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×プロローグ×

 今回のこーしょーはいつもと違いますぜ?




 えー……どうやら自分は、筆が進まなくなると、突発的に短編モノが書きたくなるタチのようです(汗)

 この作品も6〜7回で終わらせる予定(今回は「かつて交わした約束と」の場合とは違って、増えないとは言い切れないので確約できません……)ですので、暫しの間どうかお付き合いの程をm(_ _)m

 ――ふと、少女は夜空を見上げた。


 薄汚れた雑居ビルの群れの合間、歪つな形に切り取られた夜空の中心に浮かぶ、綺麗な満月。


 星の瞬きすらない虚空の闇の中、真円の月から放たれる白光は弱々しくも、浴びる者を突き刺すような鋭さ、凍えそうな冷たさを内包している。


 それはとても遠く、高い場所に在るはずなのに。


 手を伸ばせば触れられそうで。


 でも触れてしまえばココロまで凍り付いてしまいそうで。


 何故だか無性に怖くなって。


 少女は月を見上げるのを止め、自らの目の前で這い蹲っている現実へ、視線を戻した。




 ◇…………◇…………◇




 ――街外れにある、薄暗い路地の奥。


 時刻は日付が変わってから数時間が過ぎており、加えて駅前のメインストリートから結構な距離があるこの場所の近くを、人が歩いている気配は無い。


 「ひぁ……あ……うぁ……」


 酸素を求める魚のように口をぱくぱくとさせながら、薄汚れたアスファルトにへたり込む男が一人。 


 その息遣いは荒く、左手で右肩を抑えている。


 その上着に滲む色は――赤。


 滴り落ちそうなほどに血液を吸った布地は、月の光でぬめるような光沢を放ち、男の出血量が尋常でない事を窺わせる。




 そして、男の目の前には、一人の少女が立っていた。 




 華奢な体躯に小柄な体。


 黒い七分袖のワイシャツに、同じく黒のロングスカート。


 胸元に結ばれた、赤いリボン。


 ベリーショートの髪の毛は真っ白で、それを隠すためなのか、やはり黒いバンダナを巻いている。


 場所と時間次第では、どこぞの喫茶店で働いている人間に見えなくも無いが、少なくとも深夜の路地裏で見られる格好ではない。


 西洋の人形のように整った顔立ちを隠す、長めの前髪。


 口元は、微笑みの形に歪んでいる。




 ――ことん。


「――ひっ!」


 ことん。


 ことん。


 ことん。


 少女はゆっくりと、裸足で硝子の上を歩くような速度で、編上げブーツ独特の靴音を鳴らしながら、男の方へ一歩一歩近付いていく。


「く……来るな……っ……来るなぁっ……!」


 その悲鳴じみた叫びに、少女の歩みを止める力は無い。


 男は右腕を庇いながら、これ以上は近づけさせまいと、ずりずりと後退していく。


 ――と、男の背中が、何かにぶつかった。


「っ!?」


 がらんがらん、と大きな音を響かせながら倒れたゴミ箱に、男が気を取られた、その瞬間――。


 少女が左腕を横に薙いだ。


 続けて風切り音。


 暗闇を切り裂く、軌跡が尾を引くような幾筋もの光。


「っあああああぁぁああああっ!」


 一瞬遅れて、男の絶叫。


 男の両の太腿には、小振りのナイフがそれぞれ二本ずつ、深々と突き刺さっていた。


「……数秒先も見えない生にしがみつくのはもう充分でしょう?  そろそろ大人しくして下さいな」


 優しく、聞く者に慈愛すら感じさせるソプラノボイス。


 口元に浮かぶ微笑を崩さずに、少女が言う。


 しかし、夜風にふわりと揺れた前髪の隙間から覗いた瞳には、何の感情も浮かんでいない。


 少女の左手には、いつの間にか四本のナイフが指の間に挟まっている。


「さて、これから私は、ゆっくりと時間をかけて貴方を殺すわけですが、始める前に遺言や懺悔の言葉は御座いますか? まだ理性があるうちに仰っておいた方がいいですよ?」


 私も鬼じゃありませんからね、と笑う少女の顔も声も、その服装も、違和感しか感じさせない。


「い……嫌だ……わ、私は……私はまだ死にたくない……」


「……ふむ?」


 何かを思案するように目を閉じる少女。


「な、何でもするっ! 金がほしいならいくらでも払ってやる! だから命だけはっ!」


 屈強な成人男性が小柄な少女の足に縋りつき、命乞いをするその様子は、正に「異常」の一言に尽きる。


「…………」


「はっ……はっ……はぁっ……」


 暫しの沈黙。


 男の、獣じみた荒い息遣いのみが、薄暗い路地裏を支配する。


 やがて、少女が目を開く。


「……はい、分かりました」


「ほ、本と――」


「今のが遺言なんですよね? ちゃんと覚えましたから安心して下さい」


 男の目が絶望に見開かれる。


「そ、そんな……ちがあぁああああああぁぁぁああああああぁああああぁああああぁあああああああああああっ!?」


 先程よりも一際大きな絶叫。


 再び左腕が振るわれ、四肢のうち唯一無傷だった左腕と、血に塗れた右腕にナイフが突き立つ。


「これで四肢全ての筋を断ちましたからもうまともに動けません。それではもう思い残す事はございませんよね? 少しずつ殺してさしあげますから、せめて三十分くらいは頑張って下さいませ」


 少女は右手を背中へまわし、ワイシャツの中から、刃渡り二十センチメートル程の短刀を引き抜いた。


 ことん、ことんと靴音を響かせながら、男へ歩み寄っていく。


「う……うぁぁ……」


 逃げようなどという考えは、男の頭の中から既に失せていた。


 彼を支配しているのは、これから自身に行われる蹂躙に対する恐怖心のみ。


「さてと。それでは――――そろそろ始めましょう?」


 少女は短刀を逆手に握り直し、そして殺人が始まった――。


 自分はいつも、気に入った曲に触発されて小説を執筆しております。

 「かつて交わした〜」は奥華子様のガーネット。

 「僕の不器用な彼女」はHY様のSong For…。

 「前へ踏み出す一歩」は……まだ言えません。オチ分かっちゃいます(汗)

 そして今回は二曲です。MELL様のRed Fractionと、タイナカサチ様のThisillusion。

 聞いた事が無い方は一度訊いてみて下さい。一聴の価値はありますから。

 最後になりますが、感想、批評お待ちしております。

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