第五話:遺跡のパスワード、ノリと拳で解読します
◆レオナルド伯爵の真意と古代の鍵
前回、ゴシップネットワークを利用して非合法取引を暴いたことで、私の騎士爵の地位は少し安定した。しかし、同時にレオナルド・カペリ伯爵の私への関心は、もはや好奇心ではなく、明確な査定へと変わっていた。
ある日、彼は私を呼び出し、例の「協力者」の件を再び持ち出してきた。
「アルメリア騎士爵。君の領地には『古代王国の鍵』となる遺跡が存在する」
彼の瞳は、私を宮廷の片隅にいる娘としてではなく、秘密の保管庫として見ている。その冷たい視線に、私は背筋を伸ばさざるを得なかった。
「私の協力者となれば、君の領地を狙う輩を排除できる。君には、その鍵を握っている者として、王国の『権威』を守る義務がある」
(やっぱり来た!古代魔法の遺跡!ゲームの最終ルートの鍵!私が知っている裏設定は、この世界では真実なんだ……!)
セリオン公爵様は私を「宮廷内の醜い争い」から守ろうとするが、レオナルド伯爵は「この世界の根幹を揺るがす秘密」へと私を誘っている。
「伯爵閣下、その遺跡が、なぜ王位継承争いと関係するのですか?」
「古代魔法は、この王国の真の『権威』の源だ。それを手にした者が、未来の全てを支配する。君は、その鍵を握っている」
彼の言葉は、私の頭の中で、乙女ゲームのシナリオがいきなり国家間の戦争シミュレーションに切り替わったような警鐘を鳴らした。
◆アドリアンの冷たい気遣い
レオナルド伯爵の提案を悩んでいる最中、私は宮廷の庭園で、偶然アドリアン様と鉢合わせした。
「貴様、最近レオナルド伯爵と接触しているようだな」
彼は仏頂面のまま、私を一瞥して、すぐに立ち去ろうとする。
「馬鹿な真似はよせ。あの男の誘いに乗れば、貴様は利用されるだけだ」
(え、もしかして嫉妬?……なわけないか。ただの秩序を乱すなって警告でしょ。もうちょっと素直になれないの、このツンデレ男爵は!)
しかし、その夜、私は彼の部屋の窓辺に、まるで忍者のように投げ込まれた匿名メモを見つけた。そのメモには、レオナルド伯爵の過去の冷酷な手口と、協力者として利用した貴族たちの末路が記されていた。
(うわー、怖い。アドリアン様、また匿名で助言してくれたんだ……ってか、監視カメラかよ!マジでストーカーじゃん!)
彼の冷たい言葉とは裏腹の、命に関わる情報を共有してくれる行動に、私の攻略対象への感情は、ますます複雑に、そして危機感を伴って絡み合っていく。
◆決断:古代遺跡の探索とノリの力
私は、レオナルド伯爵の協力者になるのではなく、自力で領地の秘密を探ることを決意した。彼の提案に乗るのは、あまりにもリスクが高すぎる。
(よし、こうなったら、現地調査しかない!JKの夏休み自由研究のノリで、遺跡探検だ!)
私は領地にいる父に「宮廷の生活に疲れたから、しばらく静養したい」と連絡し、宮廷を離れた。騎士爵の領地は、中央から離れた静かで自然豊かな場所だ。
領地に戻った私は、さっそくゲーム知識を総動員して、遺跡の入り口を特定しようとする。ゲームでは、入口は「太陽が昇らない日」にだけ開くという、中二病全開の設定だった。
私はその設定を信じ、領民が誰も立ち入らない森の奥深くへと向かった。そこで見つけたのは、古びた石碑。石碑の裏には、ゲームで見た通りの複雑な紋様が刻まれていた。
(キターッ!裏設定通り!この紋様が、遺跡の扉を開けるパスワードってわけね!あとは入力方法……)
◆深まる謎と魔法の予兆
私は、石碑の紋様を熱心に調べた。しかし、どう頑張っても、紋様の意味も、扉を開ける方法もわからない。ゲームでは、特定のアイテムが必要だったが、もちろん私はそれを持っていない。
「ちくしょう、パスワードが分かっても、入力方法が分からないなんて、最悪じゃん!何のための遺跡探検だよ!」
私が苛立って石碑を軽くペシッと叩いた、その瞬間──。
石碑が微かな金色の光を放ち、紋様が鮮やかに浮かび上がった。そして、微かな風が起こり、私の耳元に「忘れられた記憶」のような、古い言葉が、まるで誰かのささやきのように聞こえてきた。
それは、古代魔法の起動の予兆だった。
(え、何これ!?風!?まさか、本当に魔法が……!?まさか……「パスワードが分からないときは、とりあえず叩け」って、裏技かよ!?)
騎士爵ルミアの奮闘記は、理屈の通じないファンタジーの世界へと、その扉を、まさかの物理的なノリで開いたのだった。




