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うちの生徒会はどこか様子がおかしい!

作者: 久荘木ノコ
掲載日:2026/03/18

ストレス発散に頭空っぽにして書きました。

「あのね、仁くん? ……私のお願い。ダメかな?」


 俺の顔を見上げる彼女は困ったように眉を下げると、ワイシャツの裾を小さく掴んで、下からじっとこちらを見つめてきた。

 潤んだ瞳に真っ直ぐ捉えられ、長いまつ毛がぱちりと瞬く。


「あのですね。会長……」


「私、仁くんじゃないと。ダメなの」


「っ!」


 頬を少し赤らめた彼女の表情にこちらの理性は一瞬でかき乱され、心臓の鼓動が急激に速まっていく。

 

 彼女は熱っぽい吐息を小さく漏らして、俺のシャツの裾をぎゅっと握りしめる。


「ね? いいでしょ?」


 少し色っぽく膝を擦り寄せてきて、上目遣いで俺の許しを請う彼女の姿に思わず唾を飲み込んだ。


「ちょ、ちょっと待ってくださいっ! 会長! そもそもこんなこと!」


「……こんなことじゃないよ?」


 彼女は俺の胸にそっと手を置いてきた。

 そして潤んだ瞳で見つめながら、そのまま顔を近づけてくる。


「か、会長……」

 

「仁くん……」


 ガチャッ!


 その時、生徒会室の扉が勢いよく開いた。

 重たいドアが跳ね返りそうなほど力強い音と共に現れたのは。


「ああああああああッ!! 会長と黒羽がディープキスしようとしてるッ!!」


「「うわああああああ!!」」


 大声をあげて入ってきた金髪ミニツインテールの女子は、俺と同じ1年で生徒会会計の小鳥遊小鳥(たかなし ことり)だった。


「ちげえええっよ!? 俺は会長に書類の整理を頼まれてただけだって!」


「そ、そそそそそそそうだよ!? わわわわ、私は仁くんにこの書類を受け取ってもらおうとしてたんだよ!? でででででぃーぷきすはまだ早いよ!?」


「会長! その返しだと誤解が重なるだけです!」


「はうっ」


 俺の目の前で耳まで真っ赤に染まった顔を隠し、机にうずくまっている茶髪ポニーテールの女子が2年で生徒会長の蓮見純恋(はすみ すみれ)先輩だ。


「いやいやいや。あれはもうあたしが生徒会室に来なかったら、舌入れてたでしょ? 会長めっちゃ発情した顔してたじゃん」


「小鳥ちゃん! 私は、はっ、発情なんてしてないって!」


「会長はエロいなぁ~」


「えええええ、エロくない!」

 

「俺もう書類の整理始めたいんですけど……」


 エロいエロくない論争で騒ぎ立てる二人をよそに、ため息交じりに額を押さえる俺は1年で生徒会庶務の黒羽仁(くろはね じん)だ。


 男女比2対8と、女子の比率がやたら多い高校に入学した俺は、ひょんなことから生徒会へ無理矢理入れられることになった。そして現在、庶務として主に生徒会長の蓮見先輩の手伝いをしているのだが。


「ねえねえ、仁くん? さっきの私ってエロかったのかな?」


 涙目でこちらを見上げる会長に、屈託のない言葉を送る。


「……まあ。エロかったです」


「エロかった!?」


 会長は俯いたまま拳を握りしめている。頬はりんごみたいに赤くて今にも爆発しそうだ。


「黒羽ってスカした態度でいるけど、内面はムッツリだよね?」


「スカしてねえよ。てか世の男子高校生なんてこれくらいが健全でよくない?」


「健全ってか童貞なだけでしょ」


「童貞なのはしょーがないだろ!」


「会長に童貞あげたらいいんじゃない?」


「ふぇっ!? わわわ、私が仁くんの初めてでいいの!?」


「会長、小鳥遊が言ってること真に受けないでください」


 普通なら拒絶するとこなのに、何でこの人は期待の眼差しで俺を見てくるんだ? いや、会長みたいに美人な先輩にもらってもらえるなら、男としてこれほど嬉しいことはないんだけどさ。


