主と執事
今日は1年に一度の大イベント、クリスマス、の前日であるクリスマスイヴ!
今日は行くところが結構ある。
「海斗、ちょっと出かけてくるね」
「どこ行くんだ?」
言うと絶対に付いてくるから言いたくないんだけど……。言わないと怒るんだよね。
「お母さんたちに会いに行って、父方の祖母の家に行って、私のお気に入りの場所に行くの」
私はずっと、お母さんたちが死んだら父方のおばあちゃんのところに引き取られると思ってた。だって、母方のおばあちゃんの家なんて小さい頃に行っただけだし、星名家の総帥だなんて知らなかったから。お母さんたちなんも言ってくれなかったし。
「俺も行く!」
予想通りだ。別に一緒に行ってもいいんだけど、おばあちゃんとおじいちゃんがいろいろ言ってきそうだから嫌なんだよね。
「だめ?」
可愛い! 子犬がご主人様から離れずに甘えてくるような、そんな感じに思えてくる。
「……いいよ」
こうやってされるとだめとは言えないんだよね。
「やったー! 早く行こうぜ!」
本当幼い子供みたい。こんなこと本人に言ったら怒られるけど。
「ここがお母さんたちのお墓だよ」
ここに来るのも結構久しぶりだな。
お母さんたちのお墓は、父方のおばあちゃんの家から歩いて15分ぐらいのところにある。学園やお母さんのおばあちゃんの家からは電車で1時間ぐらいのところ。
「お前の両親にも、ちゃんと挨拶しとかないとな」
「えっ!?」
挨拶? 何を?
「お前の執事として、そして恋人でとして、ちゃんと挨拶しとかねえといけねえだろ」」
そんな恥ずかしいこと、なんでさらっと言えちゃうの!?
「そうだね」
私は顔の前で手を合わせ、目を閉じた。
お母さん、お父さん、全然会いに来れなくてごめんね。最近いろいろなことがありすぎて、全然時間なかったんだ。
二人の手紙、理事長から受け取ったよ。二人、理事長と仲が良かったんだね。びっくりした。
それから、あの事故の真実もおばあちゃんから聞いたよ。
お母さん、お父さんに心から愛されてたんだね。
お父さん、お母さんを心から愛していたんだね。
私もね、執事に恋しちゃったの。やっぱり私、二人の娘だね。二人と同じところで恋をして、二人と同じ立場にいるんだもん。
私の隣にいる人が、水瀬海斗。私の執事であり、恋人でもある人だよ。私、今すっごく幸せ。二人も、こんな幸せを味わったのかな。
私、この世に生まれてきてよかった。私を産んでくれてありがとう。また来るね。
私は目を開けた。
「話は終わったか?」
「うん」
いっぱい伝えすぎちゃったかな?
「長いこと話してたな」
そんなに長く話してたの?
「報告することが多すぎて……。海斗のことも言っといたよ」
全然来てなかったから、言うことがいっぱいあったんだよ。この数ヵ月でいろいろなことがわかったしね。
「そうか」
「じゃあおばあちゃんの家に行こうか」
「ああ」
おばあちゃんに会うのも久しぶりだな。
私たちはおばあちゃんの家に向かった。
「おばあちゃん、華恋だよ」
ドアを開けてそう言った。
家の奥のほうから足音が聞こえてきて、それが大きくなるにつれておばあちゃんの姿が良く見えてきた。
「おー、華恋。久しぶりだねえー。こちらの方はどなただい?」
海斗のほうに視線を移しながらそう聞いた。
「彼は――」
「申し遅れました。華恋様の執事をさせていただいております、水瀬海斗と申します」
紹介しようとしたら、海斗は自分で名を名乗った。
「華恋の執事かい。随分とかっこいい子じゃのー。華恋とは、主と執事という関係でしかないのかい?」
「えっ!?」
おばあちゃん何言ってるの!?
「昔の航と優里さんにそっくりじゃからついのー」
私たち、お母さんたちに似てるんだ。
「私と海斗は主と執事という関係でしかないよ」
ここで本当のこと言ったら、絶対話が長くなる。
「そうかい。さあ上がんなさい」
こんな玄関で話してたら海斗に悪いし。
「うん」
「失礼いたします」
ん? 今、海斗の声がすごく低かったような気がしたけど、気のせい?
「おばあちゃん、おじいちゃんは?」
私たちは居間に移動し、お茶を入れているおあちゃんにそう聞いた。
さっきから、おじいちゃんを見ていない。
「今近所の人と出かけてるよ。もう少ししたら帰ってくると思うわ」
だからおじいちゃんの姿が見えないのか。
「じゃあおじいちゃんが帰ってきて少ししたら帰るね」
他に行きたいところもあるし。
「そんな早くに帰るのかい? 1日いれば良いじゃないか」
「まだ行くところがあるからさ」
「そう」
おばあちゃんは悲しそうな顔をしながらそう言った。
「ごめんね。お正月には来るからさ。そのときはゆっくりしていくつもり」
お正月なら時間もあるだろうし。
「そうかい。ならご馳走を作らないとね」
「うん、楽しみにしてる」
おばあちゃんの料理、すっごくおいしいもん。
「ただいまー」
玄関からおじいちゃんの声が聞こえてきた。
「帰ってきたようだね」
「うん、そうみたい」
おばあちゃんは玄関へと向かっていった。
「おー、華恋。久しぶりじゃなー」
おじいちゃんはおばあちゃんと一緒に居間へと来た。
おじいちゃんも元気そうだ。
「久しぶり、おじいちゃん」
笑顔でそう言った。
「じゃあ私たちは帰るね」
立ち上がりながらそう言った。
「もう行ってしまうのか?」
おじいちゃんは名残惜しそうにそう言った。
「うん、まだ行くところがあるんだあ。お正月にはゆっくりしてくつもりだからあ」
「そうか。じゃあ気長に待つとするかのー」
おじいちゃんは笑いながらそう言った。
「うん。じゃあまたね」
「失礼いたします」
海斗はそう言って一礼した。
私たちはおばあちゃんの家を出て、お気に入りの場所に向かった。




