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守ってあげたい女子の学園二位に君臨する脱力系幼馴染が俺の義妹を見た結果、対抗手段を間違ってイケメン女子になった  作者: 遥風 かずら
第二章 新たなライバルで変化する!?

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18.鈴菜と凪の下心的な出会い? 2

「……寝てたのは悪かったよ。ごめん」

「――! うん」


 そういや、俺とご飯を食べたいという話だったな。


「どこか食べにいくんだろ? なに食べたい?」

「違うよ? 外食なんて勿体ないじゃん。だからね、ここで食べるの」


 事前にコンビニ飯でも買ってきてる感じか。


「でもここには冷蔵庫とレンジしかないけど……コンビニ飯だよね?」


 基本的に長時間スタッフが優先だからこの部屋では駄菓子以外あんまり食べるとかはしたことないけど、コンビニ飯くらいなら問題はない。


「違いまーす! コンビニ飯じゃないでーす。正解は――」


 凪はバッグに手を入れてゴソゴソと何かを取り出そうとしている。


「じゃーん! 凪お手製のつぶあんおにぎり飯~!」


 自信たっぷりで俺に見せてきたのは――おにぎりだった。


「……つぶあん」


 見た感じはおはぎのように見えるが、ただ単につぶあんを上に乗せただけのおにぎりのようにしか見えない。


「凪ね~おにぎり作るの得意なんだ~!」

「ほ、他には?」

「色々あるよ。さば味噌おにぎり、乾燥コーンポタージュおにぎり、たくあんだらけおにぎり、それから~……」


 ……デジャヴすぎる。


 鈴菜はパンだったが、凪はご飯で色々やっちまってるパターンだ。味の保証なんてあるわけなくて、とにかくおにぎりにしてしまおう的なアレ。


「普通にタッパーに入れておかずとご飯じゃ駄目だったの?」

「だってかさばるし。家から持ってくる時にバレたくなかったんだよね~」


 何ともバラエティ豊かなおにぎりがテーブルの上に置かれている。そのほとんどが、本当にただ乗っかってるだけの。


「どれ食べる~?」

「うん……」


 無難なのはたくあんだらけおにぎりか、さば味噌おにぎり……。どっちにしてもなかなかシュールだが。


「たくあんだらけおにぎりにするよ……。じゃあ、取るよ」

「だ~め! 凪がおにーさんに食べさせてあげるの! おにーさんはそのまま口を開けて大人しく待ってるだけでいいからね?」

「そ、そうするよ」


 凪は鮮やかな黄色いたくあんの塊――にしか見えない握りこぶしサイズのおにぎりを割り箸で器用に掴み、それを俺の口に食べさせようと運んでくる。


 間近で見てもご飯部分が見えずほぼたくあんにしか思えないが、覚悟を決めて口を大きく開けて待っていると――


「――しょっ!?」

「はーい、そのままそのまま開けっぱにしててね」


 かなり塩が効いているが、俺にはどうすることも出来ず運ばれてくるおにぎりのようなものをゆっくりと噛むだけ。


「ボリボリボリボリ……」

「美味しい?」

「絶妙な味、それでいて塩分……塩が効いていてとても凄いことになりそうだよ」


 ほぼたくあんをかじるだけの簡単な作業である。


「やっぱり塩が強いよね。じゃあ口直しにつぶあんおにぎりを食べさせてあげるね! はい、あ~ん」

「あ~……まっ!!」

「うんうん、甘いよね~」

「い、いつもこんな感じで?」


 しょっぱい直後につぶあんは口の中が大変なことになりそうだ。


「んーん、誰かに作ったことなくておにーさんが初めてだよ」


 首を思いきり左右に振りながらも、凪は笑顔で俺に答えた。

 

