両親からのメッセージ
海斗は今日の夜、藤堂さんと一緒に日本を出発するらしい。
翔が海斗から聞いたって言ってたから本当なのだろう。
海斗に気持ちを伝えるのは、今日しかない。でも、お前はもう必要ないって言われるのが、怖い。無視されたりするのが、怖い。
「星名!」
そんなことを考えていると、先生が私の名を呼んだ。
「一条先生。、どうかなさいましたでしょうか」
私、呼び出されるようなことしたっけ?
「今日の放課後、理事長が理事長室に来てくれとのことだ。理事長が呼ばれたんだから、絶対に行くんだぞ。失礼のないようにな」
そう言って、先生はどこかに行ってしまった。
理事長に呼ばれるなんて、私やっぱり、なんか悪いことしたのかな? こんなこと、おばあ様の耳に入ったら、やばいことになるじゃん。
ついに放課後。
私は荷物を片付けて、すぐに理事長のもとへと向かった。
コンコン
「入りなさい」
私はその声を聞いたあと、扉を開いた。
「失礼します」
私は一礼して中へと入った。
「星名さん、こちらに」
理事長はソファーを示しながらそう言った。
理事長の座っているソファーの向かい側に腰を下ろした。
「急に呼び出して悪かったわね」
「いえ、とんでもありません」
理事長、何のために私を呼んだんだろう?
「やっぱり似てるわね。学生時代の優里ちゃんに」
優里ちゃん? なんで、理事長がお母さんの名前を知ってるの?
「なぜ、理事長が私の母のことを知っていらっしゃるのですか?」
「私のこと、何も聞いてないのね」
聞く? 何を?
「私とあなたのお母さん、星名優里ちゃんと、あなたのお父さん、碓氷航君の三人はね、この学園に通っていたの。航君はSクラスの首席で、私と優里ちゃんはAクラス。優里ちゃんはいつも首席で、私は2位だった。優里ちゃんには1回も勝てなかったわ」
お父さんとお母さんが、この学園の卒業生?
「優里ちゃんと航君は契約しててね、二人ともすごく仲が良くて両想いだったの。二人ともいつも笑顔で、楽しそうで、あなたと水瀬君のようにね」
海斗と契約していた頃はすごく楽しかった。でも今は……。
「でも、それを私が壊したの。私が、二人の関係をめちゃくちゃにした。でもね、二人は諦めなかった。私がどんなに痛めつけても、二人の思いは、繋がったままだった。そのときね、改めて思ったの。愛はすごいって。そしてその数年後二人は結婚して、あなたが生まれた。とても幸せな毎日だったんでしょうね」
そう、すごく幸せだった。あの家には、笑顔が溢れていた。でも、もう二人はいない……。
「優里ちゃんたちはね、いずれあなたがここに来ると思って、私にこれを残したわ」
理事長はそう言って、私に一通の手紙を渡した。
「開けてみなさい」
私は手紙の封を切り、中身を見た。
『華恋へ
華恋、あなたがこの手紙を読んでいるということは、あの学園に来たのですね。そして、私はもうこの世にはいないのでしょう。お母様のことだから、孫であるあなたを、星名グループの次期後継者にしようとしたのですね。辛いですか? 私の身勝手な行動であなたを苦しませてしまって、申し訳ありません。でも、あなたの周りには支えてくれる人たちがいるはずです。もう、誰かと契約しましたか? あなたのことだから、契約することを嫌がったでしょう。人に何もかもやってもらう、誰かに甘える。あなたの一番嫌いとし、苦手としているものですものね。でも、その人が一番あなたを支えてくれる、あなたのことを理解してくれる人だと思います。そういう人を大切にしなさい。 母より
華恋、元気にやってるか? 俺は母さんと契約して、楽しい生活を送ったよ。もちろん、辛いことや嫌になることもいっぱいあった。だが、俺は母さんが近くにいたから、壁を乗り越えることができたんだ。人間は、一人ではとても弱い生き物だ。だが、自分の近くに一人でも自分のことを思ってくれる人がいれば、人はいくらでも強くなれる。人は、一人では生きていけないんだ。華恋、執事も一人の人間だ。守るべきものがなければ、本来の力を発揮することなんてできない。たった一人の主がいるからこそ、本来の力を出すことができる。お前のことをたった一人の主だと言ってくれる奴が現れたら、何があってもそいつを離すな。1回離してしまったら、待っているのは後悔だけだ。 父より』
私は、知らぬ間に涙を流していた。
「星名さん、泣くのにはまだ早いんじゃない?」
私は涙を拭い、理事長を見た。
「あなたにはまだ、やるべきことが残っているはずです」
やるべきこと。
「理事長、私はこの辺りで失礼させていただきます」
私は理事長に向かってお辞儀をし、理事長室を出た。
私はすぐに、外出届を出して、空港へと向かった。
今の時刻は5時30分。
海斗たちが乗る飛行機の出発時間は7時だったはず。この学園から空港まで1時間30分。お願いだから、間に合って。
私はすぐにタクシーに乗った。
お母さん、お父さん、私、お母さんたちみたいにうまくいくかわかんないけど、自分の気持ちを正直に伝えてみるよ。後悔は嫌だから。




