国家転覆初日2
玉座の間にはバルタスの首が転がり、クラリスの声が響いた。
「これで邪魔者は消えました。陛下、ご決断を」
クラリスは剣を鞘に収め、何事もなかったかのように凛とした声で続けた。
「わ、分かった!今すぐアナスタシアに王位を譲る。だから命だけは助けてくれ!この通りだ!」
国王は恐怖に震え、膝をついて命乞いを始める。
「それでは皆さま、今この時から私が女王としてこの国を治めることといたします」
アナスタシアは女王となり、城の制圧は完了。残るは王都に潜むゲイブランド軍の掃討のみとなった。
この間、俺はただ見ているだけだったが、計画は順調に進んでいた。もしやここに俺は必要ないんじゃないか?ここまで何もしていないぞ。
その時アナスタシアは俺に頼み事をした。
「ダイスケ様、貴方の能力で城下にいる魔人たちをどうにかできませんか?王都の民を救ってほしいのです」
◇
アナスタシアに城下で暴れている魔人を浄化してくれと言われた俺は、厨房に向かって大急ぎで準備を始めた。
厨房には俺とイリス、王宮のコックやメイドたちが集まっている。
とりあえず何でもいいから、【業務用スーパー】で取り寄せて魔人に食べさせよう。食べ物さえ食わせれば魔人は人間に戻るはずだ。
俺はスキルを開くと少し悩んで、大量にパンとピザを取り寄せた。これなら魔人に食わせやすいだろう。
「噂には聞いていたが本当に食べ物がいきなり出てくるんだな!」
「わぁ、美味しそう!」
スキルを使って食べ物を取り寄せるとコックたちは驚きの声をあげた。その様子に、イリスと俺は思わず顔を見合わせて笑った。最初にこのスキルを見たイリスの反応と全く一緒だ。
取り寄せたパンやピザは食べやすいように切って、ゲイブランド軍を浄化するため魔術師団や騎士団、異種族部隊に渡した。
俺たちは街をうろつく魔人を見つけるたびに、その口元にパンやピザを無理やり押し込んだ。
その様子はなんともシュールな光景だったが、これで王都を守れるのだから、みんな必死だ。
パンやピザを食べさせると狙い通り、魔人たちは次から次へと浄化されていく。
「俺たちはいったい何をしてたんだ……?」
ゲイブランドの魔人兵たちは元の人間の姿に戻ると、王都の住民を襲うことを止めて王女軍に投降した。
王都に残っていた魔人たちの数は減り、街は静けさを取り戻しつつあった。しかし、北門付近にただならぬ気配を放つ魔人が一人、立ちはだかっていた。
それはゲイブランド三傑魔と言われる魔人の幹部、エリシアだった。