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守ってあげたい女子の学園二位に君臨する脱力系幼馴染が俺の義妹を見た結果、対抗手段を間違ってイケメン女子になった  作者: 遥風 かずら
第二章 新たなライバルで変化する!?

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20.よこしまな気持ちで頭を悩ませている鈴菜さん

 説明……説明も何も――というか、割とぎりぎりの時間じゃないのか?


 凪があっさり帰ってしまったから気づくのが遅れたが、余裕のない登校時間になりつつある。


 ここで寝かせていた時は俺が時間を見計らっていたけど、今はそれどころじゃないじゃないか!


「そ、それよりも大変だ鈴菜!!」

「わっ! ど、どうしたの~? 急に大声出して」

「遅刻しそうな時間になりつつあるぞ!! 急げ!! 急いで着替えてくれ!」


 よし、これで凪の問題はとりあえず解消された。


「はわわわわ!?」


 着替えろと言っても鈴菜がここに来る時は上下ジャージ姿が多い。通常ならその上に制服を重ね着するだけで済むのだが、今回は制服のまま寝ていたらしく少し慌てている。


「は、早く!」

「え~とえ~と……あっ! えへへ、今日はこのままで大丈夫~!」

「え?」

「上にパーカーを羽織るだけなんだ~」


 パーカーを羽織るだけ……なんだ、そうなのか。


「だとしても急がないと!! ほら、早く早く!」

「後でもう一度あの子のことを聞かせてね~?」

「……はい」


 いつもの鈴菜だったらどさくさ紛れで忘れてくれるのに何でこうなった?


「ぜ~ぜ~ぜはぁ~……つかれたよぉぉ~……」


 パーカーを羽織っただけの鈴菜と一緒に事務室を出た俺は、猛ダッシュで何とか間に合うことに成功。


 鈴菜は膝に手をついて息を整え、そのまま自分の席に着いているのに対し、俺だけ異様に疲れて教室の壁に寄り掛かってしまう。


「はぁはぁ、はぁぁぁー……だる」


 俺と鈴菜の登校が一番最後だったようで、教室ではHRが始まる前の余裕な空間が出来上がっている。


 その中でも、やはり音川は鈴菜に声をかけていて何かしらの話で盛り上がっているようだ。


 ……鈴菜の方が余力があるなんてショックだ。


「黒山、その疲れっぷり……お前もしかして朝帰りか?」


 息を整えつつ自分の席にようやく座ると、木下が振り向きざまにからかってくる。


「アホなこと言うな……朝帰りの意味が違うだろ……ふぅっ……」

「浅木、機嫌よさそうじゃん? 黒山が何かしたんだろ?」

「してない。何も」

「そんなムキになるなって! 二人揃って遅れてきた時点でみんな察してるぞ」


 勝手に察しててくれ。どうせ後で音川が厳しく問答してくるに決まってる。


「木下。俺は今日もだるいから寝る。起こすなよ?」

「何だ、浅木に代わって今度はお前が脱力系かよ。やっぱ似た者同士なんだな」


 どうとでも言ってくれ……。


「――貴俊く~ん? お~い?」

「こいつ、まだ起きないの?」

「すっごい疲れてるっぽい~。こころちゃん、どうしよ~?」


 朝のHRを含め、俺はまたしても寝まくった。それこそ何時間目なのか分からないくらいに。


「……いい加減起きろ、バカ!」

 

 いつかの鈴菜じゃないが、昼休みまで寝てやろうと机に突っ伏していると、突然後頭部に強い衝撃があった。


「っつぅ~!! はっ? な、何だぁっ!?」


 結構な衝撃と痛みで勢いよく顔を上げると、そこにいたのは音川と鈴菜だった。……また音川こいつかよ。俺のことを完全に敵視してムカつくんだが。


「いってぇな、音川! お前いい加減にしろよ?」


 思わず声を張り上げてしまったが、音川相手だから問題ない。


「それはこっちのセリフだから。あんたがどれだけ疲れてるとかどうでもいいけど、一番後ろの席だからって寝すぎじゃない? 今何時だと思ってんの?」


 よくよく見ると、音川はブチぎれているが鈴菜は若干涙ぐんでいる。ふと教室を見回すと、回りには誰もいなくすっかり静まり返っていた。


「――は?」


 おいおいおい、俺ってどうなったんだ?


