契約成立!
今の時刻は6時50分。
お願いだから、間に合って!
タクシーを降りて、必死で海斗たちを探した。
海斗、どこにいるの?
空港の中を走り回っていると、海斗と藤堂さんらしき人が見えた。その二人は、もう飛行機のほうに向かうところだった。
この距離だと走っても間に合わない……。
「海斗!」
私は大声で、彼の名を呼んだ。
その声が届いたのか、海斗らしき人が足を止め、後ろに振り返った。
「海斗!」
私は海斗たちのところまで走った。
「どうやら、あなたの主は彼女だったみたいね」
藤堂さんは、私をじーっと見ながらそう言った。
「ああ」
海斗も、私を見ながら、そう答えた。
なんの話をしてるの?
「本当の主が見つかってよかったわね、海斗」
本当の、主。
「お前にも良い執事が見つかるさ」
藤堂さんはにこっと笑って去っていった。
「華恋、なんでこんなとこにいんの? まさか、俺を取り戻しに来たの?」
意地悪な笑みを浮かべながらそう聞いてきた。
「そんなことあるわけないでしょ! あなたに伝えたいことがあったから来ただけよ」
ちゃんと伝えなきゃ。
「伝えたいことって?」
海斗は興味津々というような顔でこちらを見ている。
「裏切り者!」
大切なのはもう一個のほうだけど、まずこっちを片付けとかないと。
「はっ?」
海斗は、何言ってんだこいつ、みたいな感じで間抜けな声が出た。
「自分で契約解除しないって言っといて、なんで解除してんのよ。おかしいでしょ!」
自分でした約束破るな!
「それは悪かった。でも……」
海斗は自分の指輪を外し、私の指輪も外した。だが……。
「華恋、お前、誰かと契約してんのか?」
あっ! 翔と契約解除するの忘れてた。
「うん……してる」
私は下を向いて、そう言った。
海斗、絶対怒ってるもん。
「誰とだ! 誰と契約しやがった!」
ほら、やっぱり怒ってる。
「俺だよ」
後ろから、この場にいるはずのない人の声がした。
「翔! なんでここにいるの?」
私が後ろに振り返ると、予想通り、そこにはいるはずのない翔の姿があった。
「翔てめぇ、華恋と契約しやがったのか!」
海斗、さっきよりも怒ってる。
「華恋、忘れ物だよ」
翔は、私にルビーの指輪を渡した。
「華恋を守る騎士はどうやら僕ではなく、彼みたいだからね。幸せになるんだよ、華恋」
「うん!」
「それと、ちゃんと素直になるんだよ」
海斗に聞こえないように耳打ちした。
「……うん」
私も海斗に聞こえないように返事をした。
そして、翔にサファイアの指輪を渡した。
「海斗!」
翔は海斗のほうに視線を移した。
「なんだよ」
海斗の声、すごく低いんですけど……。
「今度華恋を泣かせたら、本気で奪いに行くからな!」
ん? 奪うって、何を?
「奪えるもんならやってみろ。お前には絶対に無理だがな」
ん?
海斗が翔に何かを投げた。
「おっと」
それを翔がキャッチした。
「とっとと帰れ」
「はいよ。じゃあな」
翔はどこかに行ってしまった。
「華恋、俺と――」
「ちょっと待った!」
海斗の言葉を遮った。
「なんだよ」
もう一つ、言っておきたいことがあるから。
「私、全然お嬢様らしくないし、全然星名家にふさわしくない。素直じゃないし、泣き虫だし、弱い人間だから、あなたにふさわしくないかもしれない。でも、私はあなたが執事じゃないとだめなの。だって、私はあなたが好きだから。だから、ずっと私の傍にいてください」
恥ずかしい……。
海斗は急に片膝をついた。
「Yes,my Lord。あなたはこの世でたった一人の私の主です」
「ありがとう」
そういえば、ここって空港だよね。さっきから、周りの人の視線がこっちに集中してるような……。
「華恋、帰ろう。星徳学園へ」
海斗は手を差し出してきた。
「うん!」
私は海斗の手を取り、出口まで走った。
「華恋」
ん?
「俺も華恋のこと好きだよ。この世で一番な」
走っている途中にそんなことを言ってきた。
そういうこと、今言うの?
私の顔、たぶん真っ赤だ。
「華恋、可愛い」
「海斗が変なこと言うからでしょ!」
ねえ、お母さんとお父さんもこんな幸せを味わったのかな? 私、今すっごく幸せだよ!




