第3章 - 呼び出す
今日はレオンの2歳の誕生日だ。
この世界で赤ん坊として過ごす時間は、とにかく長い。たった2年なのに、永遠みたいに感じた。
母さんが俺の火魔法を見た翌日、嬉しさのあまり町中に言いふらした。父さんにも話して、近所の人まで家に呼んで「見て見て!」と俺に詠唱させようとした。
……結果? 俺は疲れ果てて気絶した。それ以来、誰の前でも魔法を見せていない。
この2年で、俺はこの世界の言葉をほぼ理解できるようになった。
母の名前はステラ・イシュタル。
父はグスタフ・イシュタル。
そして俺はレオン・イシュタルだ。
父さんのグスタフは、元は喧嘩屋で、勇者パーティーでは「狂戦士グスタフ」と呼ばれていたらしい。
喧嘩屋は拳と体術で戦うタイプで、武器も一通り扱える。裏庭でいろんな武器を振り回してるのをよく見る。
母さんのステラは同じ勇者パーティー出身の魔法使い。
風、火、水――三つの基本属性を得意とする。
勇者が「大魔軍進撃」で死んだあと、パーティーは解散した。
その後、父さんが母さんに求婚し、南の王国フィロスの南部州で暮らすことにしたらしい。
この世界の2歳児としての俺は、たぶん異常だ。
文字が読める。書ける。
同年代の子どもが指をしゃぶってる横で、俺は母さんの本を読んでいる。
母さんは冒険の記録を本にしていた。
タイトルは『Defluxit Stella』。
自分の名前をタイトルにするってどうなの、と思ったが、中身は意外と面白い。
勇者アレックスの栄光と挫折の物語……のはずが、後半は母さんと父さんの恋愛パートが増えてちょっと痛い。
でも本には魔法の知識やポーションのレシピ、詠唱のコツ、戦った魔族や魔物の記録まで詰まっている。
価値があるのはそこだ。
本によると、基本属性は水・火・風・土の四つ。
それがいわゆる「属性魔法」。
さらに特殊属性として「闇」と「光」がある。
光魔法はエルフに多く、人間で使える者は神に祝福されたとされる。身体能力の強化や治癒もできる。
闇魔法は魔族の属性で、人間が使うと寿命を削るため「死の魔法」と呼ばれる。
魔族は生まれつき闇のマナを持ち、何千年も生きるから平気で使える。
光も闇も身体能力と魔力を底上げするが、人間が闇を扱うのは代償が重い。
毎日魔法を練習しているが、身体がまだ弱い。
2〜3発撃つだけでマナが枯れる。
魔法の仕組みは意外と単純だった。
要は想像と視覚化。
土の球を作りたければ、球体を思い描く。惑星でも、丸いボールでもいい。
そして地面にマナを流し込み、土に「こうなれ」と命令する。
通信みたいなものだ。
俺が送信者で、マナでイメージを送る。
元素が受信者で、命令通りに形を作る。
ただし、相性がある。
水神に祝福されたマナを持つ者は水を操りやすいが、火は苦手、みたいに。
元素側が拒否すれば、命令は通らない。
考えるだけで頭が痛い。
でも今日は誕生日だ。
余計なことは考えない。
父さんがギルドで働いてるせいで、うちの家族はこの町ではそこそこ有名らしい。
冒険者や近所の人がやたら集まってきた。
……でもこれ、子どもの誕生日会じゃない。
酔っぱらいの冒険者だらけで、父さんももう出来上がってる。
父さんは俺を持ち上げて、友だちに見せびらかした。
「見ろ! 俺の息子だ! こいつが何か分かるか? マグスだ! 魔法使いだ!」
呂律も回ってない。
「ほらレオン、見せてやれ……」
面倒くさい。
適当に見せて終わらせよう。
俺は土の完璧な球体を想像し、手を上げる。
空中に土の球が浮かび、そこに熱を加えるイメージで火を混ぜた。
周囲がざわつく。
父さんも驚いていた。母さんの話を半分夢だと思ってたんだろう。
拍手が起きる。
でも俺は解除する前に――やらかした。
燃える土の球をテーブルに落としてしまった。
球が爆発し、テーブルが吹き飛び、家が燃え始める。
一気に阿鼻叫喚。
父さんの反射神経のおかげで爆風から守られたが、家は炎に包まれた。
なんでだ。
小さな土と火の球のはずだろ。
どうして爆弾みたいに反応する。
母さんは炎の前に立ち、手を上げた。
すると火が空中に持ち上がり、周囲の炎を吸い込んで巨大な火球になった。
母さんは火球を解除し、火は消えた。
家の4分の3は守れたが、父さんと友だちは酔って地面に転がっている。
母さんは父さんを叩き起こした。
「ねえ、起きて! 何が起きたの!?」
母さんが友だちの方を見ると、みんなネズミみたいに逃げた。
そして母さんは片手で俺を抱え、もう片手で父さんを家の中に投げ入れた。
100キロ級の男を雑巾みたいに。
……怖い。
父さん、よく生きてるな。
今の母さんは魔王より怖い。
母さんは家に入り、父さんはふらふら起き上がる。
次の瞬間、母さんの手に炎がまとわりつき、炎の刃になる。
迷いなく父さんの首を狙って振り下ろした。
え、殺す気!?
父さんは寝ぼけながらも避けた。
反撃の蹴りを出すが、母さんは風で弾き飛ばし、父さんは壁に叩きつけられる。
俺は巻き込まれないように外へ。
父さんが突っ込む。
でも酔って足を滑らせ、顔から地面に突っ込んだ。
母さんの横には炎の球が三つ。
地面が沸騰し、床から巨大な火柱。
父さんはギリギリ回避。
でも家はさらに燃える。
家の損傷:60%。
残りの炎球が氷のような青に変わり、巨大な氷壁が出現して逃げ道を塞ぐ。
家の損傷:90%。
その時、ドアに老人が立っていた。
混乱を面白そうに眺めている。
「元気な家族だな、坊主」
元気? 殺し合いだぞ。
老人は笑う。
「懐かしいな……勇者パーティー最強の魔法使いが、“インヴォーク(召喚・上位詠唱)”を見せびらかしてた頃を思い出す」
本章は、作者の未公開の英語原稿をAIで翻訳したものです。英語の原文をご希望の方は、ALDIGISAMA@GMAILCOM までご連絡ください。