 ……あのパパさんに作ったことは多分無いんだろうな。大体予想出来る。


「って、あれ凪は食べないの?」

「食べられないよ。だって、おにーさんに食べさせたかったんだもん」


 同い年の義妹にここまで想われてるなら頑張って残りも食べきるしかないんだろうな。おにぎり? でとんでもないカロリーと神経を使うことになるとは思わなかったけど。


「ふぅぅぅぅ……ご、ごちそうさま」

「あはっ、貴くんってば口元につぶあんがついてるよ?」

「た、たかくん?」


 色んな味をいっぺんに食べたから味覚がおかしなことになっているが、とりあえず舌で唇の周りを舐めまわしてみるも、舌が届かない。


「しょうがないな~。凪が取ってあげるね!」

「頼むよ」

「……ん~っんっ! うん、甘くて美味し~!」


 俺の言葉に凪は顔を近づけて、俺の口元についているであろうつぶあんを自分の舌で舐めあげた。


「な、ななななな!?」

「なに? どうかしたの?」

「なぜ指じゃなくて舌で直接舐めたの……?」

「手っ取り早いから! あと、貴くんが舐めて欲しそうだったから」


 いやいやいや、おかしいって!


 義妹だとしてもここまでやるか?


 出会い始めからくっついてきたし甘えてきてたりしているけど、こんな甘え方はとてもよろしくない気がするぞ。


「まぁまぁ、過ぎたことは気にしたら駄目だよ!」

「……いや、それはおま――さなぎが言うことじゃないだろ」

「お腹膨れちゃったね。そろそろ寝よっか?」


 人の話を聞いてくれよ。


「あれ、家に帰るんじゃないの?」

「もう夜遅いよ? それに遠いし。だから、今日だけでいいからここで寝かせて? 貴くんに迷惑かけないから! ね、お願い……」


 今にも泣きそうな顔でお願いされて、何で追い出せるって話だ。


「――つまり、俺の布団にもぐり込むとかそういう真似はしないって意味だよね?」

「それはそうだよ~! 凪は近くのソファで寝るから安心してね!」

「いや、腹がいっぱいってのもあるし俺がソファで寝るっていうか、起きてるよ。だから、さなぎが俺の布団で横になってればいいよ。だってそこはもう凪の……」


 すでに俺のスペースなんて無いに等しくなってるからな。


「じゃあ、タオルケット一枚! 貴くんの優しさに甘えて凪がお布団で寝るから」

「それでいいよ」

  

 何だか色々不安になりながらも、事務室の照明を夜間照明に切り替えて俺はソファに座りながらなるべく寝ないように軽く目を閉じ、カロリー消費に努めた。


「…………おにーさん?」

「……起きてるよ」

「ちぇっ。凪、ちょっとお手洗いに行ってくるね」

「ああ、行ってきなよ」


 何が残念なのか意味が分からんが、油断は出来ないな。時間を見ると、早朝四時くらいで俺も少しだけ眠くなっている。


 そこに――


「コンコン……貴俊く~ん? いるかなぁ?」


 げぇっ!?


 あぁ、そういや鈴菜が来るとか言ってたような。


「い、いるよ」

「開けて~」


 裏口は防犯上鍵をかけているが、鈴菜が来たときは一瞬だけ開けていいことになっている。


 朝の登校時間までの僅かな時間。鈴菜はこうして入ってくる。今まではそれが普通だったわけだが、今は非常にまずい。


「貴俊くん、起きてたんだ~?」

「ま、まぁな」

「……どうしたの~?」

「いや? 何でもないぞ」


 どうする? どうしよう?


「鈴菜」

「なぁに~?」

「そこの布団に今すぐ横になって、タオルケットを思いきりかぶって今すぐ寝てくれ! 朝は時間がないんだ! さぁ、早く!」

「えぇ~?」

「さぁさぁさぁ!! ほれ、こっちだこっち!」


 多少強引だったが、鈴菜の手を引いてそのまま布団に寝かせることにした。鈴菜のいいところはタオルケットをかぶせてしまえばすぐに眠ることだ。


 今はそれに賭けるしかない。


「……ふわぁぁぁ。おやすみ~……」


 よし!!


 あとは凪が戻ってきたら何とかすればいいだけだ。


「ただいま~。貴くん、まだ寝ないの?」

「凪が寝たら寝るよ。もうそんなに時間もないし」

「そっか。じゃあ、貴くんはお布団で寝ていいよ。凪はソファで休むから」


 そうきたか。だが、布団にもぐり込まないって言ってたし大丈夫だろ。


「分かった。そうさせてもらうよ」

「ん、じゃ~貴くん。明るくなる頃に起こしてあげるね」

「助かるよ。おやすみ、凪」


 寝るフリしつつも、俺が寝なければ何も問題は起きないはず。


「貴くん、おやすみ」

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