第十話:裏切りの告発と、最後の賭け
◆最後の猶予と迫る危機
レオナルド伯爵からの最終警告「遺跡の秘密を公表し、私を王国の敵にする」という脅しは、私の心を重く圧迫していた。セリオン様とアドリアン様は、その脅しが現実味を帯びていることを察し、私への監視と庇護をさらに厳重にした。
セリオン様は、公務の合間を縫って私の領地に関する資料を集め、静かに伯爵の動きに対抗する準備をしていた。
(セリオン様はいつも完璧。でも、古代魔法の知識は、やっぱりゲームの知識には敵わないんだよね……。このままじゃ、セリオン様まで道連れにしちゃう!)
一方、アドリアン様は、私と二人きりになった時、冷たい口調で尋ねてきた。
「アルメリア騎士爵。貴様は、あの遺跡に何が隠されているか、知っているのだろう。それを私に話せば、貴様の家門の存続を、私が保証してやろう」
「秘密はありませんわ、アドリアン様。ただの古びた石碑ですよ」
(ここで正直に話したら、ツンデレ男爵が危険な秘密を握っちゃうルートじゃん!絶対ダメ!アドリアン様は自分のためじゃなく、私のために家門の保証なんてしてくれないんだから!)
私は彼の誘いを拒否したが、彼の瞳の奥には、家門の危機に対する焦燥がピークに達しているようだった。
◆伯爵の最終手段
そして、伯爵が警告から一週間後の、宮廷の定例会議の日。レオナルド伯爵は、ついに最終手段に出た。
会議の終盤、伯爵は立ち上がり、静かに、だが場に響き渡る声で宣言した。
「陛下、そして皆様。私は、この王国に潜む最も重大な脅威について報告しなければなりません」
伯爵は、ねつ造された疑惑ではなく、決定的な真実を持ち出した。
「アルメリア騎士爵の領地には、古代王国の真の力を秘めた遺跡が存在します。そして、騎士爵はそれを知りながら、公爵の庇護の下、その力を独占しようとしている!」
伯爵は、私とアドリアン様が遺跡にいたことを示す巧妙にねつ造された文書と、遺跡の紋様の精巧な写しを提示した。
宮廷は騒然となった。古代魔法という言葉は、貴族たちの間で「王国の根幹を覆す力」を意味する。私は一瞬にして「王国の敵」「危険な魔女」という汚名を着せられた。
◆セリオン様の決断
セリオン様は、即座に動いた。彼は席から立ち上がり、私の前に立ちはだかった。
「レオナルド伯爵!貴様の言うことは、騎士爵の地位と領地を狙った悪質な中傷だ!私は、アルメリア騎士爵の潔白を保証する!この場で、私の王位継承権に懸けて!」
セリオン様の声は、力強く、揺るぎなかった。彼は、私を絶対的に信じ、守り抜くという彼の愛のすべてを、この瞬間に賭けていた。
(セリオン様……!やっぱり、私の騎士様じゃん!こんなこと言われちゃったら、惚れちゃうでしょ!)
しかし、伯爵は勝ち誇ったように笑った。
「公爵閣下。ご自身の王位継承権まで賭けて、この成り上がり者を擁護されますか?証拠は、これから騎士爵自身が示します」
伯爵は、彼の部下に指示し、遺跡の石碑を宮廷の広場に運び込ませた。
「アルメリア騎士爵。もし貴様が潔白なら、この紋様がただの古い石であることを証明しろ。貴様が古代魔法の鍵を持っていないのなら、この紋様は何の反応も示さないはずだ!」
◆アドリアン様の告発
その時、一歩前に進み出たのは、アドリアン様だった。
「待て、レオナルド伯爵!」
アドリアン様は、私を擁護するのかと思いきや、私の隣に立ち、私を睨みつけた。
「アルメリア騎士爵。正直に答えろ。貴様は、あの夜、私と共に遺跡にいた。そして、貴様が風の魔法を起動させたのは事実だろう!」
(ええー!ここで裏切るの!?アドリアン様、最悪のタイミングでツンデレじゃない告発じゃん!)
アドリアン様の告発は、宮廷にさらなる衝撃を与えた。彼は、私への裏切り者という汚名を着せられながらも、彼自身のプライドと家門の危機を回避するために、私を「道連れ」にしようとしたのだ。
(アドリアン様。これで彼の家門の没落は防げるかもしれない。でも、私は……)
◆ルミアの最後の決断と覚悟
セリオン様は驚愕の表情でアドリアン様を見つめ、レオナルド伯爵は歓喜に顔を歪めた。
私は、完全に追い詰められた。誰も私の言葉を信じない。このままでは、私は王国を揺るがす魔女として、処刑されるか、セリオン様の地位を道連れにしてしまう。
私は静かに、石碑の前に進み出た。
(もう、誰にも頼れない。現代の知識も、ゴシップも、ツンデレも、庇護も、もう通用しない……。この状況を覆せるのは、古代魔法の真の力しかない)
私は深呼吸し、全てを賭けて、石碑の紋様に手を触れた。
「伯爵閣下。これがただのロゴマークではないことを、証明して差し上げますわ」
私はこれまでの「コンサートの熱狂」といった個人的なイメージを超え、「巨大な台風が上陸するニュース映像」「宇宙から見た地球上の渦巻く雲」といった、現代の科学と映像で知る、制御不能な強大な風のエネルギーをイメージした。
私の最後の賭けは、古代魔法の真の力を、この宮廷の広場に解き放ち、全てを覆すことだった。




