第1章 - サンダー
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俺の名前はマキ。23歳。どうしようもない負け犬だ。
昔は気楽だった。責任も失敗もストレスもない、幸せな子ども時代。大統領になれば好き放題できると思っていたし、未来は明るいと信じていた。
でも、全部変わった。曇った日のことだ。学校からの帰り道、突然スマホが鳴った。出ると、叔母さんが泣きじゃくっていた。
***「マキ……お母さんが……死んだ……」***
夢みたいだった。視界がにじむ。脳が現実を受け止めきれなかったのかもしれない。
それなのに、不思議なことに悲しみも喪失感も湧かなかった。胸にあったのは――安堵だった。
心配事がひとつ減った、という安堵。苦しみ続けてきた母を見てきた。運の悪さに疲れ切っていた母を。
母はいい母だった。妹が生まれた日に父が家を出てからも、母は俺と妹をずっと支えてくれた。
妹には発達障害がある。16歳になっても、心は4歳の子みたいだ。
母が亡くなったあとで知った。死因はステージ4の癌だった。
だから母は掛け持ちで働いていた。自分がいなくなったあと、少しでも俺たちに金を残すために。
でも結局、残ったのは借金だけだった。母が残した金で、叔母が父の借金を全部返した。
本来は――俺たちのための金だったのに。
俺は心理学を学んでいたが、途中でやめた。妹を養うためにフルタイムで働く必要があったからだ。
今の俺は、ボロい小さなアパートで妹と二人暮らし。外資のカスタマーサポートで働いている。12時間ぶっ通しで電話対応。
こんな仕事を夢見たことなんてない。
周りの連中もみんな必死だ。最低賃金より少しでもマシだから外資にすがりついてる。
夢に破れた、大学中退の、必死なクズども。
一番ムカつくのは――俺もその一人だってことだ。
たまに思う。マシンガンがあればいいのにって。
オフィスの全員を撃ち殺して、上司の席に座って、ホットチョコレートを飲みながら田舎の音楽を流す。
あるいはPassengerでもいい。
***「♪ Only know you love her when you let her go…」***
名曲だ。
その曲を聴きながら、高度15000メートルから自由落下するのも悪くない。
空気抵抗を考えると、地面に叩きつけられるのはちょうど4分12秒後。曲が終わるのと同時だ。
俺が望むのは二つだけ。
世界一の金持ちになるか。
それとも、土の下で虫に食われるただの肉になるか。
誤解しないでほしい。俺は反社会的でもサイコパスでもない。
人付き合いはできるし、気にかけてるフリもできる。
でもさ。人を好きなフリして、笑い話に笑って、くだらない話を聞くフリをするのって――本当に疲れる。
誰かが今日の武勇伝だの自慢話だのを始めるたび、頭を撃ち抜いて終わりにしたくなる。
そして今、俺は長い橋の上に立っている。海面から25メートル。
飛び降りて死ぬべきか?
もちろん飛ばない。
俺が死んだら妹の世話は誰がする?
叔母さんか? 俺が金を払ってるから渋々面倒見てるだけの叔母が?
あの女も厄介だ。妹の体に痣がない日なんて見たことがない。
殴ってるのは分かってる。でも俺は何も言えない。
今の俺たちを支えてるのは叔母だけだ。失うわけにはいかない。
――そんなことを考えていた、その時。
橋の上で、タクシーが急停車した。
*「おい坊主! さっさと飛べよ!」運転手が笑いながら叫ぶ。*
俺はゆっくり車に近づいた。
***「お、おい、冗談だって……」***
運転手は目を逸らし、窓をゆっくり閉めようとする。
俺は窓ガラスを叩き割って運転手を引きずり出し、地面に押さえつけ、割れたガラスで喉を切り裂く――
……なんてな。
今のは嘘。
本当はこうだ。
**「おい坊主! さっさと飛べよ!」**
**『飛ばねぇよ!』**俺も笑って返す。
**「つまんねぇな……お前、ホモか?」**
そう言い残して運転手は走り去った。
俺は中指を立てた。
運転手はそれを見て引き返してくる。
俺は走った。でも車に勝てるわけがない。
人間の平均速度は時速約19キロ。オンボロ車だって時速60キロは出る。
追いつかれた。
運転手は車から飛び出し、ナイフを抜いて道を塞いだ。
「さっきのをもう一回やってみろ」
「す、すみません。冗談です」
「喉を切って橋から捨てたらどうなると思う?」
「やめてください」
「携帯と金を出せ」
強盗なんて初めてだ。
