39.甘えの反撃を受けた幼馴染が可愛すぎた件
「おいで、鈴菜」
さっきまでとは違う反応を見せる俺に対し、鈴菜は俺の声がする方を向いて戸惑いと動揺を一気に見せる。
途端に顔を赤くしながら発した声は――
「――ふ、ふぇっ!?」
明らかに焦りを見せる時に出す鈴菜の声だった。
俺の誘いに困惑しながらも、鈴菜はおずおずと身を乗り出して俺が迎えるタオルケットの中に潜り込んでくる。
触れるものなら触っていいよなどと抜かすので、俺はすぐさま鈴菜の胸に向けて右手を滑らせて膨らみのあるところをやんわりを持ち上げた。
「はわぁっ……はわっはわっ……はわわわ」
さらに続けるようにして、俺は左手を素肌を露わにした太ももの内側に軽く触れつつ、優しめに撫でた。
「はにゃっ!!」
もはや小動物の可愛い声しか出せなくなってるようだが、辛うじて喘ぎの声は出さない様子。
「耐えてるなんて、流石だな。それならもっともっと……」
「……だ~だめだめだめっ」
思った以上に拒んでくるが、本気の拒みではなく恥ずかしさの拒みらしい。
鈴菜にこんな可愛い一面が隠されていたなんて、別の意味でもっといじめたくなるが、今回はここまでにしとく。
誰も家の中にいないとはいえ、誰かが突発的に入ってこないとも限らないからな。特に凪だ。
いつも支店の部屋に俺がいないと分かったら、こっちに来るはず。
ふぅ。よし、ここらでいつも通りにしよう。
「どうだった? 俺にドキドキしたか?」
「……あぅ」
「やっぱ、俺が甘えるよりも鈴菜が俺に甘える方が自分たちらしい気がする。鈴菜は?」
これは意地悪な質問だろうか。
「……うぅぅ」
俺の質問に鈴菜は顔を真っ赤にしている。しかもうずくまるように座って、すっかり押し黙ってしまった。
これは――頭でも撫でて慰めるべきだろうか?
「あ~えっと……鈴菜? ごめん、俺が悪かったよ。意地悪なこと言ったよな? えっと、本当にごめん」
鈴菜が顔を上げてくれないので、とりあえず頭に手を置いて優しめに撫でてあげた。
鈴菜はぴくっと反応して、恐る恐る顔を上げてくれた。
「分かればいいんだよ? もうっ、駄目なんだからね? 鈴菜さんは慣れてないことをされると何も出来なくなるんだぞ! からかったら駄目だぞ~」
「……いや? 俺は本気だった」
「ふぇ? ほ、本気?」
「俺は本気で鈴菜を甘やかしたかった」
からかいも多少あったが、鈴菜に対する俺なりの気持ちを込めた行動だったのは確かだしな。
「それって、わたしのことを――?」
今までは裸の見せあいっこでも気持ちなんてどこかに置いていた。だけど、もう素直になった方がいいかもしれない。
「俺は鈴菜を――」
「う、うんうん。貴俊くんはわたしを……?」
「す――」
「あ~~~~!!! やっぱりここにいた~!! 連絡くらいしてよ~!」
俺の気持ちを素直に打ち明ける――だけだったのに、最悪なタイミングで凪が部屋へ入ってきた。
予想してたけど、やっぱり来たわけだ。
「え? ええ?」
……だよな。鈴菜の反応は戸惑いに変わるよな。
「あ、浅木さんだ。こんにちは~こんばんはかな?」
鈴菜に対し、凪はわざとらしく気づいて頭を下げている。しかしその態度は、どう見ても挑発的だ。
部屋に入ってきてる時点で気づいてただろうし、俺が鈴菜に言うはずだった言葉を遮ったのも狙ってのことだろう。
「凪さん……だよね。どうしてここに?」
多分、鈴菜も分かって訊いてるんだろうな。
「ここって私の家なので! おにーさんの部屋は私のお部屋でもあるので浅木さんの言ってることの意味はわかりませーん!」
「……わたしも分からないですよ? でも、凪さんに何を言われても平気なので」
「へぇ。それって、おにーさんのことですかぁ?」
鈴菜は俺をちらりと見ながら力強く頷いてみせた。
「ま、まぁまぁ、凪は何しにここに?」
どうせ支店の部屋にいないから探しに来たんだろうけど。
「もちろん、おにーさんを連れ戻しに! 何をするにもおにーさんがいないとつまんないんだもん!」
嘘つけ。俺がいなくても全然平気なくせに。
凪は俺をちらちらと気にしつつ、明らかに鈴菜に対して威嚇の態度を見せている。そんな凪に対し、鈴菜も負けていない。
「でも凪さんって妹でしょ? わたし、貴俊くんとはずっと幼馴染なんだよね」
言いながら鈴菜が俺の頭を自分の胸の辺りに引き寄せて、ヘッドロックもとい、抱きしめてくる。
うおっ?
なんて柔らかな感触――じゃなく、こんな大胆な行動を取るなんて初めてなんじゃ?
「むっか~! 貴くんを独り占めするつもり?」
「しますよ? だって、貴俊くんは可愛いですもん」
「え? か、可愛い……えぇ?」
いつになく気合が入った鈴菜の挑発的な言葉と俺への抱きしめで、凪は唖然としている。
むしろ若干引いてる?
「わたし、負けないからね?」




