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守ってあげたい女子の学園二位に君臨する脱力系幼馴染が俺の義妹を見た結果、対抗手段を間違ってイケメン女子になった  作者: 遥風 かずら
第二章 新たなライバルで変化する!?

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23.ウワサされるおにーさん 

 鈴菜から黒山くん呼びされるなんていつ以来だろうか?


 しかも連休に入るまで話しかけないでなんて言われてしまった。だけど、元々教室なんかでは俺から鈴菜に話しかけることは滅多になく、どちらかというと鈴菜の方から声をかけられるのが圧倒的。


 なので、話しかけないでとか言われても特に困ることはなかったりする。


 一番前の席に座る鈴菜の近くには鈴菜を守る女子が多いし、後ろの席はもちろん近くの男子なんかもそう簡単に鈴菜に声なんてかけられないから、俺にとって別に衝撃でも何でもないんだよな。


 そんな鈴菜からの戒厳令が下されたその日から、あっという間に始まろうとしている連休の合間の登校日。


「浅木と全然話してなかったみたいだけどケンカか?」 

「それな。フラれた……とかじゃないだろうが、ウチのクラスの女子に嫌われるとか、何かしたんだろ? 黒山」


 鈴菜に明らかに避けられているうえ、クラスの女子のほとんどが男子から鈴菜を守っていて、特に俺だけ要警戒されているせいか木下と河神が俺を心配してくる。


「いや、別に。よく分からないけど話しかけるなって言われてる」

「どうせくだらないことなんだろうけど、早く謝って仲直りしといた方がいいぞ。それまで仲良くしてた女子がこじらせると長引くからな~」

「それは木下だけなんじゃないのか?」

「そうとも言うが、幼馴染だからって甘く見てると大変な目に遭うのだけは覚えた方がいいぞ!」


 木下は普段から女子と話してる奴だから妙な説得力があるな。


「……浅木は本気だと思う」


 そうかと思えば河神は意味深なことを言ってくる。


「本気? 何が?」

「今までの浅木は脱力系の天然系女子で大人しかった。だけど、貴俊とどうにかするためなら本気を出してくる女子……おれはそう思ってる。だから貴俊。手遅れになる前に……」


 こいつもか。


「手遅れも何も、これまで何度かケンカしたことあるからな。幼馴染ってのはそう簡単に変わらないぞ。河神は本当に心配性だな~!」

「お前が言うならいいけど、心配なんだおれは」


 ……などなど、友人の忠告を軽く流した結果、結局合間の登校日である今日はもちろん、下校に至るまで鈴菜に近づくことさえ許されなかった。


 下校時ですら鈴菜と顔を合わせてもらえないし、ライムのメッセージも既読が付かない――なんてことがあると、流石の俺も寂しさを感じてしまった。


 しかし、鈴菜と顔を合わさないことがかえって助かったりもした。それは、凪の学校へ迎えに行く約束が出来てしまったからだ。


 義妹の凪に甘えた声でお願いされたのは、井澄学園に転入するまでの間、下校時だけでもいいから迎えに来て欲しい――というお願いだった。


 そうして初めて凪の通う学校に迎えに来たまでは良かったのだが、教室の窓から一斉に注目されるなんて聞いてない。


「みてみて、あの人誰なのかな?」

「誰か迎えにきた感じ? 遠くて見えないけどいいなぁ、近くで見てみたい~」


 ……期待されると困る。


 そして助けてくれ凪! 俺のメンタルはもう限界だ。


「貴俊おにーさん! 来てくれたんだぁ~」


 窓から感じる視線は全て女子からのものでとてもじゃないけど俺には耐えられそうにない――などと思いながら待っていると、凪の嬉しそうな声が聞こえてきた。


「ど、どうも」


 下を向いてなるべく顔を見せないようにしていると、


「あはは~なぁに緊張してるの?」


 そう言って凪は俺の頬を突っついてくる。


 そもそもイケメンでもない俺が全女子から見られたら緊張もするだろ。


「こんな見られたことないからな」

「バイトしてるのに?」

「店に来る客とここは全然違うだろ」

「あはっ、だよね~」


 いたずらっぽく笑う凪はとりあえず嬉しそうだ。


「でも本当によく来てくれたよね~」

「そ、そりゃあ、あれだけお願いされれば……」


 鈴菜と帰りに別れた後の凪は、それはそれは甘えが過ぎた。腕を組んでくるだけでは物足りず、人がいないところで蛇のように足を絡めてきたのだから驚きしかなかった。


「仕方なく?」

「いや、可愛い妹の頼みだから」

「あはっ」


 屈託なく笑う妹がとてつもなく可愛く見えるのは気のせいだろうか。元々お店で初めて見た時に魅了されたくらいの美少女だからというのもあるかもだけど、やたらに近いせいか凄く可愛く思える。


「あ、そうそう。おにーさん、クラスの女子たちからウワサされてるよ」


 まぁ、そうだろうな。


「……変なのがいる――の間違いだろ」

「ん~? それはどうかなぁ?」

「と、とにかく、支店に急がないと」

「うん」


 もはや妹が俺の腕を組んでくるのは当たり前になっているようで、俺もその腕を拒むことなくいるのだから何とも言えない気持ちになっている。


 ……鈴菜とは腕を組んで歩くとかしてないんだよな。

 

 俺と凪はこのまま支店に直行して、お互いにバイトを頑張った。


 ――そして連休後半。


「黒山くん、これを上の段に乗せてくれる?」

「はい~」

 

 何もすることもなければ誰かとどこかに行くこともない俺は、店の在庫がパンパンになった事務室で駄菓子箱の整理整頓を任されていた。


 これだけ在庫だらけになると当然ながらここで寝るスペースもなくなり、必然的に実家の方に帰って寝なければならなくなる。


 とはいえ、元々支店での寝泊まりは平日限定という約束事でもあったので、仕方ないといえば仕方ない話だ。


 ここで時々休んでいる凪も俺の家に帰らなきゃいけなくなり、仕方がないので実家に戻ることになったのだが……。


 毎日困ることがあった。


「う~んう~ん……」


 とにかく寝られない日が続いた。


「凪、そろそろ抱き枕のように俺に抱きついてくるのをやめてくれよ」

「だって貴くんあったかいんだもん。甘えちゃ駄目?」

「う……いや、いいけど……」


 義妹で同い年の美少女が毎夜俺のベッドにもぐり込み、気づいたら足を絡めて抱きついてくる――という、何ともけしからん状態が続いている。


 俺自身、もちろん妹に手は出してないが、凪は()()を知ってて俺に触れまくりだから、いつまで理性が保てるか正直自信がない。


 だけど怒るなんてことはもちろん出来るはずもなく。


「貴くん、大好き~!」

「……俺も凪が(妹として)好きだよ」

「じゃあ、しちゃう~?」

「しません」


 妹と一緒に添い寝してるだけ。そう自分に言い聞かせながら、この連休を乗り越えなければ。


「おにーさんならいつでもいいからね~」

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