第六話:風の魔法と三つ巴の思惑
◆騎士爵の「静養」に対する三者三様の反応
私の「静養のための帰省」は、宮廷に小さな波紋を起こしていた。地位が安定し始めた途端の突然の離脱に、三人の男性たちはそれぞれ異なる反応を見せた。
セリオン様は、私が宮廷を去る前夜、私に手紙を渡してきた。その文面は、完璧な気遣いに満ちていた。
「ルミア嬢。宮廷の喧騒から一時離れ、心身を休めることは賢明な判断です。どうか、あなたの望むままにゆっくりとお過ごしください。何か必要なものがあれば、ただちに私に連絡を。あなたの安全と安寧こそが、私の最も望むことです」
(うわ、完璧すぎて逆に怖い。心配性のお母さんかよ!この人、私が彼の庇護から永遠に出ないことを、当たり前だと思ってそう……)
彼は私を絶対的に守るというスタンスを崩さず、私の自主的な行動さえも完璧に包み込もうとしていた。私は、彼の庇護から抜け出す必要性をさらに強く認識する。
◆アドリアン・フォン・シュタイン男爵の冷たい焦燥
アドリアン様は、私が去った後、目に見えて不機嫌になっていたらしい。侍女からのゴシップによると、彼は私の不在を知った後、私が出した「非合法取引の情報」の真の出所を突き止めることに躍起になっていたという。
(多分、私が出所だって気づいて『あの成り上がり者が、俺の監視下から逃げやがって!』ってキレてるんだろうな)
彼の行動は、私への個人的な好意ではなく、私の持つ「情報」と「秘密」が、彼の制御下にない場所へ行ったことに対する、秩序を愛する貴族としての焦燥に見えた。彼は、私を助けながらも、私を『自分の秩序を乱す危険分子』として監視下に置きたがっているのだ。
◆レオナルド・カペリ伯爵の場合(傲慢な確信)
レオナルド伯爵は、私が宮廷を離れたことに、非常に満足していたらしい。
「ふむ。賢明な選択だ。宮廷にいるより、君の領地にいる方が『鍵』は動きやすい」
(あの人、本当に手のひらの上で踊らせようとしてるんだから!私が領地の秘密を探ることで、自分に協力する道を選ぶと確信してるんだ)
彼の自信満々な様子は、私へのプレッシャーとなった。
◆遺跡と魔法の正体:ノリが起動キー
私は領地の石碑の前に戻り、再び石碑の紋様と向き合った。前回、石碑が光った時の「風」と「古い言葉」の記憶が、私の頭の中でフラッシュバックする。
(風……?そうだ、ゲームで言ってた!この遺跡は『風の古代魔法使い』の隠れ家なんだ!)
私のゲーム知識では、この魔法使いが使うのは、「詠唱を必要とせず、意思だけで発動する」非常に高度な魔法だった。
私は、詠唱ではなく「強いイメージ」と「ノリ」で魔法を起動させることを思いつく。
(よーし、いくぞ!『風よ、来い!』なんて、恥ずかしいこと言わないけどさ!)
私は、石碑に触れ、目を閉じる。そして「窓を開けた瞬間の、あの爽やかな風」や、「推しのアイドルのコンサート会場で浴びた、熱狂的な風」など、現代の日常的な「風」の記憶を全力でイメージした。
すると、再び石碑が金色の光を放ち、強い突風が巻き起こった!風は私の周りを渦巻き、石碑の前に隠されていた古代の扉が、音もなく開いたのだ。
(マジか!『強いイメージ』で魔法発動とか、妄想JKが最強じゃん!)
◆遺跡内部と予期せぬ遭遇
開いた扉の向こうは、光に満ちた洞窟だった。私は好奇心に突き動かされ、懐中電灯(もちろん、現代知識で作らせた)を手に、中へと足を踏み入れる。
遺跡の内部は、ゲームのイメージCG通りだった。古代文字が刻まれた壁画、そして中心には、巨大なクリスタルが鎮座している。
(マジでリアルRPG!これ、ラスボスが出てきてもおかしくない雰囲気だね)
私はクリスタルの台座に近づいた。その時、背後から冷たい声が響いた。
「流石はアルメリア騎士爵。貴様がこの遺跡を探し当てるとはな」
振り返ると、そこに立っていたのは、レオナルド・カペリ伯爵だった。彼の隣には、武装した従者が控えている。
「伯爵様!?どうしてここに……」
「君が宮廷を離れた時点で、行き先は明白だった。君を逃すわけにはいかない。古代の鍵は、君のような下級貴族が独占していいものではない」
彼の瞳は、もはや私を「協力者」として見ていない。「古代の鍵」を手に入れようとする、冷徹な野心家の目だった。
絶体絶命のピンチ。しかし、その時!私の背後、遺跡の奥から、別の足音が近づいてくるのが聞こえた。
(え、誰!?まさか、セリオン様かアドリアン様!?)
新たな展開を予感させる音に、レオナルド伯爵も警戒の色を強めた。騎士爵ルミアの遺跡探索は、思わぬ三つ巴の戦いへと発展しようとしていた。




