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ある兄妹の雑談

作者: 火水 風地

ストーリーはあまり考えずにサラーと読んでください。

 ここは先月めでたくオープンしたばかりの生まれたてな焼き肉店である。そう、焼き肉店なのである……


 「アイスクリーム!」


 遥か遠く宇宙まで届いてしまいそうな程に気合いの入った声が店内に所狭しと響き渡った。そしてその響きの舞台となっている店内には、眼を文字通りまん丸にして今にも魂が抜けそうな程口をポカンと開けた人が一人いた。服装そして、その顔立ちからその人が男だということが分かる。


 「……ないよ、アイスクリームはないよ……」


 その男は妙に淡々とした調子で彼の向かいに座る人にそう断言をした。恐らくは彼なりに動揺し、漠然とした意識の中の苦し紛れの一言だったのであろう。


 「いーえ、あります。アイスはありますー」


 まるで男の否定の文句を受け入れず自身の、【アイスあります説】を断固として突き通すその人はその愛らしい容貌から女性であることが分かる。


 「智華ともか……いいかい? ここは焼き肉店なんだ。決して甘いものは売っていないんだよ」


 その男は彼女のことを智華と呼んだ。呼び捨てであることからなかなかにいい関係なのだろう。


 「えー、嘘だー。勝生かつき嘘つく時いっつも早口でものを言うの知ってるんだからね!」


 「あーはいはい、そうでしたねー。そこは置いといても何で実の兄貴を呼び捨てにするかなー」


 どうやら智華と勝生という男は兄妹であるらしい。それにしても随分と歳の離れた兄妹だ。見た目からすると兄の方は恐らくは十八といったところか。妹の方は……ませた服装でよくカモフラージュされてはいるが十歳やそこらだろう。


 「私はね、自分より頭の悪い人を自分のお兄さんだなんて【世界遺産一つあげるよ】と、言われても認めませんからねー」


 「あれ? 智華って僕より頭良かったけ? じゃあこれ解いてよ」


 そう言いつつ大人げなさの塊のような勝生は、ポケットに手を入れゴソゴソと何かを探すようにそこを暫くあさリ始めた。そしてその動きを止めたかと思うと一枚の紙切れとボールペン一本を取り出してその紙に何やら書き始めた。



 二 × 三 × 六 ÷ 四 ÷ 三 + 八 + 一 


 

 なんだ案外、勝生って大人らしいところあるじゃないか。これなら小学生でも解ける。


 「まったく、これだから馬鹿ちゃんは相手にできないわよね」


 そういいつつ智華はその紙切れに素早く数字を書き込んだ。



 二 × 三 × 六 ÷ 四 ÷ 三 + 八 + 一 = 九


 

 あ、間違ちゃてるね、答え。まあよくあるケアレスミスってやつかな。それに気づいているのであろう、勝生はその顔に僅かに皺を刻んだ。


 「あ、あれれれれれれ? なんで答え解っちゃたの?」


 勝生はどうやら智華のいう通り馬鹿ちゃんらしい。まあ。それは置いといてその発言を聞いた智華はわざとらしく片眉を吊り上げ、


 「ほーら、馬鹿ちゃんが引っ掛かった。それの答えは十二、まったく、ここまで馬鹿ちゃんだとコペルニクスもびっくり、がっかりよね」


 「智華……コペルニクスがどんな人か知っているのかい?」


 自らの間違いを誤魔化すためだろう、勝生は話題をそちらの方に移そうとした。しかし智華は、


 「あー話そらそうとしてるー、これだから馬鹿ちゃんは!」


 「へー、やっぱり智華はコペルニクスのこと知らないんだね?」


 あくまで勝生はそういったことは得意なようで巧みに智華を挑発していた。


 「な、知ってるわよ! 馬鹿馬鹿と一緒にしないでよね」


 「じゃあ、言ってみてよ、さあ、早く!」


 うん、恐らく精神年齢は智華と勝生で逆転してしまっているのだろう。それはこれまた恐らく地球がひっくり返って、北極が南極に、南極が北極に変異したって変わることはないのであろう。


 「コペルニクス……ニコラウス・コペルニクスは千四百七十三年生まれでね、天文学史上最も重要な再発見をした人なのよ。そう、【知ってる】とは思うけど地動説を唱えた人なの」


 不思議だ、何故この小学生はそんな細かいところまで知っているのだろう。それになにか皮肉まで込めてあるし。しかしその皮肉に一切気付かない勝生は当たり前のように、


 「ああー、知ってたよ、そりゃまあ常識だしね」


 「また馬鹿馬鹿ちゃんは知ったかぶり決め込んじゃって、目の前の可愛くて、美人で、思わず連れ去りたいぐらいのパーフェクトガールが泣いてるよ?」


 はて、それは少し言い過ぎなのではないだろうか。あながち間違ってはいないのだが……それにしても、さっきから君たちの隣で所在なさげに俯いている店員がそろそろ涙を流しそうだよ? きっと新米店員なんだね。


 しかし、それでも彼女たちは討論を止めることなく延々と【微笑ましい】雑談を繰り返していた。





  IT CONTINUES




 


 


 


 










 













ええ、誰が何と言おうともこれは続編書いちゃいますよ。【鏡の……】を書くのちょっと根気がほしくて…… 一応感想待ってます(いないと思う、というかまずいない、評価欄みて【あ、こいつ評価一個もねえでやんの、ウシシ……】とか思わないでね)

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― 新着の感想 ―
[一言] 兄妹間の会話としては、たのしいものでした。 しかし、兄妹だと明かす前の「いい関係なのだろう」や、問題を出したときの「答えが分かっているのだろう」みたいな文はいらなかったと思います。 よけいな…
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