「それともあたしがもらってあげようか?」


「…………………………」


 小鳥遊の提案に俺は固まる。彼女は悪戯っぽく笑いながら貧相な胸元を見せつけ、自信満々に腕を組んでいる。

 華奢な肩幅と細い腰つきに相応しい控えめなサイズ感。白いセーラー服のブラウス越しに透ける、薄緑のレースの下着が妙に艶めかしい。


 そしてそれと対比するように、俺は会長の胸元へと視線を移す。

 制服越しにも理解(わか)る、はち切れんばかりに膨らんだ胸は卓上にのし上がり、強調された豊かな谷間が垣間見える。微かに透けて見える、純白のキャミソールに包まれた柔らかそうな膨らみは男としてどうしても目が離せない。


「…………小鳥遊」


「な、なによ?」


 俺はそっと彼女の肩に手を置いた。


「お前じゃ勝負にならない。出直せ」


「会長、黒羽はこれから殉職するので新しい生徒会庶務探しといてね」


「えぇ!? なんで!?」


 忌憚のない意見を述べたつもりが、どうやら彼女の地雷を踏みぬいたらしい。


「待て待て! 俺にとって需要が無いだけであって、きっとちっぱい属性を守備範囲とする貧層にはどストライクなはずだ!」


「今わの際によくしゃべるじゃん。あたしの前でよくもぬけぬけと巨尊貧卑を語れるね?」


「変な造語を作るなよ!? 俺は別に貧乳を下に見てるんじゃなくて巨乳を(あお)(たてまつ)ってるだけだ!」


「貧乳も仰ぎ奉れよ!」


「無理だ! 空しか見えねえ!」


簒奪(さんだつ)の正拳突き!」


 ――――パンッ!


「あっぶねえぇッ! 今、音を置き去りにしたぞ!?」


「なんで避けれんのよ!?」


「俺の童貞力は5万3千だ」


「プレステ5以下かよ(デジタルエディション定価)」


「2人とも仲いいよね?」


 俺の童貞力が低かったら、危うく殉職するところだったぞ。

 これから小鳥遊の前で胸部の話しすんの控えとこう。


 会長が構ってほしそうに視線をチラチラと送ってきてる。


「あの……会長? どうしたんですか?」


「仁くんって大きい方が好きなの?」


「はい。正義です」


「ふ~ん?」


 毛先を指先に絡めてくるくるといじる会長は、無意識に口元を緩ませていた。

 

 そんな仕草を目の前でされては、童貞だったら自分に好意があると勘違いを起こしてしまうじゃないか。あ、俺童貞だった。


「会長、なに食べたらこんなに育つの?」


「ひやぁぁぁぁぁっ!?」


 小鳥遊の華奢な腕が伸びたかと思うと、会長の豊満な胸に容赦なく両手が触れた。


「こっ! 小鳥ちゃん!?」


「なんだこのあたしには無い手のひらを包み込むような感触とそれを押し返す弾力はッ!?」


「んぅっ! もうっ! 実況しないで!」


「両の手が聖母マリアの祝福でも受けたかのような慈愛の温もりに満たされていく!?」


「あんっ」


 小鳥遊の指先が制服の布地越しに沈み込む。白いブラウスが波打ち、柔らかい肉の塊が形を変えながら押し出される。

 彼女は左右の巨峰を交互に持ち上げ、まるで果実の熟し具合を確かめる熟練農家よろしく慎重に押しては離しを繰り返す。

 

「桃源郷かな、ここ」


 今この瞬間だけ言えることが1つある。生徒会に入って良かったです!


