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王都騎士団クラリス

 王都の屋台で焼き鳥を大量に売ってボロ儲けしていた時の話。

  

 俺は屋台の空いた時間にギルドや酒場をさまよっていた。

 目的は屋敷を護衛してくれる人物を探すためだ。


 離れの屋敷は住んでいる限り昼夜関係なく魔獣に襲われる可能性がある。

 これはあの屋敷唯一の欠点で一刻も早く解決したかった。

 

 もし運良く強い人物を雇うことが出来れば屋敷の周りで魔獣が出ても追い払える。

 そうなればもっと安全に屋敷で暮らせるはずだ。


 ちなみにこの世界では冒険者や騎士たちにAからEまで強さのランク付けがされている。屋敷の護衛には出来ればCランク以上の人物が欲しい。それくらいのランクならゴブリンなどの低ランクの魔獣を追い払ってくれるだろう。


「アンタ、魔獣の森の近くに住んでるのか?あそこらへんに住むのはやめておいた方がいいぞ。俺ら冒険者も近寄りたくはない」

 

 酒屋やギルドを訪ねて強そうな冒険者に声をかけてみたが、ほとんどの冒険者はこんなことを言って渋い顔をする。


 常時住み込みで働く護衛が欲しかったのだが、魔獣の森が近くにあるのが印象として悪いようだ。なかなか快諾してくれる人物は見つからなかった。


 仕方ない。条件を低くしてたまに護衛してくれる低ランクの護衛を探すしかない。

 そんな最後の望みを託して広場の掲示板やギルドに護衛募集の紙を貼った。


 "屋敷の護衛を募集。ランク問わず。場所は王都北の屋敷。報酬は3食とおやつ。カガ・ダイスケ"


 こちら側から出せるのは【業務用スーパー】で取り寄せる料理とおやつのみだ。


 我ながら怪しげな募集だと思う。

 しかし、こちらとしても屋敷を守ってくれる人物がどうしても必要だった。

 


 いつもと変わらず屋敷でのんびりと朝食を食べていたある日。

 突然女騎士が屋敷に訪問してきた。燃えるような赤髪で凛々しい顔の美人だ。


 「私はクラリス。王都騎士団に所属している。貴公が護衛を募集してるダイスケか?」


 どうやら護衛募集の張り紙を見て屋敷に来てくれたらしい。しかも騎士団だというから実力はありそうだ。


「ああ、魔獣が屋敷に来たら追い払って欲しい。ちなみにお前の強さはどれくらいなんだ?」


「うむ。私のクラスはS級だぞ」


 ん?S級?こいつふざけて喋ってるのか?

 S級は冒険者クラスの中でも最上位のクラスだ。


 それが本当ならこの前召喚された高校生勇者よりも高いクラスとなる。普通だったらあり得ない話だが・・・。


 何回も確認したがクラリスは真面目な顔で本当だと言い張る。

 このまま言い合いをしても仕方ないので魔獣の森に行ってその強さを確かめることとなった。


 「グルルルッ」


 「おお、この森にはブラッドウルフがいるのか」


 ブラッドウルフはオオカミのようにすばしっこく、人間に噛みついてくる魔獣だ。

 大体の場合、5匹程度の集団で活動していて不用意に近づくと囲まれてしまうので厄介な相手だった。


「滅しろ魔獣ども!」


 クラリスはウルフの素早い身のこなしにも動じず、剣を一振りするとその太刀筋からから溢れんばかりの炎を出した。これもスキルなのだろうか。

 ウルフたちはその一閃から逃れられず胴体が焼き切れて全て息絶えた。


 俺はスキルやステータスには詳しくないのだが、身のこなしや強さを見るとS級であることは嘘ではないらしい。


 「魔獣は悪だ。貴公が望むのならこの森の魔獣を全て殲滅して見せよう」


 森は燃え盛る剣のせいで至るところで燃え広がり魔獣たちは四方八方で悲鳴を上げている。クラリスは自分で森を燃やしたくせに炎を消す方法は知らないらしく、魔獣の森はずっと燃え続けた。

 

 後日、王都から騎士団が来て事情聴取を受けた。

 魔獣の森に火をつけた不審者を探しているらしい。


 それはまさに騎士団の副長クラリスがやっている事なのだが、俺は知らないの一点張りでなんとかやり過ごした。そのあと王都から魔術師団が来て森の火事を魔術で鎮火してくれた。

 

 危なっかしいところはあるがともかく騎士団の副長が屋敷の護衛をしてくれるというのは助かる。しかし、なぜ依頼に応募してくれたのだろう。


 「それは貴公の噂を2回ほど聞いたのがきっかけでな」


 1回目は召喚で現れた勇者の一人が使い物にならず屋敷に追放されたという話。2回目は屋台で焼き鳥という変な肉を売っている人間がいるという話。

 その2つの話を聞いてこの屋敷にたどり着いたのだと言う。


 そのどちらもまさに俺なのだが、他人から聞かされると少し恥ずかしい。

 また、屋台の時には金を稼ぐために必死に焼き鳥を売っていたので気づけなかったがクラリスは客としても来ていたという。


 「あの焼き鳥は美味かったな・・・」


 クラリスはあの焼き鳥を今まで食べたことがないほど美味いと感じたらしく、どこかでまた出会うために俺の情報を収集していた。


 そこで見つけたのがあの掲示板に貼っておいた募集の紙。

 どうやら3食おやつ付きと半分ふざけて書いた報酬を真剣に求めていたようだ。


 ともかくクラリスほどの実力の持ち主なら屋敷に魔獣がやってきても余裕で追い払えるだろう。しかしさすがに常時この屋敷を防衛するのは騎士団の都合上無理そうだ。


 「そうだな、ずっとこの屋敷に常駐するのは難しいが時間があるときは出来るだけ護衛しよう。私は悪を斬る、貴公は美味い料理を出す。これでいいだろう」


 剣を振るうことに飢えているのか何か別に考えがあるのか分からないが、とにかく魔獣を斬りたいらしい。

 

 「分かった。これからしっかり屋敷を守ってくれよクラリス」


 「よし、契約成立だ。それではダイスケ、今日の報酬を頼む」


 クラリスはそう言うと食事をせがんできた。


 どうやら森でブラッドウルフを討伐したのも護衛のうちに入っているらしい。

 仕方ない。報酬の異世界料理を見せるためにも軽く何か作ってやるか。

 これから美味い料理を食べさせまくってクラリスをこき使ってやろう。


「できればあの屋台で食べた焼き鳥と同じくらい美味い料理を頼むぞ」


「いきなり難しいことを言う騎士様だな」


 そういえば王都の屋台には前世でよく食べていたあの料理が無かったな。

 いい機会だし【業務用スーパー】で取り寄せて作ってみるか。クラリスがどんな反応をするのかも気になるしな。


 俺がその揚げ物料理を作るとクラリスは驚愕することになった。

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