60話 アサルトライフルだって!?これはヤベぇぞ!
人員が減る機会をまだかまだかと窺っていると、後ろからいくつかの足音が流れてきた。
そして、その足音の主達が目前に現れる。
人数は4人だ。黒や白の服を着ていて、その上に鋼鉄製のボディアーマーや古風な兜を装着しており、腰元にはナイフやら棍棒やら物騒な凶器が納められた革製の鞘が吊るされていた。
棍棒を携えたガラの悪いオッサンが寄って来た。
「お前ら、帝国の連中か?」
その問い掛けに、アンドリーさんが威圧を含んだ低い声で答えた。
「その通りだが、俺達はただの親子、観光客だ」
「嘘つけ! 服装がおかしい……まさか、転生人か!?」
俺もアンドリーさんも野戦服姿だ。常識的に考えれば確かに変な風貌と言えるだろう。
彼がこちらの肩に自分の肩を擦り付けてきて、微かな声でこう呟き掛けた。
「セルゲイ、これはもう本性を現すしかなさそうだな」
――――次の瞬間、彼が突如としてホルスターで眠っていた拳銃を抜き出し、勢いよく立ち上がるや否や銃口を集団に向けた。
手に持っている銃はソ連で開発され、半世紀が過ぎた現代でもマフィアが好んで使うマカロフだ。
「時代遅れな人間には分からないかもしれないが、これ一つあればお前らなんて楽勝だ」
威嚇のためか、空に向けて発砲する。
乾いた銃声が辺りに染み渡った。教会の連中は一斉にマスケット銃をこちらに構え、眼前の集団は少し後退してそれぞれの武器を抜いた。
こっちはコイツらよりも遥かに強力な武器を所持しているが、相手は何十人と居るし、旧式とはいえマスケット銃を持った輩だって居る。戦闘は避けた方がよさそうだ。
しかし、そう簡単にやり過ごす事は許されないようだった。
「処刑してやる!」
集団に属する1人が、棍棒で頭部目掛けて殴り掛かってきたのだ。
アンドリーさんはその襲撃に即座に反応し、銃声をまた響かせた。
パンッ、と乾いた銃声がさっきと同じように鳴ったが、今度は威嚇射撃ではなく、本当の射殺だ。
銃弾は棍棒野郎の眉間を貫き、足元から地面へ崩れ落ちた。血溜まりが広がっている。
「くそっ……舐めやがって」
仲間が1人死んだ事に、集団の刃物野郎が悔しみの言葉を垂らした。
敵は彼が殺害した男に注目を寄せている。逃げるなら今がその機会だ。
自分のその考えは彼も同じだったようで、
「今日は退散だ!」
そう叫び、俺の腕をしっかりと掴んで風の如く駆け出した。
その直後、集団が銀に輝く鎧をいきなり脱いだかと思うと、下に忍ばせていたであろう銃を取り出した。
ところが彼らが手にした銃はこの世界で流通しているマスケットではなく、現代の軍隊やゲリラが使用する先進的で高性能な自動小銃だった。構えている銃はある意味で親近感が湧くAKだ。スラブの兵士でこの銃を知らない者は居ないだろう。
「ライフルなんて持ってるのかよ!」
彼も敵が連射銃を持っている事に驚きを隠せていないが、依然として走るのを止めず、むしろ速度を上げていた。
「追うんだ! 殺せ!」
殺意しか籠っていない掛け声と共に、夥しい数の銃弾が背中を襲う。
マスケット銃の粗末な銃弾はまだどうにかなるだろうが、自動小銃はセレクターの操作次第で連発できるので、逃げようがない。
銃弾の嵐の中を走っていても、このままではその内当たってしまう。
周りの人間全てが武装して襲って来るので、隠れられる場所すら見つからない。
この集落からの脱出だけを考えて駆けていると、左腕に一線の痛みが走った。強烈な痛覚で思わず挫けてしまいそうになるが、全身に力を込めて堪えた。
駆ける最中に鋭い痛覚が生じた箇所を見ると、衣服の布が破けており、鮮血に染まっていた。
「あそこに一旦隠れるぞ!」
顔を上げてみれば、目の前に今は使われていなさそうな小屋があり、その場所を一点に体力を振り絞って一気に走り抜けた。
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