「こちらがお嬢様のお部屋、あちらが執事の部屋となります」

 さっき見た小部屋を示しながらそう言った。

 嘘でしょー?

「ですから、ご夕食も私が作ります」

「嫌だ」

 それだけは絶対に嫌だ。

「私はね、人に全部やってもらうのが嫌いなの! そうなったら弱い自分に戻ってしまいそうだから。」

 あっ! つい本音を言ってしまった。

「そうですか。では、交代でやるというのはどうでしょう? 私も自分の仕事がなくなるというのは嫌なので」

 全部やってもらうってわけでもないし、人の仕事を奪うのも嫌だし。

「わかった。なら今日は私が作る。豪華なものは作れないけど、いい?」

「はい」

 さて、何作ろう? 買い物なんて行ってないし……。そういえば、この近くにスーパーがあったような。そこに行こう。

「私、ちょっと買い物に行ってくる」

 私は出かける準備をし、彼にそう言った。

「私も行きます」

 えっ!?

 でも私が買い物に行っていなかったのが悪いんだし、そんなことに会ったばかりの人を付き合わせるのも悪いし。

「一人で行けるから。あなたはここで待っていてください」

 私は彼の返事も聞かずに寮を飛び出した。

 さっさと買って帰ろ。


 よし! これで材料は揃った。早く寮に戻ろう。

 私は買い物を済ませて、寮へと戻った。

「ただいま」

「おかえりなさいませ、お嬢様」

 私が扉を開けると、彼はそう言って一礼した。

 なんか、すっごく違和感があるんだけど。家でもないのにこんなことされると。

「すぐに作るから」

「はい」

 そう言い、私はうどんを作り始めた。

 昔、両親とよく作ってたなあ。

「はい、できたよ」

「ありがとうございます。これは……うどんでございますか?」

 やっぱり、嫌だったかな?

「そうだよ。嫌だった?」

「いえ。わたくし、うどん大好きなんです。正確には麺類が好きなんですけど、この学園だと、こういう庶民っぽい食べ物って滅多に食べられないので」

「あなた、庶民なの?」

「はい」

 庶民? 彼が? 庶民って感じがしない。

「じゃあ、どうしてこの学園に?」

「あなたのお傍にいるためです。この学園で勉強し、あなたにふさわしい人間になるためです」

 私にふさわしい人間? そんなことのためだけに、この学園に来たの?

「それが、あなたにとっての幸せなの?」

「はい」

 そう言って笑顔を見せる彼。

 なんか今、すごくかっこよかった。こんなの、他の女子にやったらいちころなんだろうな。

「どうして私に救われたと言ったの? 私は、あなたを救った覚えなんてないんだけど」

 こんなイケメン救ったら絶対覚えてるし。

「そんなことより、うどん食べましょう。冷めてしまいます」

 今、話そらされた。もういい! さっさと食べて、お風呂に入って寝る。荷物の整理は明日だ。

 私はやることを済ませて、さっさと寝た。

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