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守ってあげたい女子の学園二位に君臨する脱力系幼馴染が俺の義妹を見た結果、対抗手段を間違ってイケメン女子になった  作者: 遥風 かずら
第三章 見えない幼馴染と見られる幼馴染

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43.昨夜はお楽しみだった?

 俺が思っていることと鈴菜が思っていたエロ的な思いは全く違っていたものの、ようやくお互いの『好き』を確認出来たのは素直に嬉しく思えた。


 キスくらいでと言われれば何も言えなくなるけど。


 見た目や性格の一部を少し変えてまで俺に気持ちをぶつけてきた鈴菜の気持ちには、これから少しずつ応えていこうと思う。


 俺の家に初めて寝泊まりした鈴菜だったが、一緒に添い寝はしたものの結局何事もなく一日を終える。


 しかもいつもなら起きるまで時間がかかる鈴菜だったのに、朝起きたら勝手にいなくなってた。


 その辺りの動きに何となく寂しさを感じたり。


「ん~で? おにーさん的に、昨夜はお楽しみだった?」


 鈴菜がいなくなっていたので一人寂しく教室に向かうと、既に教室に来ていた凪からぎくりとする言葉を投げられた。


「何のことかな?」

「昨夜ヤったんだよね? おにーさんの幼馴染さん、泊まっていったんだよね?」

「してないよ。単純に俺の部屋に来て寝泊まりしただけ」

「そうなの? 何で?」


 何でと言われても困る話だな。


 いや、そもそも――


「――何で凪がそれを?」

「だって、ママにばらされたしあの後大変だったし。凪を追い出したから()()なのかなって思うじゃん?」


 意外に根に持つタイプだったのか。


 ……鈴菜は否定してたが、母さんと連絡を取り合ってたから間接的に告げたも同然かもな。


「違うよ」

「え~? じゃあどこまでした感じ? おにーさんのベッドで一緒に寝たんなら何かやっててもおかしくないよね~?」

「何も」


 正確には軽く触れたけど。


「へ~……おにーさんってそんなだったんだ。何かな~」


 俺に散々甘えてきた凪は、もしかして下心的な期待でもしてたのだろうか。それこそ義妹に手を出したり。


 でも俺からしたら同い年だろうと義妹として紹介された時点で、()()()()気にはならなかったんだよな。


 凪は最初から俺にベタベタしてきたけど、俺に下心な期待をしての行動だったらどのみち応えられなかったかも。


「おれの言った通りでしょ? 凪ちゃん」

「だった~! すっごいがっかり~」


 凪の陰からひょっこり出てきたかと思えば、凪の味方なのか早太が顔を見せる。というか、いつの間に仲良くなっていたんだ?


 ちなみに凪は俺と同じクラスに編入してきた。編入初日に守ってあげたい推しの編入生として音川に紹介されたことで、すぐにクラスに馴染んだ。


 夏休み直前の編入だった凪は、心に余裕が出来たみんなとすぐに打ち解けていた。音川の推しというだけですぐに認知されたというのもあるが。


「あはは。で、どう? うちのクラスの男子にいい人はいた?」

「ん~特には。早太くんは? いないの?」

「おれは恋愛的な対象にされたことがないからね。いないよ」

「じゃあ狙っちゃっていいですか?」

「あはは」


 ……などなど、俺に対する凪の感情はとっくにどこかにいなくなっていた。


「そういや、音川がいないな。それと、木下の奴も……」


 鈴菜は相変わらず女子たちに囲まれているから省くとしても、調子のいい木下と口うるさい音川が教室にいないのは珍しい。


「鈍い、鈍すぎるよおにーさん」

「それはないよ、貴俊」


 俺が言ってることがよほど間違っているのか、河神はもちろん凪も俺を見る目がやや冷ややかだ。


「……ん?」


 何でなのか教えてくれないまま次の休み時間を迎えたので、俺は思い切って音川に近づくことにした。


 ちょうど一人になってるし今がその時だ。


「あ~音川。ちょっと訊きたいことがあるんだけど……」

「黒山? え、何?」


 ……おかしい。いつもならすぐに罵声を発せられるのに、意外に穏やかな反応なんてどうしたんだ。


「推しが鈴菜から凪に変わったのは知ってるけど、凪が教室にいるのに音川は教室にいないよな? どこに行ってんだ?」


 本来なら音川を気にする必要はどこにもない。だが、かつては鈴菜を推していた奴だから一応気にすることにはしている。


「別にどこでもないけど。何であんたが私を気にしてるわけ? 気にするなら鈴菜じゃないの?」

「鈴菜はもう気にしなくてもよくなったし、女子たちに囲まれてるから話しかけるのは流石にな」

「はぁ? バッカじゃないの? まさかだけど、キスごときをしたくらいで安心してるとかじゃないよね?」

「なぜそれをお前が?」


 ……いや、そういや鈴菜って何でも音川に話してた気がするな。そうなると昨日のことをほとんど話してるのでは。


「キスでお互いの気持ちを確かめたのは聞いたけど、それで安心してるんならヘタレ野郎だろ! 付き合うんなら最後までやれよアホ!」

「何でお前にそこまで言われなきゃならないんだよ! そういうお前は――もしかして、木下とそういう関係か?」

「弘くんとはまだそこまでじゃないけど、あんたに関係ないし。とにかく、鈴菜を泣かすとか許さないから! あと、くだらないことで話しかけんなヘタレ!!」


 ……弘くん?


 ああ、そうか。木下の奴、音川と上手くいってるんだな。それにしたって、鈴菜との関係を何であそこまで言われねばならないのか。


 女子たちに囲まれてるところに割って入って教室から連れ出せたら何の苦労もないが、そこまでしなくても大体通じ合ってるだろ。


 と思いつつ、昼休みになると鈴菜の周りは女子ばかりで俺が近づく隙はまるで生まれなかった。


 そんな俺に呆れながら声をかけてくるのは、凪と河神の二人だった。


「凪が引いたのはおにーさんの行動だぞ? いい加減にしろ~!」

「そうそう。凪ちゃんの言う通りだよ。音川にも言われてたみたいだけど、後は素直に動くしかないんじゃないかな? 貴俊が素直に動けば、きっと晴れの日も続くと思うんだ」

「またお告げか? 早太」

「それもあるけど、夏休みに入っても雨ばっかりだったらいつもと同じことしか続かないと思うよ。だからさ、後は貴俊がちゃんと動くだけだと思う」


 音川と木下はともかく、何で凪と河神まで一緒になって俺に説教をしてるのか意味が分からないぞ。


「貴俊おにーさん。凪は本当はおにーさんとイチャイチャしたかったんだぞ。だけど、もういいやって思えたんだからおにーさんが何とかするしかないんだぞ。放課後でいいから、動け~!!」


 まさか凪に応援されるとは。


 でも昨日のことがあるし、夏休みに入る前に伝えるしかないのかもしれないな。

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