38.鈴菜さん、思いつく限り甘えさせる 3
雨の日は鈴菜の家で洗い合ったり流し合ったり――といった、裸の付き合いで家にお邪魔することが多いが、俺の家に鈴菜が来ることは稀だったりする。
支店と違い、本店の隣にある関係もあってか鈴菜が遠慮して来ないというのもあるが、だとしてもほとんど来ることがない。
そのせいか、家に近づくにつれ鈴菜の顔に緊張が走っているのが見て取れた。
「ビビることないと思うけどな」
「そんなことないけど~……何となく」
髪をショートに変えた今の鈴菜は女子に守られるイケメン女子だ。だが、俺をガードしていた壁はすでに無くなり、徐々に以前の居眠り女子としての反応に戻りつつある。
学園の中では俺を甘やかすちょっと強気な女子として行動していたようだが、所詮は思いつきによる行動に過ぎない。
何せ俺への甘やかしの仕方が、完全に幼い男の子向けとしか思えないからだ。
昼休みに体を密着させて内緒話をしてきたが、それも以前の鈴菜ではよくあった行動だったので、俺にとっては日常茶飯事だった。
「なんか久しぶりなんだけど」
「久しぶりっていうか、俺の家に来ることがなかっただろ」
「う、うん……それはそうだけど~」
俺の家を目の前にして緊張でもしてきたのか、鈴菜は家ではなく本店ばかりを気にして見ている。
「店に寄って母さんに挨拶したいのか?」
「違うし~。挨拶なんかしたら色々出来なくなる……ごにょごにょ」
本店に来ることもないから見ていただけっぽいが、俺の親に会うのもバイト以来だから気まずいのかもしれないな。
そんなこんなで家の中に入り、すぐに俺の部屋へと移動する。
「うわ~貴俊くんのお部屋~! ……なんにもないね~」
「まあな。大部分は支店の部屋に置いてあるし、ここは寝るだけの部屋だな」
「そっか。えへへ、じゃあ始めよっか!」
「ん?」
殺風景な俺の部屋に驚いた後、鈴菜は部屋の中央を陣取ってすぐに制服を脱ぎだした。
「え? な、何してんの? 何で制服を脱いで……」
「動きやすい格好の方がいいかなぁって」
鈴菜は俺の部屋に行くことを前提としていたようで、制服を脱いでみせたが、その中身はTシャツ姿とスパッツ姿だった。
妙に胸の膨らみがリアルに見えるが、もしかしてブラジャーをつけてない?
「お前、下着は……?」
「外してきた~! だって楽なんだもん。自分の部屋でもそうだし」
「だからって……」
「おかしいことを言うよね~。だって、雨でずぶ濡れた時はお互いに裸同士なのに、どうしてTシャツだと気にするのかな?」
理屈を言われるとそれはそうなんだが、何だかな。
「まぁまぁ、それはそうと……」
「ん?」
ラフな格好になった鈴菜は太ももを露わにしたまま、正座をして膝の上を軽く叩きながら俺にそこに横になるように促してくる。
膝枕をさせてあげる――そういう感じに。
「……なるほど」
鈴菜の膝を枕にして横になると、鈴菜は俺の頭をなでなでしてきた。この時点で、やはり俺のことを子ども扱いしていることが分かった。
そしてこの程度の甘やかしで俺が満足すると思っているらしい。
試しに太ももに手を伸ばしてみるも、
「めっ! だよ? 貴俊くんを甘えさせたいの! なのにわたしに触ったら、甘やかすうちに入らないんだよ?」
……などと、よく分からない理由で手を払われた。こんなことが俺への甘やかしなら、はっきり言って単なるままごとのようなものとしか思えない。
どうせなら思いきり抱き締めてもらったほうが納得する。
それなのに、鈴菜の俺への甘やかしは幼い子を甘えさせる程度の知識しか備わってない。
こんなことでは俺もそうだが、鈴菜の気持ちも前に進んでいかない――そう思った俺は、懲りずに鈴菜の太ももに手を伸ばしつつ届かないなりに鈴菜の顔に手を伸ばしてみる。
すると、流石に俺の企みが分かったのか挑発めいたことを言い出した。
「貴俊くん、わたしを触りたいんだよね? 沢山甘えても何か足りなそうにしてるし、それなら触ってきなよ。触れるものなら触っていいからね~?」
……随分と舐められたものだ。
あくまでも俺を幼い男の子扱いで甘やかしたからか、このまま俺が何も出来ないと決めつけて胸の膨らみが丸見えのTシャツ姿と素足を出した状態で俺を挑発してくる。
流石の俺にもプライドがあるからな。ここらで甘えの反撃をさせてもらう。
……なので、いったん鈴菜から離れ、自分のベッドに移動して横になり鈴菜を誘うことにした。
「鈴菜、今度は俺が甘やかすから」
「――えっ?」
自分の想定が越えたのか、鈴菜は俺の言葉に唖然としている。
ここからが俺の反撃だ。
甘えるってのがどういうことなのか、行動で示させてもらう。