俺は12時間働いてやっと生きてるのに、このクソ野郎は金属片を突きつけて俺の一か月分を奪おうとしている。
『ほら、俺の一か月分だ。持ってけ』
ATMで下ろしたばかりの金入りの財布を投げた。
運転手は財布を掴んでポケットに突っ込み、車に戻って走り去った。
「最悪だ……!」
俺は橋の端で叫んだ。
「いっそ死んだ方がマシだろ!」
自分でも笑えるほど狂った笑いが出た。
欄干の上をバランス取りながら歩き、運の悪さを思い返す。
でも、ふと思った。俺より酷い目に遭ってる人間だっている。
星を見上げる。宇宙は何も気にしない。
この広さの前じゃ、俺の不幸なんて取るに足らない。
いや、俺自身が取るに足らない。
ここで死んでも何も変わらない。
いつか全部が崩れ、消えていく。
橋に座ってぼんやりしていると、突然猫が頭に飛び乗り、顔を引っかいた。
**「降りろ!」**
バランスを崩し、俺はそのまま落ちた。
これが俺の死に方かよ。
先祖も泣くな。猫に殺されるとか。
水面に落ちる。
衝撃で骨が折れ、息ができない。眠気が強くなる。
死ぬってこういう感じか。
仕事もしなくていい。妹の世話もしなくていい。社交もしなくていい。
やっと自由だ。
*システム再起動中。*
「おい坊主! さっさと飛べよ!」
「……は?」
何が起きた? 夢だったのか?
「おい! 飛べって言ってんだろ! 耳聞こえねぇのか!」
「うるせぇ!」
「今なんつった!?」
運転手はナイフを抜いて俺の喉元に突きつけた。
俺は両手を上げて抵抗をやめた。
「金出せ」
おかしい。こいつはさっき俺を襲った。
でもポケットにはまだ財布がある。
全部夢?
「すみません。これです」
運転手はニヤついて財布を奪い、俺を橋から突き落とした。
……また死ぬ。
*システム再起動中。*
「おい坊主! さっさと飛べよ!」
何だよこれ。
混乱しすぎて、俺は自分から飛び降りた。
「よくできたなぁ坊主!」
運転手が狂ったように笑う。
……これで本当に死ぬのか。
*システム再起動中。*
「おい坊主! さっさと飛べよ!」
俺はタクシーを蹴った。
「黙れ、このジジイ!」
運転手がナイフを持って出てきた。
切られ、何度も刺される。肩の大きな傷口にパンチを叩き込む。
視界が滲み、刃が体に沈んでいく。
*システム再起動中。*
「おい坊主! さっさと飛べよ!」
*システム再起動中。*
俺が死ぬたび、その言葉が聞こえる。
俺は仮想世界にでもいるのか?
「おい坊主! 飛ぶのか飛ばねぇのか!」
「……代わりに送ってくれない?」
「いいぞ、乗れ」
運転手の手には血。
もしかして、時間を巻き戻してるのは俺だけじゃない?
スマホが鳴る。上司だ。
「マキ! どこだ! もう1時半だぞ。休憩終わって30分過ぎてる! 戻れ!」
俺は切った。
すると別の知らない番号から着信。
「マキさんですか?」男の声。
「はい。どちらさま?」
**「マニラ警察のホセ警部です。あなたの妹さんと叔母さんが病院に搬送されました。誰かが部屋に侵入して二人を刺したようです。近所の方が叫び声を――」**
声が歪み、意味不明な音に変わっていく。
俺の体は凍りついた。
助手席を見る。
ピンクの財布があった。
妹の16歳の誕生日に俺が贈ったやつ。
「なんでそれを持ってる!?」
俺は運転手の首を絞めた。
車は制御を失い、トラックが突っ込んできた。
車が横転。
頭が地面に叩きつけられる。
痛みはない。
あるのは――
*システム再起動中。*
*プレイヤー生命力:ゼロ。*
*再起動不可。*
*システム再起動中。*
エラー。
システムエラー。
魂を別世界へリダイレクト中……
処理中……
別世界でプレイヤーを蘇生……
プレイヤー生命力:ゼロ。
システムエラー。
別世界でプレイヤーを蘇生……
転送不能。プレイヤー生命力がゼロ。
82億人の魂を犠牲に……宇宙をリセット……
プレイヤーは82億の命を獲得……
別世界でプレイヤーの蘇生に成功。
プレイヤー生命力:82億
ようこそ、戻ったな……
***赤ん坊の泣き声……***
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本章は、作者の未公開の英語原稿をAIで翻訳したものです。英語の原文をご希望の方は、ALDIGISAMA@GMAILCOM までご連絡ください。
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