第七話:庇護か監視か:風の魔法が繋ぐ二人の愛
◆遺跡での再会
背後から近づく足音に、レオナルド伯爵は警戒を強めた。彼の瞳は、私と遺跡の奥を交互に睨んでいる。
(嘘でしょ、この絶対絶命ピンチのタイミングで、誰なの!?)
洞窟の奥から現れたのは、アドリアン・フォン・シュタイン男爵だった。彼は埃まみれで、私と同じように懐中電灯を手にしている。その顔には、いつもの冷たさに加えて、強い焦燥感が浮かんでいた。
「アドリアン様!?どうしてここに!」
「貴様こそ、何をしている、アルメリア騎士爵。貴様を追いかけてきたに決まっているだろう。貴様の行いは常に秩序を乱す!」
アドリアン様は、私を一瞥すると、すぐにレオナルド伯爵の方を向いた。
「レオナルド伯爵。この遺跡に何の用だ。ここは騎士爵の領地だぞ」
「シュタイン男爵。君こそ、その没落寸前の家門の体裁を捨ててまで、このような場所に何の用だ。王国の未来に関わる宝を探しに来たのだろう?」
二人の視線が交錯し、洞窟内の空気は一瞬で氷のように冷たくなった。
(ギャー!最悪の三つ巴じゃん!アドリアン様、もしかして私の『静養』の裏の目的に気づいてたの!?それにしても、私のためじゃなくて秩序のためって言うんだから、筋金入りのツンデレだわ!)
◆魔法の起動とツンデレの共闘
レオナルド伯爵の従者たちが、私とアドリアン様を取り囲むように動いた。
「無駄だ、シュタイン男爵。君の家門の没落は知っている。君にこの遺跡の『鍵』を独占する資格はない」
伯爵が、私を排除してクリスタルを独占しようとした、その瞬間──。
私は、とっさにゲーム知識と前回発動した時の状況を思い出し、ある仮説に辿り着いた。
(この世界の貴族は、魔法を『詠唱』や『紋様』という枠組みでしか捉えられない!だから、何の訓練も受けていない私の『現代的な純粋なイメージ』だけが、古代魔法の根源を揺さぶる鍵になるんだ!)
私は大声をあげた。
「アドリアン様!風をイメージして!今すぐ!」
「何を馬鹿な!?」
「いいから!一番強く、風を感じた瞬間を思い出して!あなたの心の中に、この世界の魔法に縛られない、純粋な風のイメージがあるはずよ!」
私は、アドリアン様の混乱を無視し、自分自身の「推しのコンサートの熱狂的な風」のイメージを全力で再起動させた。
次の瞬間、クリスタルが激しく光を放ち、洞窟全体に凄まじい突風が吹き荒れた!風はレオナルド伯爵の従者たちを吹き飛ばし、一時的に伯爵の動きを封じた。
「これが…古代魔法の力か!」
レオナルド伯爵が驚愕の声を上げる。
アドリアン様は、突風に耐えながら、私を強く睨んだ。
「貴様、何をした!?」
(アドリアン様もイメージを試みたはず。でも、彼にはこの世界の魔法の常識が染みついているから、ノイズになって発動できなかったんだ!)
「いいから、逃げるよ、アドリアン様!」
私は彼の腕を掴み、風の勢いを利用して遺跡の扉に向かって走り出した。アドリアン様は文句を言いながらも、私の逃走に協力してくれる。
(やっぱり、冷たいフリして助けてくれるんだから、最高にツンデレじゃん!これで彼との共犯関係が、また深まった!)
◆騎士爵の覚悟と公爵への報告
私たちは何とか遺跡を脱出し、安全な場所に身を隠した。
「アルメリア騎士爵、この遺跡の秘密を誰に話すつもりだ。レオナルド伯爵か?それとも……」
アドリアン様が、息を整えながら尋ねてきた。
私は迷わず、セリオン公爵様に全てを報告することを決意した。
アドリアン様は私の決断に驚いた顔を見せたが、すぐに冷徹な表情に戻った。
「そうか。最も賢明で、最もつまらない選択だ。君らしいな。だが、公爵に全てを話せば、君は彼の『籠の鳥』になるぞ」
(つまらなくて結構!籠の鳥でも命が大事なんだから!)
私たちは夜明け前に宮廷へ戻る手配をし、その途中で、私からセリオン様への極秘の連絡を済ませた。
◆深まる謎とロマンスの予感?
翌日、セリオン様は私からの報告を受け、直ちに動いた。彼は、私とアドリアン様から話を聞いた後、静かに、しかし断固とした口調で言った。
「ルミア嬢。君は王国の根幹に関わる秘密に触れた。君を狙う者から守るため、今後、私の傍を離れないで欲しい」
これは、事実上の庇護の強化であり「恋愛フラグ」の強制起動だった。
(うわー!セリオン様の独占欲がすごい!籠鳥ルート確定じゃん!)
一方、アドリアン様は、セリオン様の決定に不満そうにしながらも、私に冷たい視線を向けた。
「…貴様。私の家門の秘密を知った。今後は、その口を堅く閉ざすよう、更に監視させてもらう」
彼の言葉は冷たいが、私にとっては「常に近くにいる」という、彼の新たなツンデレな関わり方の宣言に聞こえた。
(よし!セリオン様の絶対的庇護と、アドリアン様の冷たい監視、二重のガード体制完成!これでしばらくは安全かな?)
騎士爵ルミアの奮闘記は、古代魔法の謎を抱え、二人の攻略対象との関係がより密接になりながら、さらに深く宮廷の闇へと進んでいくのだった。




