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守ってあげたい女子の学園二位に君臨する脱力系幼馴染が俺の義妹を見た結果、対抗手段を間違ってイケメン女子になった  作者: 遥風 かずら
第三章 見えない幼馴染と見られる幼馴染

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25.カラオケで再会するイケメン女子

「おはっす~黒山」


 連休明け後の中間が終わった朝。


 連休中は本店の実家にいたこともあって、朝早くに家を出る癖がついた俺は割と早い時間に通学路を歩いている。そんな俺に調子よく挨拶してきたのは木下だった。


 中間まで鈴菜とは結局話す機会はなく、というか常に机に突っ伏していたし俺から話しかける習慣もなかったからそのままにしておいた。


 義妹の凪も同様で、中間期間はバイトに入らないので支店ではあまり顔を合わせなかった。もっとも事務室で甘えられたけど。


「朝から何でお前と会うんだよ?」

「冷たいこと言うなよ~! こんな晴れてんのに」

「で、何の用?」

「挨拶しただけだぞ? 友達が挨拶してくるのが不思議か?」

「……いや」


 河神と比べるとそれほど話もしないから友達ランクが下がっていたし、凪へのナンパとかもあったから俺の中から木下が友達だという認識がなくなっていた。


「でさ~黒山にお願いがあるんだけど」

「駄菓子屋のあの子は諦めた方がいいぞ。脈はない」

「その子はもういいんだ。オレは次の恋にアタックするのみよ!!」

「懲りない奴だな……」


 ……などと木下とくだらない話をしていると、突然俺の背中に衝撃が走る。何事かと後ろを振り向くとそこにいたのは――


「――おはよっ、黒山!」

「音川?」


 こいつだけか?


 いつもなら鈴菜もセットでいるはずなのに。一応念のため電柱とか歩道の壁とかを気にしてみるが、その姿は確認出来ない。


「俺の背中を叩かないと気が済まないのな?」

「まぁまぁ、気にすんなって! ちなみに黒山が気にしてる鈴菜は休みだから。代わりといったらなんだけど、黒山の相手は私がするからよろ〜!」

「え? 休み? 具合でも悪いのか?」


 音川は少し間をおき、深刻そうな顔を俺に見せながら。


「鈴菜……あの子はとうとう――」


 少し涙ぐんで俺をまっすぐ見つめてきた。


「ん? な、なんだよ?」


 まさか俺の知らない間に入院とかしてるんじゃ?


「鈴菜は……寝坊だって〜! 焦った? ねぇ、焦ったでしょ?」

「て、てめぇ……」


 こんなふざけた態度を見せてくるが、気のせいか鈴菜と会わなくなってから音川の態度がだいぶマシになった気がする。


 俺と木下の間に割って入ってくるが、駄菓子好きメンバーと考えれば何も違和感はない。


 そういや――。


「木下。聞きそびれたけど、お願いってのは?」

「えっ? あっ、そ、そうだな……それはその~」


 何だ?


 音川が現れてから随分と歯切れの悪い――ん?


「木下君、おはよ!」

「お、おはおは……おはよう」

「うん。おはよ」


 ははぁ、木下の奴……音川が間近にいて言葉も絞り出せないくらい恐怖状態に陥ったんだな。俺くらいの男子ならともかく、音川のような恐怖女子には耐性が必要だから無理もないか。


「寝坊ってことは後で来るんだよな?」

「さぁ? 来たかったら来るだろうし、だるかったら来ないんじゃない?」

「鈴菜推しなのに随分と冷たいんだな?」

「ざ~んねん! 鈴菜はもう守ってあげたいランキングを卒業しちゃったから、応援する必要はなくなりました~! それに、私の推しは編入してくる予定の女子に決めてるんだよね」


 あっさりしてやがるなこいつ。


 編入予定の女子って、実行委員会はそこまで情報が早いのか?


「へ~。編入生ね。でもその女子が守ってあげたい女子かは分かんないだろ。それなのに無理やり推すのか?」

「見てみないと分かんないけど、推すのは自由じゃん?」

「……まぁ」


 やはり鈴菜推しから解放されて開放的になったんだな、こいつ。ギスギスするよりはマシだけどどうにも信用出来ないんだよな。


「あ! そ、そうだった! 黒山!」


 音川が間にいるせいか大人しくなっていたが、木下が思い出したかのように声を上げる。


「な、何だよ?」

「中間明けにみんなでカラオケ行くって話だったんだけど、お前も行くよな?」

「カラオケぇ~? 俺を誘うのか? この俺を……」


 鈴菜のアラーム代わりにされた俺の歌は恐ろしく音痴であり、とてもじゃないがジャイ●ンといい勝負になると言っても過言じゃない。


「あはは~! 黒山の歌って確かにアレだもんね!」

「ひぃぇ!? う、うん……アレなんだよ」


 隣を歩く木下の肩に手を回す音川によほどビビったのか、木下が間抜けな声を出している。音川相手にビビる気持ちはよく分かるがビビりすぎだ。


「で、そんな黒山をカラオケに呼びたくなるんだよね~っていうか、行けばよくない?」

「アレなのに呼びたい? なんだそれ……」

「た、頼むよ、黒山! カラオケでドリンク一杯奢るから!」

「……別にいいけど、後悔するなよ?」


 ――といった感じで放課後になり、鈴菜は結局学校を休んだ。サボったというべきか?


 俺と木下、それと音川。それとクラスの女子と男子が数人ほどいる中、本店に程近いカラオケ館にみんなで集まった。


 俺は自分がどヘタなのを自覚してるので基本的に歌わないことにしていた。そんな中、見知らぬ女子が遅れて部屋に入ってきたのだが――


 ――というか、本店短期バイトのイケメン女子!?


 ショート銀髪のイケメン女子が何でここに入ってきたんだ?


「あ~……みんなちゅ~も~く! 遅れて入ってきたこの子は、アサくんで~す! れっきとした女の子だけど、好きピがいるからちょっかい出さないよ~に!」


 ……などと音川がみんなに注意をするが、どういうわけかそのイケメン女子を俺の隣に座らせてきた。


「ど、どうも……」

「……黒山くん。歌わないんだ? 君に歌ってもらいたいんだけど」

「え、でも俺の歌は気絶するかもしれないくらいの――」


 下手すると一気に空気が冷えてしまう可能性もなくはない。だが、イケメン女子のアサは笑顔を見せながら俺を見つめてくる。


「いいよ? 君の歌が聞きたくてここに来たんだから。聞かせてよ、歌」

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