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守ってあげたい女子の学園二位に君臨する脱力系幼馴染が俺の義妹を見た結果、対抗手段を間違ってイケメン女子になった  作者: 遥風 かずら
第三章 見えない幼馴染と見られる幼馴染

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41.多分、合ってる

 こんなあざと可愛いお願いをされて駄目なわけがない――けど、それってつまり。


「支店の事務室に寝泊まりするのとはまるで訳が違うんですよ? 鈴菜が俺にお願いしてるだけで、俺の中では変な意識が芽生えるんだけどそれはご存じでしょうか?」


 変な訊き方をしてしまったが、鈴菜はどう答えるつもりだろうか。


「ん~……うん。貴俊くんのお部屋にお邪魔してるってことなので、多分貴俊くんの想像で合ってるかと思いますよ?」

「俺の真似するなよ……」

「してないし」


 ……何だ、前の鈴菜だな。イケメン女子化は見た目だけで、中身は結局あまり変わってないってのがいま分かった。


 それにしても母さんに連絡して凪をあっさり退散させるとか、以前の鈴菜にはなかった行動力だ。連絡先だって今の今まで知らなかったはず。


 いや、待てよ?


「ちなみにだけど、母さんの連絡先はどこから?」

「アルバイトだよ」


 あぁ、そういやこいつの名前ってアサだったな。


「……アサとしてバイトをしてた時か!」

「だって連絡先はお互い聞かれるでしょ? その時に気軽に電話してきてねって言われてたから、バイト以外でも相談とか聞いてもらってたんだ~」


 なるほど、その時から母さんとやり取りしてたのか。もちろん、今回の電話の結果は凪に備える為じゃないとは思うが。


 もし凪を自分の力だけ(半分は母さん)でいずれどうにかしようとしていたとすれば、かなり時間をかけて実行していたということになる。


 それはそうと。


「……で、泊まるんだよな?」

「うん。一緒に寝よ?」

「え……っと、それはつまり~最後まで平気的な?」


 とはいえ、俺の反撃で少しだけ近いことをしちゃってるわけだが。


「――? よく分かんないけど、朝まで一緒だよ」


 鈴菜は俺の言葉に首を傾げながらも嬉しそうにしている。


 この様子だとまるで分かってないな。


 雨でずぶ濡れの時に鈴菜の家で流しっこをしていたが、いま考えれば俺も凪も()()()()自体に特別な意識や感情は無かった。


 でも今は、少なくとも俺の意識は完全に鈴菜に触れたいだとか、それ以上の動きを望んでいる。


 だけど鈴菜の首傾げを見ると、多分俺だけが()()()()意識になってしまっているだけで、鈴菜は単純に安心安全な幼馴染の部屋で寝るだけということしか思いついていない。


 そうなるとどうなるんだ?


 鈴菜の意図しない動きを俺がしてしまうと、その時点で泣いてしまうのでは?


「そ、そうなんだ。じゃあ、えっと……とりあえずリビングに下りて夕飯を食べるか」

「何か作ろっか?」

「食材があったかな……」


 俺は普段は支店の部屋で適当に食べているが、週末に家に帰った時は一応親の手料理を食べている。


 だが、多忙な人でもあるので冷蔵庫には保存のきくものしか入っていないことが多い。あとは定番のカップ麺かレトルト食品とかになってしまうわけだが。


「カップ麺でもいいよ」

「ん~そっか。じゃあ、そうするか」


 凪がいなくなり、俺の部屋には鈴菜と俺だけになった――とはいえ、寝るにはまだ早く、かといって部屋から出ずに何かするという考えにはならない。


 幼馴染としていつも一緒にいたのは確かだが、部屋で二人きりになったからといって今さら意識して何かを始める――そうなりそうにないわけで。


 そんなよこしまな考えを俺の中だけで悶々とさせつつ、鈴菜と適当カップ麵を食べ終えた。


 テレビを見るでもなく、このまま何事もなく部屋に戻って終わる。


 ……そう思っていると、


「貴俊くんのお家ってすぐ沸くんだっけ?」

「まぁ、割と」

「じゃあ、もう少し落ち着いたら入っていいよ?」

「……風呂に?」

「うん」


 まさか俺の家で流し合いか?


「いや、でもお前、着替えは?」

「違くて、貴俊くんだよ」

「ん? 俺だけ風呂に入れって言ってる?」

「そう」


 まぁ、そうだよな。そんなもんだ。


 しかし一応提案はしてみる。


「着替えはともかく、お前も一緒に入っていいと思うが……」

「んとね、わたしはタオルで拭くだけでいいんだ~。貴俊くんは自分のお家だけど、わたしは流石に無理だよ」

「あぁ……それもそうか。悪い、そうする」


 鈴菜の家の時は鈴菜のママさんが公認していたが、母さんは多分()()を知らないはず。そうなるといくら幼馴染であっても、人の家で二人同時に風呂に入るのはよろしくない。


 今は店に戻っているが、また家に戻ってこないとも限らないからな。


「じゃあタオルを貸すから、悪いけどそれで」

「先に体を拭いて、それで……先に貴俊くんのお部屋で待ってるね」

「――! あ、うん。分かった」


 何も分かってないと思っていたのに、どうやら鈴菜も俺と同じことを思っていたってことでいいのかもしれない。


「貴俊くん。合ってるよね?」


 ――つまり、そういう意味のはず。


「そ、そうだと思う」

「……うん」


 あぁ、そうか。鈴菜ととうとうそうなるのか。それなら念入りに洗っておかないと駄目だな。

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