「……放課後なんだけど? バカじゃないの、マジで」

「ほ、放課後? え、えぇ!? う、嘘だろ?」

「外を見てみれば?」


 音川がそこまで言うので席から立ちあがって外を見てみると、小雨が降っている中で運動部連中が体を動かしていた。


「うえぇ……マジかよ。気づいたら放課後とか、シャレにならないぞ」

「あんた、鈴菜に感謝しなさいよね! 先生に目をつけられそうになってたけど、鈴菜が言い訳してくれてたんだから」

「鈴菜が……?」

「寝てなかったもんね、貴俊くん。ね?」


 鈴菜の意味深な目つきだけで判断するに、まだ朝のことを気にしてそうだ。しかし音川から()()について特に言われてこないのは妙だな。


「音川って……」


 いや、下手に訊きだそうとすると厄介だからやめておこう。


「なに? 何か文句が?」

「何もありません。気にしないでいいです」

「うざ」


 ……この反応を見る限り、凪とのことを教えてないぽいな。音川にそもそも関係ない話だけど。


「とにかく、黒山は鈴菜をきちんと送ってやれ、バカ!! じゃあね、鈴菜」

「こころちゃん、ばいば~い!」


 珍しいこともあるもんだ。鈴菜を置いて音川だけ帰るなんて。


「……その、ずっと起こしてくれたんだよな? ごめん、ありがとう」

「ううん。わたしも似たことしてるからお互い様だよぉ~」

「…………と、ところで、今朝のことは音川には言ってないんだな」

「だ、だってだって……」


 ん?


 いやに鈴菜の顔がほんのり赤いな。熱でもあるのか?


「あの子を貴俊くんだと思って、その……たくさんキスして腕をぎゅっとして女の子相手なのにすっごくやらしいことをしちゃって……だから、こんなのとてもじゃないけどこころちゃんにも言えなくて」


 言いながら鈴菜がみるみるうちに顔を真っ赤にさせた。


「一日中そんなことを思って悩んでいたから、貴俊くんが眠っててくれて助かったっていうか……と、とにかく言えなかったの」


 ははぁ、俺だと思ってよこしまな気持ちで色々とやらかしたのが恥ずかしくて、それで音川に言えなかったわけか。


 俺に対してやらしいことって程でもないとは思うが、凪相手だからそういう結論になったわけだな。


「あ、あの子にも謝っておいてくれるかなぁ~?」

「分かった」

「妹さんなのは本当なんだよね~?」

「……まぁな」


 義理ではあるが。


「じゃ、じゃあ……えっと、一緒に帰ろ~?」


 そういや外は小雨……。


「えっ? あ、小雨だけどいいのか?」


 よこしまな気持ちでもないが、一応訊いておかないと。


「流石に濡れないから大丈夫~」

「……だよな。じゃあ途中まで帰るか」

「わぁい~」


 まだ春とはいえ先生に目を付けられるのはやばいし、俺も気を付けないと駄目だな。


「貴俊くん。先に昇降口で待ってて~」

「おう」


 どうやら我慢していたらしく、鈴菜はバタバタと走って行った。


 言われた通りに昇降口に先に着いたので鈴菜を待っているとそこに――


「――貴俊おにーさん!!」


 外から俺に向かって近づいてきたのは義妹の凪だった。


「え、な、なぜ?」

「夏以降はここに通うんだなぁって思って見に来たの」


 そういえばそうだった。


「えいっ!」

「ちょぉっ! ここで腕にくっつくのは駄目だって!!」

「え~? いいじゃん」


 せっかく鈴菜の機嫌が直ったのにこんなところを見られたら。


「あわわわわわ!? け、今朝の女の子がどうして~?」

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