「――童貞が鼻血垂らしながら血走った眼でこっち見てるから、もうやめとこっか。会長?」


「ふぇっ?」


「俺に構わずイけッ!」


「逝くのあんたでしょ」


 上気した面持ちで会長の頬は真っ赤に染まり、涙ぐんだ瞳が揺れている。セーラー服の襟元が少し乱れ、白い肌が露わになっているのが妙に生々しい。


「私……もうお嫁にいけない……」


「大丈夫だよ会長。黒羽が責任取ってくれるから」


「えっ!」


「お前が責任取れよ」


 ガララッとゆっくり音を立て、再び生徒会室の扉が開いた。


「……3人とも……仕事してる?」


 雪の音のように静かな声音で話し、銀色の長髪をなびかせる女子は2年で生徒会副会長の東雲詩乃(しののめ しの)先輩だ。


「仕事というか恥事をしてみたいだね?」


 その東雲先輩の後ろからひょっこり顔を出して子供っぽい笑みを浮かべる、濃紫のショートカット女子は同じく2年で生徒会書記の一尺八寸真華(かまつか まか)先輩だ。


「言っておきますけど、俺はちゃんと資料整理しようとしてたんですからね」


「鼻血を垂らしながらかい?」


「これは不可抗力ってやつです」


「真華先輩聞いてよ! この巨乳信仰信者、貧乳を見下してるんですよ!? ありえなくないですか!?」


「小鳥も真っ先にそれをボクに言うあたり、無自覚に貧乳同士の格差社会を生み出してるよ」


「えっ。いやぁ~、そんなことないですよぉ」


「小鳥遊、さっきも言っただろ。見下してるわけじゃない。俺が仰ぎ奉る先に(胸が)無いだけだ」


「それと仁はその言葉をよく吟味してから口に出した方がいいよ」


 むうっと頬を膨らませた一尺八寸先輩も、小鳥遊に劣らない小柄な体型にベストマッチな胸囲を併せ持つ。そして小鳥遊に軍配が上がるほどに絶壁だった。

 

 ロリ的な需要でいえば、ぶっちゃけ一尺八寸先輩のが圧勝だろうな。ボクッ娘だし。


「ま、まあまあ。仁くんだって男の子なんだし、しょうがないんじゃないかなぁ」


「会長は巨乳だからいいよね! 信徒がいっぱいいてさ!」


「わっ、私べつに教祖になった覚えはないんだけど……」


「入信の受付ってここであってますか?」


「仁くんはまず鼻血拭こうね?」


「……はい……ティッシュ……」


「東雲先輩、ありがとうございます」


「君ら毎日騒々しいよね……詩乃の清廉さを見習ってほしいよ」


「……ちなみに……わたしは……Cカップ」


「前言撤回させてもらうよ」


「俺分かります。入門編ですよね?」


「あんた少しは自重しなさいよ」


『はぁ』と大きくため息をつく一尺八寸先輩と小鳥遊の横で、東雲先輩から手渡されたポケットティッシュで鼻血を拭いた俺は、まとめた書類を手に自分の席へと座る。

 それにあわせて他の3人も同時に自分の席へと着いた。


 うちの生徒会の席順はローテーブルを中心に、会長がホワイトボード側の誕生日席、外窓側の2席は東雲先輩、一尺八寸先輩で、その向かいに位置する扉がある廊下側の2席が俺と小鳥遊の配置になっている。

 庶務の俺と副会長の東雲先輩は、それぞれサポートする会長の隣にくる並びだ。


「――それじゃ! みんな集まったし今日も生徒会の活動を始めようか!」


「はい!」


「は~っい!」


「……はい」


「はぁい」


 会長の号令に続いて、メンバーそれぞれが返事する。そんな中を割って入ってきた女性が1人。


「お~い。なんか『生徒会室から喘ぎ声が聞こえる』って苦情きたんだけど。ナニしてんのお前ら?」


 重たい瞼をこすりながら、いかにも寝起きといった風貌で現れた、青髪ウルフカットの女性は生徒会顧問の凸守(でこもり)まもり先生。俺を無理矢理この生徒会に入れた張本人だ。


