第6話 指輪強奪大作戦
前回のあらすじ
『ナイトメアステージ』から脱出する為に、アングリーから『近いの指輪』を奪おうとするメアリー。
しかし、眠りから覚めたアングリーによって、メアリーは絞め殺されたのだった。
「か…。はっ…。」
メアリーは首を絞められた苦しさから目を覚ます。
胸を押さえ、何度も激しく呼吸を繰り返す。どうやらもう、首は絞められてはないらしい。
それどころか、彼女の体はまたしても、傷が消え、ドレスの赤色は2回目にここに来て、鏡を見たときと同じになっていた。
「現実味がないし、あまり考えたくはなかったけど。これってもしかして…。」
メアリーはそっとつぶやく。
「私、まさか、死んで時を遡っている?」
そう。彼女は今まで、自分を助けて治療してくれた人がいると考えていた。
しかし、それにしてはあまりにも不可解な事が多すぎた。
1回目の時は、殴られて気絶してしまった。ゆえに、確実に死んだとはいいがたい。まぁ、破壊された股関節の骨が修復するまでの時間、メアリーが起きなかったということにはなるが、まだ治療されたで通るだろう。
しかし、今回はどうだろうか。
体のほとんどが、ナイフやフォークで傷ついたはずなのに、縫ったような跡がない、息が出来なくなるほど、首を絞められたのに、そんな跡もない。
棚で隠れてはいたとはいえ、ぐちゃぐちゃになったはずの内臓も、恐らくしっかり元通りになっている。体に特に違和感がないからだ。
こんなに元通りに出来るのだろうか、それに、もしできたとしても、ここに寝かされているなら、跡が消えるまで寝ていたことになる、それなのに寝ている間に、危険な目に遭わないのは不思議すぎる。
不可解な事はもう1つある。それは、服や壁が元通りになっていることだ。
穴が開いたり、血で汚れたはずの服は完全に元通りになり、メアリーが倒した壁も元通りだった。
こんなに元通りにすることにこだわる人がいるか、時を遡っているかしか考えられなかった。
だとしたら、助けられなさそうな末路の数々的に死に戻りが有力な話だった。
「だとしたら、生き地獄。楽になることすら許されないなんて。」
メアリーはそのまま歩き、壁を押し倒してつぶやく。
「まぁ、生き地獄なのは今に始まったことじゃないか。」
彼女はなぜか、そう感じた。
もしかしたら、記憶を失う前からこの場所でループし続けてたのかもしれない。
彼女はそう考えた。
──────────
メアリーは再び、アングリーから逃げ、サドと共にタンスのような扉を使って狭い廊下を通る。
「彼はいないみたいだね。それじゃあ、君がこの場所で生き延びられるように、食材のある場所や、安全な寝床を紹介しようか。」
廊下から出て、周りを確認したサドがそう言った。
それに対して、メアリーは口を開ける。
「そんなことより、この場所から脱出する方法。3つの財宝を集める事だったよね?」
彼女の言葉に、サドは驚く。
「3つ?いや、まずなぜ、君がそんなことを知っているんだ?さては、ロールですね?あいつなら言いかねないな。」
サドは本気で、自分がメアリーに脱出する方法を教えたことを忘れているようだった。
「(やはり、死んで時を遡っているみたいね。)」
メアリーはそう考えた後、サドに質問をする。
「で、どうすればアングリーから、指輪を奪えると思う?」
メアリーの質問に、サドはクライを取り出し、それと話し合うようにして答えた。
「う~ん。難しい問題ですねぇ。どう思うクライ?うんうん。なるほど!
アングリーの好物をこの階層にある罠がある場所にしかけて、罠にハメるというのがいいね。」
「奴の好物?」
メアリーのその疑問に、サドは答えた。
「彼の好みは、クズ男そのものって感じですかね。酒にタバコに女遊び。ああ、女性の好みも独特でしたね。胸の小さい小柄な女性。」
「テカモウ、『ロリコン』ダヨ。アイツ。」
サドに付け加えるように、クライがそう話した。
正確には、クライがそう話したように、サドが裏声でそう言ったのだ。
「ふ~ん。ありがと。くそ狐。」
メアリーはそう悪態をついて、サドの横を通り、前回アングリーがいた方へと進む。
「ちょ、ちょっと!? ボクハ『クライ』ダヨ!!」
突然の悪態に、驚きつつ、裏声でそう言うサドを無視して、先に進むメアリー。
彼女は、どういうわけか、嫌いなあの狐から離れつつ、振り向かずに舌打ちをした。
次回予告
メアリーはアングリーから指輪を奪うために、好物で気を引く計画をねる。
次回 第7話 落とせ!『憤怒』の喜怒哀楽