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守ってあげたい女子の学園二位に君臨する脱力系幼馴染が俺の義妹を見た結果、対抗手段を間違ってイケメン女子になった  作者: 遥風 かずら
第二章 新たなライバルで変化する!?

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12.守ってあげたい一位さん、鈴菜に助言する

 一位ってのは、もしかしなくても()()一位の話か?


「鈴菜の彼氏君、おっす~! あたしが井澄学園守ってあげたいランキング一位の響だぜ! 今日あったことは忘れていいから」


 ……やはりそうか。


 さっきまでと全然性格が変わらないというか、素がこれなんだ。


「俺、彼氏じゃないですよ」

「はぁ? 彼氏じゃないなら何? 下僕?」


 これでランキング一位なのか?


 鈴菜もこの人が俺の手を握っているのに何でか嬉しそうにしてるし、他の男子相手だと別人なんだなきっと。


「響ちゃん先輩~貴俊くんはわたしの幼馴染なんですよ~」

「幼馴染? あぁ、()()()()やつか。納得」


 どっちかというと、守ってやるぜ女子のような気がする。


「あの、そろそろ手を……」

「ん~? あぁ、悪ぃ悪ぃ! この手は鈴菜のモンだった。ほれ、返す!」

「えっ? あっ……」

「……よ、よぉ」


 普段手は握らないから妙に緊張するな。


「な~んか、納得いかない顔してんな~貴俊は」

「いや、そんなことは……」


 というか、呼び捨て!?


 思わず鈴菜の顔を見るも、一位を先輩呼びしてるだけあって凄く嬉しそうにしている。二位だから悔しいとかそういうのはなさそう。


「こんな強気な女が何で守ってあげたい女子ランキング一位かって、それはあたしがドジっ子だからだ!」


 言いながら響先輩は力強く仁王立ちしてみせた。


「そ、そうですか。……素で転びやすいってことですか?」

「それが何だ?」

「ちょっと心配になりますね。俺がとやかく言えるわけじゃないですけど」


 バランスが悪くて転びやすい人は多いからな。運動不足とか色々原因はありそうだが。


 しかし、鈴菜が俺の肩に手を置きながら首を横に振って。


「貴俊くん。響ちゃん先輩はドジっ子なんだよ。それ以外ないんだよ~?」

「……わ、分かった」


 多分、触れてはいけないことなんだな。


「鈴菜の幼馴染を拝めたし、あたしは帰る!」

「え~? もう帰っちゃんですか~?」

「邪魔しちゃ悪いし。ん~じゃあ、鈴菜。ちょっとこっちに」


 意味深な目で俺を見ても特に何も起きないんだが。


「は~い! 貴俊くん、そこで待ってて~」

「あ、ああ」

 

 しかし、ランキング一位の女子が姐御気質のドジっ子だったとは予想してなかったな。俺たちの前では素を出したっぽいけど、他ではそうじゃないかも。


 鈴菜と響ちゃん先輩が二人で話をしているので、俺はライムにきているメッセージをチェックすることにした。


「鈴菜っちにアドバイス! よぉく聞いてね」

「はい~」

「あの男子……幼馴染の貴俊は押しに弱いぞ! 鈴菜って自分から引くタイプじゃん? それだとあいつは駄目だと思う」


 そう言うと、響はスマホを触る貴俊を一瞬だけ見る。


「ふむふむ……」

「そうそう、メモは大事だぜ!」

「少しくらい強い感じでいくのがいいんですか~?」

「ん~そうじゃなくて、なんて言えばいいのかな。あたしを参考にしろとか言わないけど、女子が強い感じのマンガとかアニメを見て参考にするとかすればいいんじゃないか?」


 ……ふぅ。


 新人バイトの凪ちゃん交えて家族会議、しかも週末に自宅に帰る唯一の時間とか。多分ろくな話じゃない。俺を支店から追い出してあの子を代わりに――とか想像したくないぞ。


 ――って、鈴菜が一所懸命メモ取ってる!? 何を教えてんだ、あの人。しかも鈴菜が力強く頷いてるんだが。


 しかし普通なら学園一位の人に悔しがるはずの二位がリスペクト状態なら、俺から下手に文句なんか言えないしな。


 遠目ながら見守ってあげよう。


「ほら、あいつがそろそろ鈴菜を寂しがってんぞ。すぐに変われないだろうけど、参考にして少しずつ変わってみるのもいいかもよ?」

「でも、貴俊くんはわたしがいなくても平気っぽいです~」

「んん~、それならメモったことを忘れずに、あいつが気づかないように変わっていくしかないと思う。変わってしまったらランキング落ちるかもだけど応援してるよ! 鈴菜」

「ランキングなんてどうでもよくて~……でも、ありがとうございますです~!」


 お? やっと話が終わったか。


 自称ドジっ子の響ちゃん先輩は足下を気にしながら帰っていく。鈴菜は駆け足で俺のところに戻ってくるようで、何やら難しそうな顔をしている。


「おつかれ、鈴菜」

「うん~貴俊くん、おんぶして欲し……あ」

「へ?」

「ううん。大丈夫~今のなしで」


 俺におんぶを求めてきたと思ったら、何か無理難題なことでも言われたのか鈴菜は隣でずっと唸りながら歩いていて、ちらちらと俺を気にしてる感じだ。


「ん? そのメモ……」

「ダメダメダメ~!! これは響ちゃん先輩との大事なお話のメモで~……だから~」


 鈴菜は珍しいくらい拒んで、手にしていたメモをバッグの中にすぐに隠した。


「いや、俺も別にそこまで無理やり見るつもりはなかったけど……」

「怒ってない~?」


 ランキング一位の人の助言をメモったものなんだろうし、俺が怒るのは流石に違うからな。


「こんなことで怒らない」

「貴俊くんは優しいなぁ~……でも、わたし、頑張るからね~! 期待しててね~」

「ん? うん……」


 鈴菜はランキング一位の響先輩を頼りにしてる感じだった。その先輩から貰った助言メモを嬉しそうに持っていたので、おそらく守ってあげたい女子ランキングの助言のはず。


 図書室の告白場面からどうなるかと思ったものの、一位の先輩に会えたことで鈴菜は俺と別れるまでずっと機嫌が良かった。


 鈴菜はいいとして、問題は週末に帰る本店(自宅)での家族会議だ。俺に一体何が起きるのか、不安になりながら支店に帰った。

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