8話 君で呼ぶのやめてくれよ
辺りがすっかり薄暗くなった頃、洞窟の中で焚き火を起こし、それぞれの作業を分担していた。
俺は調理人で、アルミの皿に垂れ流した支援物資の1つであるコーンポタージュを2人分、火の上で温めていた。そして騎士の方はどこからか持ってきた葉や藁で粗末な寝床を作製している。
騎士が藁の布団を敷き終えたと同時、こちらも調理が済んだ。
「ほい飯、できたぞ」
熱を持った皿を騎士に渡す。
「ありがとうございます」
受け取ったのを確認すると地面へ腰を下ろし、相手も座った。
ここのところ、ずっとコーンポタージュしか口にしていない。いい加減そろそろ飽きてきた。
そんな飽きつつある熱々のコーンポタージュに息を吹き掛ける。
「そういえば、お前って名前は何て言うんだ?」
少々喉へ注ぎながら問い掛ける。
騎士が銀に塗装された皿を洞窟特有の冷たい地面へと置くと、背筋を伸ばしてこっちを見た。
「帝都守衛第2騎士団隊長のレベッカ・ヴェルディです」
名前は分かったが、その前に中二病が好きそうな単語が出てきた。
「えっーとレベッカだっけ? その帝都なんちゃらって何なんだよ」
「簡単に言うと、政府公認の親衛隊です」
「なるほどなぁ、お偉いさんって訳か」
自分なりに解釈し、頷きながら生温かいコーンポタージュをぐいっと飲み込んだ。
『帝都守衛第2騎士団』にスラブではあまり聞き馴染みのない『レベッカ・ヴェルディ』という名前。これはどうやらマジで異世界に飛ばされたみたいだな。実感はそれ程湧かないが。
「お、お偉いさんではないですが……」
何故か顔面を少し紅潮させて俯くレベッカ。変に褒め過ぎて怒ったのかもしれない。
「ところで、あなたの名前は?」
「おっと忘れてた、すまんすまん」
コーンポタージュの残りが僅かとなった皿を地面にコツンと音を立てて置く。
「セルゲイ・イヴァーノヴィチ・ベレンコ。まあ長いし普通にセルゲイとかでいいよ」
「セルゲイ……いや、セルゲイ『君』と呼びます。それでよろしいですね?」
「んぶっ!」
君呼びに不慣れな自分はいきなりそう呼ばれて、さっき飲んだコーンポタージュが胃から這い上がっていくのを覚えた。
「だ、大丈夫ですか?」
レベッカが心配そうな様子で調子の確認を促してくる。
「あ、ああ、問題ナッシングだ。はあ……」
とは言うものの、喉には酸性の液が粘り付いているので気持ち悪い感触だ。
しばし時間を置いて、落ち着きを取り戻す。
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