目覚め?
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・事件などは、現実の物とは違います。
また、本作は軽いもので四肢の切断など、グロ描写や暴力表現が入ります。それらが苦手な方は読むのを控えることを強くおすすめします。
「んん?」
少女は静かな場所で、目を覚ます。
「ここは…、どこ?」
彼女は血のように真っ赤な髪を、腰で揺らしながら、あたりを確認する。
辺りはサーカス会場のような派手な見た目をしていた。
「どうしてこんな場所に?」
少女は自分の過去について、思い出そうとする。
しかし彼女は、何故自分がそこにいるのか、それどころか、自分が今までどんな人生を送ってきたのかも覚えていなかった。
唯一覚えていること、それは、自分の名前が『メアリー』だという事だった。
「とにかく、こんなところにずっと居たくない。」
メアリーは立ち上がり、出口を探し求め、歩き出す。
目が痛くなるような、派手な色をした部屋を探索し始める。
壁を調べていると、突然壁の一部が倒れ、奥へと行けるようになっていた。
しかし、そこは光がなく、暗闇が広がっていた。
「ちょ、ちょっと怖いけど。ここを進むしかない。」
メアリーはその暗闇へと、恐る恐る足を踏み入れる。
暗闇の場所は、廊下のような狭い場所であり、彼女は壁に手を当てて進んだ。
目がやっと、暗闇に慣れたところで、大きな部屋に出たのか、壁が遠くなった。
「だ、大丈夫かな。頼りになるものが、もう無くなっちゃった。」
メアリーは慎重に、先に進む。
しばらく進むと、突然メアリーの後ろの壁が壊れ、まるで熊のように大きな男が、人の死体のようなものを持ちながら、飛び出してきた。
「な、なに!?」
メアリーが驚いた声を上げると、巨漢はゆっくりと彼女の方を向く。
そして、彼は雄叫びを上げ、彼女に向かって走り出した。
メアリーは「きゃあ!!」と叫び声をあげ、先の道へ逃げる。
「な、なんなの!? あの化物は!!」
メアリーが、そう叫びながら走っていると───
「か、彼は『アングリー』。『喜怒哀楽団』の『憤怒』担当者だよ。」
突然、男性の声が聞こえてきた。
メアリーが、「えっ!?」と声のした方を向く。
彼女が振り向いた先には、異様に細長い男性が、彼女の隣を走っていた。
「あ、『アングリー』?『きどあいらくだん』?な、なんなのそれ!!」
メアリーがそう叫ぶと、細長い男性は走りながら、オーバーな手振りをしながら、彼女に説明をする。
「『喜怒哀楽団』は、人殺しを楽しみにしている集団さ。その中でも、アングリーって名前の彼は、その圧倒的なパワーで多くの人をぺちゃんこにしてきました。
それに、彼には話が通じない。だから、彼に話し合いをすることは不可能なんだよね。」
「人殺し!? ど、どうしよう。どうにか、あいつから逃げなくちゃ!!」
メアリーの言葉に、その男性は慌てて狐の姿をしたパペットを取り出し、それに向かって話す。
「その通りだね。逃げなくちゃ!でもこの先は分かれ道ですよクライ。当たりの道はどっちだっけ?
そうだね。お箸を持つ方だ。それじゃあ、僕はこれにて失礼するよ。」
そう言うと、男性はメアリーを置いていって先に行ってしまった。
「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
メアリーが急いで追いかけるが、彼に追いつけることは出来なかった。
しばらく進むと、前に壁があり、左右どちらかの分かれ道となっていた。
「えっと。さっきの人は箸を持つ方って言ってたよね。それじゃあ、右だよね。」
メアリーはその分かれ道を右へと進んだ。
すると突然。
「きゃあ!!」
彼女は突然落とし穴に落ちてしまった。
「痛い!!」
気が付くと、彼女の足には、鎖の付いたトラバサミが食いついていた。落下した地点に、まばらにおいてあったそれに、彼女は引っかかったのだ。
足を引き抜こうとしても、トラバサミが彼女の肉に食いついて離れない。
メアリーがトラバサミに苦戦していると、突然彼女の上に、アングリーが落ちてきた。
「ぎゃあああああ!!」
その衝撃で、彼女の足は押しつぶされ、股関節の骨が破壊される。
彼女にまたがったまま、拳を振り上げるアングリー。
「い、嫌!! それは、もうやらないで!!」
メアリーのその言葉すら通じなかったのか、彼は彼女を問答無用で殴り続ける。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
メアリーは言葉を発する時間も与えられず、ただただ永遠に殴り続けられる。
段々と、彼女の意識は失われて行き。
そして彼女は、一度、命を失った。
次回予告
再び同じ場所で目覚めるメアリー。混乱しつつも彼女は再び脱出を試みる。
次回 第1章 第1話 終わらぬ悪夢