「「「「…………喘ぎ声」」」」


 4人全員で会長に目線を送る。


「……えっ!? 私!?」


 さっき胸揉みしだかれた時に声出てたもんな。生徒会室の外まで聞こえていても不思議じゃない。

 あ、思い出し鼻血が。


「やっぱり会長はエロいなぁ~」


「ちょっ! 小鳥ちゃんのせいでしょ!?」


「まあでも、ボクも普段から会長はエロいと思ってるよ」


「……会長は……エロい自覚……ないから」


「うそでしょ!? 私ってそんなにエロいの!?」


「男子の俺もいるんで自重した方がいいですよ」


「黒羽もでしょ」


「何でもいいけどさ~。蓮見と黒羽? 私の目の届く範囲では避妊しとけよな」


「そういう問題じゃねえだろ」


 再び机に突っ伏しふさぎ込む会長。蒸気機関車かと思うくらいに頭から湯気が出ている。

 会長は腕の隙間から俺の方を涙目で見つめて、言葉を絞り出す。


「仁くん? 責任……取ってくれる?」


「そういうこと言うから誤解招くんですって」


「仁、諭すように言ってるけど、鼻血すごいよ?」


 席を立った一尺八寸先輩が俺のもとまでティッシュで鼻血を拭きに来てくれる。

 

 この先輩は小柄な幼女みたいな見た目で中身はしっかり者のお姉さんなところがあるから、時折背徳感に似たものを感じて理性が危なくなる。俺はロリコンじゃない。俺はロリコンじゃないし、こどもお姉ちゃん萌えでもない!


「……黒羽くん……鉄分……取らなきゃ」


「東雲先輩、その生レバーどっから出したんですか!? そのまま俺の口に運んだら保健所が黙ってないですよ!?」


「……大丈夫……新鮮……だから」


「生レバー提供した時点で法律違反なんですよ!」


 対面に座る東雲先輩が机に身を乗り出して、取り出した生レバーを俺の口元へと押し付けてくる。

 物静かな見た目に反して、奇想天外な行動をするからこの人は別の意味で目が離せない。


「黒羽~! やっぱり会長みたいな巨乳じゃないとダメってことか!? あたしじゃ不服ってか!?」


 隣に座る小鳥遊が俺の肩に身体を密着さて耳元で騒ぎ立てる。

 さっきからずっと胸のサイズのことを気にしていたのか。こいつはハツラツとした性格と裏腹に、意外と繊細なところがあるよな。


「まだ引きづってんのかよ!? しょうがないだろ! おっきいのが好きなんだよ男は!」


「貧乳だっていいでしょ!? ブラウスの胸元の隙間から見えるちっぱいとかにそそられろよ!」


「………………えぇ?」


「凸守先生、黒羽はこれから殉職するので新しい生徒会庶務探しといてください」


「おっけ~」


「引き止めろよ!? アンタ教師だろ!? こんな暴力殺傷事件、教育委員会が黙ってねえぞ!?」


「黒羽、死人に口なしって知ってるか?」


「うるさいよ、人でなし」


 この人よく教員採用試験通ったよな。もしや裏金か?


「ひぐっ、うぅ……仁くんがみんなに取られちゃう~」


 いつの間にか俺の周りに密集していた3人を見て、構ってもらえない会長が泣きじゃくり始めてしまった。


「どう収集つけろってんだよコレ」


 俺は子守をする幼稚園教諭か? 手当が欲しいよ、マジで。


「こいつらの面倒見るの、やっぱお前が適任だな? 無理矢理入れた甲斐があるわ」


「そう思うなら、せめて内申点くらいは便宜を図ってくれないですかね?」


「今後もこいつらの面倒見てくれるならな~。ま、頑張れよ。黒羽仁(くろうにん)?」


「ったく。そのあだ名はやめてくださいよ」


 内申点もかかってるし、しばらく俺の心が折れないうちは、この個性的なメンバーを相手するのも構わないか。


「どうしたの? 仁くん」


「黒羽、今度は避けないでよね?」


「仁、鼻血は止まったかい?」


「……黒羽くん……おいしい?」


 4人それぞれが俺を前に、その大きな瞳に捉えて離さない。

 俺以外全員女子のこの生徒会で、いろいろと言いたいことはあるが、そんな内側から出そうになる言葉を全て吞み込んで1つに絞る。

 


「うちの生徒会はどこか様子がおかしい!」


 

余談ですが、私は圧倒的貧乳派です。

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