14.義妹との共同部屋!?
「あれっ!? お、俺の部屋ってここじゃなかったっけ?」
二階に上がり俺の部屋を開けて入ると、そこは女の子の部屋と言っても間違いじゃないくらいの可愛いぬいぐるみの数々が部屋のあちこちを占領していた。
「間違いなくおにーさんのお部屋だよ! おにーさんがいない間にちょっとだけ凪の物を置かせてもらったの~。ごめんね? 怒っちゃった……?」
「い、いや……こんなことくらいじゃ怒らないよ」
全然塩対応にならないどころか、俺の部屋を知らぬ間に半分変えちゃってるのを申し訳なさそうにしてるところを見ると何でも許してあげたくなる。
「ちなみになんだけど、同い年……だよね? それがどうして妹になるのかな?」
「貴俊君は何月?」
「へ? 今は四月……あ、誕生月なら俺は十二月だけど……」
「でしょ! 凪ね~一月なんだ~! だからおにーさんの方がちょっと上なの」
本当にちょっとの差だった。そういや七月は鈴菜の――。
毎年汗だくでプレゼント買いに行ってた気がする。鈴菜を放っておけないっていうか、何かしてやらないとって思ってしまうんだよな。
「――さん、おにーさん? 一人で笑ってどうしたの?」
「はぇ!? お、俺、一人で笑ってた?」
隣に美少女義妹がいるのに鈴菜のことを思い出して笑ってるとか、俺って相当痛い奴なのでは。
「思い出し笑いってやつだよね? 何か楽しそうにしてたから黙って見てたんだけど、そういう顔も可愛くて好き~!」
凪は俺を見ながらいたずらっぽく笑ってくる。
「可愛いって……年上をからかっちゃ駄目だよ」
「ざ~ん~ね~ん!! 同い年でした~!」
「うぐっ、そうだった……」
……なるほど。小悪魔的要素も備わっていると。それにしたって年下の妹でもあり得ないのに同い年の子が俺と同じ部屋を使ってそこに寝るとか、一体どういうつもりでそんな真似をしているんだろうか。
同い年の鈴菜が眠っている部屋に何度もいたことがあるけど、幼馴染という慣れもあったから割と平気というか、意識的なことはほとんどしてこなかった。
せいぜいからかいで胸を揺らしていいよとか、それくらい。
だけど義妹の凪は鈴菜に向ける感情とはまるで異なる。何せ単なる新人アルバイトの女子だと思っていたわけで。
それがまさか同じ家族になって、しかも義妹になるだなんてちょっと気持ちが追いついてこない。何より、ずっと俺にくっついたまま離れないし。
「さなぎちゃんは普段は別の学校に行ってるんだよね? ここから遠いの?」
「思いっきり遠いよ!」
「そっか。それは大変だ」
どこの学校とか訊いても仕方ないから訊かないが、俺と同じ学園に通うことについての不安はないんだろうか?
「井澄学園は結構自由な学風だけど、編入したらある程度は教えられるから俺に訊いていいからね」
「保健室で?」
……うん? 何を?
「保健室は具合が悪くないとね……」
まあ、居眠り女子を運ぶという例外もあるが。
「冗談ですよ? おにーさんって、案外そっちの方に持っていきがちなんだ?」
「はははは……どっちのことなのか分かんないね」
絶対にからかいにきてるだろ。
「えっちぃことですよ?」
「うん。そうだろうね」
「あれ? 意外と焦らない感じ? もしかして、もう経験あったりして?」
「……ないよ。あるわけない」
裸同士で洗いっこくらいだからノーカウントでいいはず。しかし、凪の言うことを聞いていると俺と鈴菜がしてることってやっぱり普通じゃないんだろうな。
雨が降った時は――みたいな。
「じゃあ凪にもらえる感じ?」
とりあえず近い、近すぎる。もう少し顔を離してほしいぞ。
「な、何を?」
「何って、チャンス……だよ? あれれ、おにーさんは何だと思ったのかな~?」
駄目だ、完全に主導権を握られてる。同い年の義妹に手玉に取られるとか、しっかりしろ俺!
「妹にそんなことしないから心配しなくていいよ」
「血が繋がってないから、手を出したくなったらいつでもお待ちしてま~す! なんてね」
「その手には乗らないよ? こう見えて俺は鉄人と呼ばれてる(誰にも呼ばれてないけど)からね!」
……もっとも、和室で顔合わせをして俺の部屋? に入って今の今までずっと腕にくっつかれたままだから説得力がまるでないが。
「ちぇっ。貴俊ってガード固いんだね」
呼び捨てに変わってる!?
「でも、これからもっと近くなるし、離れられなくなるかもね?」
「そりゃあ楽しみだ。さなぎがどんな手を使ってくるのか期待しとくよ」
……というか、今の学校とかで好きな男子とかいないんだろうか。もしくは、編入してきてからでも誰か好きな人でも作ってくれれば兄として応援するのに。
「ん~~! ねむ~い。寝よっか?」
「俺は下に降りてくつろいでるよ。さなぎはこの部屋で寝てていいから」
「ふ~ん? うん、そうするね!」
意外と素直に言うことを聞いてくれた凪は、旧俺のベットに背中からダイブしてすぐに寝転がった。
俺はというと、途中で鈴菜を思い出してにやけてしまったので、一階に下りてあいつにライムか電話でもしてやることにする。
……あ、鈴菜はライムじゃなくて電話で話したいタイプか。
「あ、鈴菜? 俺、貴俊ですけど」
「……かけ直し~!」
敬語の訂正か?
「俺だけど。鈴菜、俺だ俺!」
「なぁに~? わたし今ね、手が離せなくて話せないんだ~。ごめんね、貴俊くん。バイバ~イ!」
えぇ?
いつもなら食い気味に話をしてくるのに、あいつから電話を切るとか何てレアな現象なんだ。
「貴俊おにーさん~? 誰と話してたのかな?」
「えっ!?」
バカな……音もなく階段を下りてきたのか?
「あはっ、面白~い! やっぱり彼女がいるのかな?」




