似ている少年少女
「華恋」
後ろからいつもよりも低い声が聞こえてきた。
「何?」
私は歩いている足を止め、後ろにいる海斗を見た。
なんか、すっごく不機嫌そう……。おばあちゃんの家に入ったときから、不機嫌になってるよね。私、なんかしたっけ。
「なぜ俺がお前の恋人であることを言わなかった! ただの執事なんて、酷いぞ!」
ああ、そのことか。
「ごめんね。今日は時間がないし、急に恋人だって言ったらびっくりしちゃうと思って」
これ以上海斗の機嫌をそこねないようにしないと。
必死にごまかした。
「そうか」
良かった、納得してくれたみたい。
「で、お前は今どこに向かってるんだ?」
「もうすぐで着くよ」
最近全然来てなかったんだよね。
「着いた!」
そこには綺麗な花がたくさん咲いている小さな花畑があり、その奥には小さな小屋が建てられている。
「あの小屋……」
「海斗、どうかした?」
じーっと小屋のほうを見て、こっちに視線を移そうとしない。
「いや、なんでもない」
「そっか」
あの小屋に、何かあるのかな?
なんでもないと言っているくせにまだ小屋のほう見てるし。
「懐かしいー」
私は小屋の中に入って、そう叫んでいた。
小屋の中は、人が六人ほど寝られるほどの広さで、入口の右端には、人が二人ほど寝られるスペースがあり、左上には勉強机が一つ、その近くには本棚が置いてある。
ここはおばあちゃんたちが植物を育てたいということでここを買って、私がまだ小学生ぐらいの頃までは育てていた。
この小屋はその頃おじいちゃんが建てたものだ。ここは人も全然来なくて静かなため、お父さんはテストが近づくとここで勉強していたとか。
小さい頃は、夏休みとかに両親と来て花を摘んで遊んでた。
「華恋、ここにはよく来るのか?」
後ろにいた海斗が口を開いた。
「最近は来てなかったけど、昔は結構来てたよ」
お母さんたちが亡くなってからはあんまり時間も取れなかったし。
「そういえばね、ここで男の子に会ったんだよ」
「男の子?」
すっごく可愛い男の子。
「うん。私がこの小屋に来たら、小さな可愛い男の子が隅で泣いてたの。それで、どうしたのって聞いたら、迷子になったって言ったから、近くの公園まで案内してあげたの。そうしたらありがとうって笑ってくれたんだ。それがすごく可愛かったの」
あの笑顔は本当に可愛かったなあ。
「その男の子に会ってみたい?」
「うん、会ってみたい!」
どんな子になってるんだろう? 歳も私とあんまり変わらなさそうだったな。
「じゃあ会わせてやるよ」
「えっ!?」
名前も知らない子にどうやって会うの?
「華恋、目つぶって」
私は言う通りに目を閉じた。
「開けて」
私は目を開けた。
でもそこには海斗しかいない。
「海斗しかいないじゃん」
まぁ、名前も住んでるところも知らないんだから当然だけど。
「はあー」
なんでそんな深い溜息つくの?
「だから、俺がその男の子なんだよ!」
「えー!」
海斗が、あの男の子?
「出会ったときに言っただろう? お前に救われたって」
「そんなことだけで私を主にしようと思ったの?」
「何が聞きたいんだ? 今日は特別に、お前の質問全部答えてやるよ」
良い機会だし、気になってたこと全部聞こう。
「じゃあ……どうして私を主にしようと思ったの? 公園まで連れていっただけでどうしてそこまで私の傍にいようとするの? どうして藤堂さんよりも私を選んだの? どうして私のことなんでも知ってるの?」
一気に質問しちゃった。
「じゃあまず1つ目の質問な。まず最初に、公園まで送ってもらったのはただのきっかけだ。それだけでお前を主にしようと思ったわけじゃない」
他に理由があるってこと?
「この小屋でお前に会ってから、俺はずっとお前を探していた。そして、ここの近くでお前を見つけたんだ。いつも悲しそうな目をしていて、それは俺と一緒だった。それに安心感を感じたんだ。これが1つ目と2つ目の答え」 海斗もそうだったんだ。
「それから何度か俺はここに来た。いつも決まった時間にお前は来た。裏にいたらお前の独り言が聞こえてきて、それでお前の癖とか性格を知った。これが4つ目の質問の答え」
全部聞かれてたってこと!?
「最後に3つ目の質問の答えな。好きな奴に会えなくなるなんて嫌だろ? 俺はずっと待ってたんだ、お前に会えるのを」
ずっと待っててくれたんだ。会ったのなんて、今から10年くらい前なのに。
「……」
そう言ってもらえるのは嬉しいんだけどさ、すっごく恥ずかしいです……。
「なんでそんな恥ずかしいことさらっと言えんのよ!」
俯きながらそう言った。
急に海斗が下から覗き込んできた。
あっ!
さっと顔を背ける。
「華恋、顔真っ赤」
ばれたー!
「しかたないでしょう! そんな恥ずかしいことさらっと言うんだから」
うー、恥ずかしい。
「華恋は俺のことどう思ってんの?」
なっ……。今それ聞くー!?
「……好き、です」
余計恥ずかしくなってきちゃったじゃんかあ!
「ありがとう。本当お前は可愛いな」
頭を優しく撫でてくれた。
ずっと海斗の傍にいたい。




