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第一章-5

エルウナがこのままでは夜が明けるまで永遠に悩んでいそうになると、遠くから獣の唸りが聞こえた。

どうやら獲物を見つけて群れで襲いかかっているようだった。


「ふん、ロギゥも食べられてしまえば良いんです。」


そう言って少しイライラがスッキリしたのか、しばらくすると落ち着いた寝息が聞こえてきた。


エルウナの言ったことが現実になるように今、ロギゥはクマのような大型の魔獣と戦闘状態だった。

4mはあろうかという巨体に灰色の毛が満月の光を反射させ銀髪のように見える。

額からは3本の長さが不均等な角があり、血がたぎるのに呼応するようにほの暗い赤い発光を不規則に明滅させている。

不自然なほど長く発達した両腕の間接からは鋭い骨のようなものが突き出していた。

満月で興奮状態にあるのか興奮状態にあるようで、荒い息の音が聞こえる。


それに対しロギゥは全身疲労からなる虚脱感と痛みでコンディションと言えば最悪に近い状況だった。

しかし、その目は目の前の魔獣に勝るとも劣らない眼光が宿る。



ロギゥが一度深く吸った息を止めた瞬間が始まりだった。


先に動いたのはロギゥで、その手に持った剣を肩の位置に構え剣先を前に突き出すような型を取って全力で突っ込む。


魔獣は下から上へと縦に剛腕を振りぬく。


腹のあたりまで腕を引き付け当たりそうになる寸前に構えた剣先を真下へ向け振りおろす。魔獣の手のど真ん中に突き刺さるが、衰えない勢いでそのまま腕を振りぬく魔獣。


その勢いに前転するように腕の上に飛び、

自身の体重と振りぬかれた腕の力を使い剣を抱え込むように振りぬくロギゥ。


肉と骨を巻き込んで抉るような音と共に肉片と体液が飛び散る。

ロギゥが持っている剣はあまり切れ味のよい状態でなかったのが逆に肉を絡め捕り腕を蹂躙した。



魔獣が激痛に悲鳴を上げると同時に額の角から雷撃を迸させるが、

ロギゥは気にも留めずに腕を両断しても有り余るその回転力を利用し剣先を魔獣の脳天に突き立てる。

やすやすと頭蓋骨を貫通し剣の刃が全て埋まる。


魔獣の返り血がロギゥの頬を赤く染める。


頭部を貫かれ絶命する魔獣に興味を失ったように眼光の輝きを消すロギゥ。


体格で劣っていたロギゥではあるが、それを補って余りある体術と剣技で明らかにロギゥは魔獣にとって強者だった。



「生命の意思が聞こえない…」



血が滴る剣を見ながら、そうつぶやくロギゥ。


「ほぅ、また派手に散らかしおって。これでは他の魔獣が血の臭いに誘われて寄ってきてしまうぞ」


いきなり背後から聞こえた声に驚きを隠せずに瞬時に振り替えるロギゥ。

何時からそこにいたのか、クナタクトが魔獣の亡骸のそばに立っていた。


気付かなかった。いつものような転移魔法なら魔力を感じる。たとえいくら興奮状態であったとしても周囲には気を張り巡らせていたのだ。仲間が近くにいた場合複数相手になる前に仕留めておきたかったので多少強引な戦い方をしたロギゥであったが、クナタクトでなかった場合確実に殺されていた。


歴戦の魔法使いである事は関係ない、今ここにある現実が自身の生死に直結するのだ。死んだあと言い訳しても意味の無いことの分かっているロギゥはクナタクトの底知れぬ実力に戦々恐々した。


「おぬしは疲れているようじゃの。ほれ、ここはわしが処理をして後の番もやっておく。今日はもう寝ておけ。」


いつもの、寝ぼけたような眼であったが、今はどこか違う雰囲気を感じたロギゥはおとなしくその好意に従った。

魔獣から食べられそうな部分を剥ぎ取ったロギゥは残骸を魔法で燃やすようにクナタクトに頼むと、返り血を洗い流すため沢へ向かった。

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