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守ってあげたい女子の学園二位に君臨する脱力系幼馴染が俺の義妹を見た結果、対抗手段を間違ってイケメン女子になった  作者: 遥風 かずら
第二章 新たなライバルで変化する!?

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13.甘えたがり義妹が出来てしまった日

 週末になった早朝、俺は久しぶりに実家に帰ってきた。実家は本店のすぐ横にあり、店の裏口にいつでも行けるくらい隣接している。


 普段は支店に寝泊まりしてるから割と気楽に過ごしているが、本店は店の規模もデカければそこで働く人の数も多いのでちょっと圧倒されそうになる。


 といっても、本店でバイトをするわけじゃないので客として入る分には問題ない。


「おかえり、貴俊」

「ただいま」


 朝の早い時間に家に帰ってきただけなのに、珍しく母さんが俺を出迎えてくれた。いつもならこんなことはなかったはずなのに。


 ……ということは、真面目に支店追い出され説なのでは?


「あ、あの〜、俺って支店から追い出される系?」


 そうでもなければこんな朝早くに実家に来いとか言われるわけないだろうし。


「はぁ? あんた何バカなこと言ってんの?」

「じゃあなぜに家族会議を?」

「中に入ったらすぐに分かるからさっさと入って!」

 

 店とかそういう話じゃないみたいだな。そうすると、もしや再婚の話?


 母さんに急かされながら家の中に入ると、明らかに知らない靴が増えていて綺麗に並べられている。大きさと色だけで判断すれば男性と女の子の靴だ。


「和室で待ってるから、貴俊が先に入って」

「そ、そうする」


 実家は古風で和風な作りの家。部屋のほとんどが畳と障子、それに襖があって結構風情があるとか言われる。


 そこを気に入られたのだとすれば、再婚話はすでにかなり進んでいるはず。


 おそるおそる和室に入ると――


「――貴俊おにーさん、おつ〜!」


 俺を真っ先に出迎えてくれたのは、支店の新人バイトで菓子通の凪だった。しかも俺に笑顔で手を振っている。


「……え? な、なんで?」

「激ニブ〜! 凪はね、貴俊おにーさんの妹なんだ〜!」


 そう言って凪は甘えるように俺の腕に絡みついてくる。


「はいい!?」

「えへっ」


 母さんを見ると、してやったりな顔を見せていて、俺はそれに完全にやられたように膝を落とした。


「初めましてだね、貴俊君」

「え、あ、どうも……」


 母さんより、やや若い男性が俺にお辞儀しながら従業員名札を俺に見せてきた。というか、本店の従業員?


「宇草……」


 宇草というと凪の名字だ。


 ……となると、先行して顔を合わせていた凪が俺の家族で、しかも義妹になる――そういうことになるのか。


「名字は黒山になるんだけど、まだ手続きが終わってないからまだ別姓のままなのよ。だからあんたはこの人のことを宇草さんって呼びなさいね」

「そうする。でも、凪は……」

「凪のことは、おにーさんの好きなように呼んでいいよ」


 まぁ、すでに教わってるしな。


 あぁ、だからさなぎ呼びを希望してたわけか。愛称呼びみたいなものだし、俺だけ呼ぶんならさなぎの方がいいかもな。


「……ところで、俺にいつまでくっついてるの?」

「ず~~っと! だっておにーさんだもん!」


 凪が俺の腕にくっついていても、父親はおろか母さんもまるで気にしていない。甘えたがりってことを認識してのことなんだろうけど、最初からこんな甘える妹でいいのか?


「ちなみに凪は俺より――」

「同い年だよ! 学年も一緒~」

「ええっ!? 同い年……え、あれ、学校は?」


 俺の疑問に凪は母さんに答えを促すように目をやる。


「あんたのかよっている井澄学園には、編入手続きをしている最中なの。そうね、時期は夏休みに入る手前くらいかしらね」


 夏休みの前というと、確かいま作っている新しい――。


「部屋が出来ると同時くらい?」

「そうそう! 支店の新しい部屋は凪ちゃんのお部屋だから! でも、凪ちゃんの希望であんたの寝るスペースもあるから仲良くしなさいね」

「えええ~? 俺の部屋っていうか、俺は寝るだけ?」

「元々そんなものでしょ。新しい部屋に入れるだけでも良かったと思いなさいよ!」


 マジか~。同い年の義妹と同じ部屋というか、寝るだけのスペースだけがあって結局俺の部屋は曖昧な状態ってことじゃないかよ。


「あれ、事務室の俺の使ってたスペースは?」

「新しい部屋が出来たら改装するから、どのみち数か月したら移動してもらうことになるわね」


 腕に絡みついている凪の力が入っているように感じるが、緊張してる感じか?


「じゃあ、凪ちゃん。私たちは打ち合わせがあるから後よろしくね」

「は~い! お任せください~」

「えぇ!?」


 俺の動揺などどうでもいいと言わんばかりに、母さんと宇草さんは会社の方に出て行った。


「…………さなぎちゃん」

「なぁに? おにーさん」

「俺の腕はいつ解放されるのかな?」

「ん~……とりあえずおにーさんのお部屋に行ったら離すかも? 行きたいなぁ~。駄目?」


 くぅっ、腕に絡みながらジッと見つめてくるなんてズルすぎるだろ。同い年なのに義妹、妹というだけでここまで甘えられるものなのか?


「と、とりあえず俺の部屋に案内すればいいんだね?」

「だよ」

「じゃあ、二階だからついてきて」


 親が見ている前でもお構いなしに腕にくっついていたけど、俺の部屋に入ったら途端に塩対応するかもしれないからそれに賭けるしかないな。


「凪を離さないでね……?」

「う、うん」


 甘えたがりなのか寂しがりなのか分からないけど、鈴菜とは違う感じで優しくするしかなさそう。

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