プロローグ終
「がはっ」
なんとか、二人を洞の中に入れられたのだが半ばぶん投げるように二人を前へ送ったため、ロギゥはその反動で後ろへ後退せざるを得なかった。
体をひねり開く口を掠めるようにして交わしたは良いが、そのあとに迫ってきたフールリザードの足に跳ね飛ばされた。質量さから来る力は、殺傷の意思がなくともその小さな体にとっては脅威となるには充分過ぎた。
おもしろいように吹き飛ばされたロギゥは地面にたたきつけられ、呼吸が止まる。
しかし、フールリザードは洞の中に手を伸ばし少年たちを喰らおうとしていて、ロギゥには目も向けなかった。
その間に呼吸を整え、体を奮い立たせる。なんとか立ち上がり、少年たちを助けるために、腰のショートソードを引き抜いた。
両手に構え、走り出しフールリザードの直前で飛び上がった。
「ハァッ!」
ロギゥは渾身の力を込め、さらには自分の全体重をかけて隙だらけの背後から思いっきりフールリザードの頭に剣を突き立てた。
パキンッと言う無機質な音とともにショートソードは折れて、堅いうろこには傷一つ付かなかった。
しかし、フールリザードがロギゥの存在を認識するには充分だった。
ロギゥの身長の半分もの太さがある尻尾を振りぬかれ、折れた剣でガードするも、吹っ飛び転がり続け、大木の根にたたきつけられてようやく体が止まった。
ロギゥの体は限界だった。
全身には激痛が走り、骨も折れているだろう。体は灼熱するように熱くそれがさらに痛みを強くした。
心臓の音はもちろん全身からドクドクという音が聞こえる。
視界は虚ろになるどころか、痛みで鮮明にみえる。
ロギゥの頭は体の灼熱とは違い冷静だった。全身の骨が軋む音が聞こえ、指の先まで血管の血流がわかった。洞の中では泣き叫ぶ少年たちが見えた。ゆっくりと振り返るフールリザードの牙の一本一本がよくわかった。
これで自分が死ぬのかとロギゥは感じた。
あの鋭利な刃に頭を砕かれて。
血の味を堪能され、魔物一部に吸収されると思った。
ゆっくりと近づいてくるその、自分の生命を奪うものを見ながら父や母に心の中で謝った。
あの優しい両親ともう会えなくなることと、悲しませることを考えると涙が出てきそうだった。
ロギゥはあきらめた、この状況から生きるすべはないと。
心は生命をあきらめた。
ではなぜ、こんなにも体は熱いのだろうか…?
なぜ痛みに悲鳴を上げる…?
なぜこんなにも鮮明に脅威を映し出す…?
熱い血は体をめぐり、いつもより激しく脈を打つ。
それを感じるごとに体は熱を増す。
頭はより鮮明になり、さっき見たときより、なぜかフールリザードの動きが遅く感じる。
自分の脈打つ音で耳が支配される。
血が巡り体を熱し目が見開かれ脈音が脳を支配する。
なぜ死を受け入れた心がこんなにも熱くなるのか、今まで感じたこともない欲望に近いそれに…ロギゥは直感した。
生命が本能的に生きる意志を…。