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第二話:サボりの記憶と奇妙な舞踏

◆公爵の庇護と迫る試練


社交界のパーティで公爵様に助けられてから、公爵邸で数日が過ぎた。


セリオン公爵様の庇護は、確かに私の命綱だ。彼の優しさは温かいが、その温情がいつまでも続く保証はない。


公爵様が席を外した途端、私に向けられる使用人たちの視線は冷たく、露骨なまでに私を避ける。


(まじで私物扱いじゃん。このままじゃ公爵様のお荷物扱いだよ!)


いつまでも彼の温情という薄氷の上に立っているわけにはいかない。自力でこの不安定な立場を改善しなければ、私はこの国で生きる場所を失うだろう。


私は必死で、低位貴族が地位向上のために利用できる手段を探した。そして行き当たったのが、騎士爵も参加が義務付けられる近々開催予定の「小競技会」だった。


ここで成果を上げる以外に、私の立場を確立する道はない。これは私にとっての最初の、そして唯一の自力で立つチャンスだ。


◆試練(1):乗馬術の壁


競技会当日。

最初に始まったのは乗馬術の審査だった。


頭で理解したセオリーを再現しようと、私は必死で馬を操る。だけど、幼少期からの訓練で培われた上級貴族たちの馬との一体感には、私の知識はまるで及ばない。馬術の優雅な「格式」が、私には決定的に欠けていたとも言われた。


結果は「標準的な出来」止まり。

遠くで、アドリアン様が冷たい視線を向けているのが分かった。その一瞥が「所詮はその程度か」と語っている気がして、私は唇を噛んだ。


◆試練(2):サボりの記憶と奇妙な舞踏


次に、「知恵比べ」(宮廷内の問題に関する論戦)に移る。だけど、この日のテーマは、まさかの「距離当て」

向こうの古びた訓練用の塔までの歩数を当てるという、一見すると素朴な競技だ。


貴族たちが古文書や複雑な測量技術の知識を動員し始める中、私の脳裏に、どうでもいい前世の記憶が蘇った。


(……あ!これ、あの時じゃん!体育の授業サボって、友達と『暇だからトラックの歩数数えようぜ』って遊んだ時のやつ!)


あの時の距離感と、この塔までの距離が酷似しているような気がしたのだ。


「少し、失礼いたしますわね」


私は唐突に立ち上がり、塔までの距離を、わざと優雅な歩調で歩き出した。


「なにをする気だ…騎士爵」


「これだから下級貴族は」


周囲の嘲笑の中、私は塔の外壁に手を触れた瞬間、勝ちを確信した。


(よっしゃー!やっぱり百メートルと同じ!これは勝った!)


周囲はまだ私を「奇行の令嬢」と笑っている。だから──私はちょっとした仕返しを思いついた。


「では、答えを持って帰りまーす!」


勢いよく、推しダンスで覚えた「ボックスステップ」と「ランニングマン」を繰り出す。

……けど、どっちも基本はその場ステップ。


(あれ?前に進まねぇ!?めっちゃ全力で踊ってるのに全然進まねぇ!マジかよ、ただの足踏みじゃん!)


ジリジリしか進めない私に、観客は息を呑んだ。


「な、なんだこの動きは……!」


「妙な呪文か? 魔術儀式か?」


「いや……ただのステップではない! 我らが知らぬ何かだ!」


内心は冷や汗ダラダラだったけれど、私はドヤ顔を崩さず踊り続ける。


そしてようやく審査員の前に戻り、決めポーズ。


「答えは――百メートル!」


審査員は顔を引きつらせた。


「なぜ分かった……!?塔まで歩いて往復しただけだろうに……!」


周囲の貴族たちはざわめいた。


「やはり呪文だ!」


「いや、あの奇怪な舞踏に秘密が……!」


「くっ……一代限りの騎士爵と侮っていたが、あなどれぬ……!」


私は胸を張って笑った。


(いや、ただの体育サボりの思い出なんだけどね!ドヤッ!)


◆騎士爵の壁:不当な評価と伯爵の警告


審査員が正式な測量結果と私の答えを照合すると、私の「百メートル」という答えが、最も正確であることが判明した。


しかし──。


実力で勝ったにも関わらず、最終順位は不当に低い、中位以下だった。


「アルメリア騎士爵。奇妙だが正確な着想だ。しかし、その手法は極めて格式に欠け、騎士爵の地位にふさわしくない『たかが偶然』の域を出ない」


審査員は、私の勝利を「格式の不足」という理由で低評価を下し、騎士爵の家柄を罰した。騎士爵の壁は深く、厚い。


悔しさに唇を噛んだその時、レオナルド・カペリ伯爵が私のそばに立っていた。彼は私を見つめ、静かに告げた。


「君の家は、既に陰謀の駒として狙われている」


◆小陰謀の回避と決意


その夜。ほんとに来た。レオナルド伯爵の言ってた通り、うちの家に「共同事業」って名目の怪しい話が舞い込んできたのだ。


「……これ、ぜってー罠じゃん。(うわー、テンプレ来たな)楽して儲かる話なんて、だいたい詐欺か宗教勧誘でしょ?ゲームでもあったよ、最初に甘いエサ見せて、あとからガッツリ持ってかれるやつ」


だから私はにっこり笑って言った。


「では、そちらも同じくらいのリスクを背負っていただく形になりますが、よろしいでしょうか?」


……(はい、終了。相手の顔はメッチャ引きつっとった。ちょろ…ッ)


こうして私は、持ち前の「JK的現代常識」で我が家を守り抜いた。

セリオン様は相変わらず優しくて、アドリアン様は相変わらず冷たい。


でも、もう私は決めたんだ。


誰かの庇護に甘えるだけじゃなく、女子高生らしい感性とノリで、自分の足で宮廷を生き残ってやるって!


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