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長い休み

「海斗、海斗は実家に帰るの?」

 私はのんびりTVを見ている海斗に聞いてみた。

 家に電話するなら、海斗がいないときのほうがいいし。

「悩んでる。でも、明日は実家に帰る。たまには顔見せないと、親がうるさいから」

 じゃぁ、明日は海斗いないんだ。なら、明日海斗が出て行ったら、家に連絡しよう。

「そっか」

 明日からは、長い夏休みが始まる。私もおばあ様に帰ってもいいのか聞いてみる。だけど、怖い……。帰ってくるなと言われるのが、怖い。でも、帰ってきていいと言われるかもしれないという期待がある。おばあ様の答え次第では、泣くことだって考えられる。だから、海斗がいないときに連絡する。泣くなら、一人で泣きたいから。


 次の日の朝、海斗は荷物を持って寮を出た。今日1日は実家で過ごすらしい。だから、泣くには絶好の日だ。

 さて、電話しよう。

 プルルルプルルル

「はい。星名です」

 数秒後、男の人の声が聞こえてきた。

「華恋です。おばあ様はいらっしゃいますか?」

「華恋様でいらっしゃいましたか。すぐ社長に変わりますので、少々お待ちください」

そう言い、男の人の声は途絶えた。

「もしもし、私だ」

 その数分後、おばあ様の声が聞こえてきた。

「おばあ様、ご無沙汰しております。今日から夏休みに入ったのですが、そちらに帰らせていただいてもよろしいでしょうか」

「寮には夏休み中もいられるんだね?」

 もうこの時点で、おばあ様の考えはわかった。

「はい」

 私は正直に答えた。帰ってきてほしくないと思われているなら、寮でのんびりしているほうがいい。

「なら、そっちで勉強してな。くれぐれも、星名家の名に恥じぬようにするんだよ」

 ほら、予想通りだ。

「はい」

 ブチッ

 私が返事をすると、すぐに電話は切れた。

 私、予想以上に嫌われてるな。夏休みなんて、すごく長いんだよ。こんなほとんど生徒のいない静かなところで、1ヶ月ちょっと、過ごさないといけないのか。夏休みぐらい、家に帰らせてくれたっていいじゃん。家族と過ごさせてくれたっていいじゃん。おばあ様は、私を家族として見てくれてないのかな?

 視界が涙で見えなくなってきた。私、本当に泣き虫だ。

 私はその場に座り、泣いた。最近、よく泣くな。嫌われてるなんて、いつものことだ。でも、家族に嫌われるのは、結構つらいや。

「華恋!!」

 私の名を呼ぶと同時に、部屋の扉が開いた。

「海斗?」

 私は涙をぬぐって、顔を上げた。

「なんでいんの?」

 実家に帰ったはず。

「実家に帰るのやめた」

「なんで?」

 実家に帰らないと、両親がうるさいんじゃなかったの?

「うちの親、俺が帰ってくるの8月だと思いやがって、今二人で旅行行ってるんだと」

「そうなんだ」

 帰ってくるなら、もう少し遅いほうがよかったな。

「私、勉強しないといけないから」

 泣いてるの気付かれる前に部屋に戻ろう。

「ちょっと待った」

 そう言って、海斗は私の腕をつかんだ。

「何?」

 と、後ろに振り向いたことを私は後で後悔した。

「華恋、泣いただろう? 目が少し赤い」

 しまった! こんな至近距離なら、目が赤いのだってばれてしまう。

「泣いてないよ。離して」

 お願いだから、一人にしてよ。

「ほら、また嘘ついた。おしおきな」

 こんなときになんでそんなこと言うの? こんなことになるんだったら、あんな約束しなければよかった。私は、つかまれていた腕をひっぱられ、海斗の胸の中にすっぽりとおさまった。

「泣きたいときは、素直に泣けばいい。一人で抱え込むな。俺がいつもお前の傍にいる。だから、我慢しなくていい」

 そんなこと言われたら、また涙が出ちゃうじゃん。止まったはずの涙が、また溢れてきた。

 なんで私が泣いてるとき。あんたがいつもそばにいるのよ。意味わかんない。

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