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42話 ステファンさんはマスコットキャラ的存在?

 敵のアジトを壊滅……というかある意味の虐殺が済んだあと、帰路を辿っていた。ステファンさんは服が血で染まっており、村民からは注目されていた。

 アジトでのステファンさん、えげつなかったな。もはや恐怖まで覚えてしまった。特に眼球をほじくり出すのは印象的だった。夢に出てきそうだ。


 あんなに残忍な事ができるのは、やはり虐殺に関与した事と繋がりがあるのだろうか。戦場で生活する多くの兵士はPTSDを発症するので、彼もそういった障害を抱えているのかもしれない。

 帝都へ帰還し今朝寄ったギルドに入ると受付員に仕事の完了と成功を伝え、報酬を受け取った。給料は40万、十分な大金だ。

 報酬を貰うと再び外へ出て、ステファンさんと別れた。


 「今日はありがとうございます」

 「最後の敵は、ナイスだったよ。また一緒に行こうな」


 そう言い残すと、彼は金の入った封筒をポケットに突っ込んでどこかへ走り去って行った。


 「怖かったな……」


 俺が言う怖かったとは敵の事ではなく、彼のやっていた行為だ。通常は銃弾を撃ち込んで始末するが、ステファンさんはあえて昔ながらの方法で、敵を苦しめて死へ追い込んでいた。まさに『セルビアの残忍冒険者』というべきだ。


 「まあ、金貰えたしいいや……」


 早速報酬を使おうと、そこらの店に向かう事にした。それとせっかくなので、レベッカに何か買ってあげよう。

 店で購入した品は日用品と今夜使う予定の食材だ。奮発して値が張る牛肉を買った。そして肝心のプレゼントについてだが、それはクッキーだ。これで喜ぶかどうかは分からないが、しっかり味わってくれると嬉しいところだ。


 お城の周りを適当に散歩していると、背後から重厚な足音が響いた。

 後ろを振り返ってみれば、外套や鎧など全ての装備を身に纏い、いつもの馬に跨ったレベッカが居た。蒸し暑いのか兜だけは脱いでいる。


 彼女の後ろには部下だろうか頑強そうな甲冑に身を包んだ者達が数十人、馬に乗っていた。

 見たところ、警備や巡回が終了し戻って来たように思える。


 「セルゲイ君? こんな所で何を――――」


 迷彩服の軍人ではなく鎧姿の騎士の集まりを見たのはこれが初めてだから思わず圧巻されていると、固まる自分に声を掛けられた。


 「ちょ、ちょっと、あげたい物があって」


 菓子の入った箱を袋から取り出し、レベッカの元まで歩いて行く。

 馬上の彼女にそれを渡すと、怪訝な顔になった。


 「これは?」

 「気に入ってもらえるかどうかは分からないけど、クッキーだよ。暇な時にでも食ってくれ」

 「ありがとうございます……って、これは、高級店のものではありませんか」


 そう、このクッキーはたったの十枚しか入っていないのに6000円もした。


 「お金は大丈夫なのですか?」

 「ああ、稼いだからな」


 未だ分厚い封筒を彼女の眼前に差し出す。


 「凄い……どうやって稼いだのですか?」

 「えっと、何だっけ、あ、思い出した。確かギルドって所に行って仕事貰って、それで稼いだんだ」

 「討伐をこなしたのですか?」

 「ああ、盗賊のアジトをぶっ潰したぞ」


 改めて残忍だったなと思う。


 「1人で?」

 「いや、熟練者とだ」

 「誰ですか?」

 「セルビア出身のステファン・スタンコヴィッチって人だよ」


 世話になった彼の名前を告げた途端、レベッカ率いる騎士団からヒソヒソと小さな声が上がり始めた。


 「ステファン……帝都の怪物と呼ばれているあの方か?」

 「ああ、恐らくそれだ」

 「そんな有名人と一緒に戦ったのか」


 声量は次第に膨らんでいき、


 「ここは神聖な城の近くだ。静かにしろ」


 と、尖った口調でレベッカが注意を行った。その警告と共にうるさかった声はどんどん縮まっていった。


 「あの……ステファンさんって凄い人なのか?」


 彼は確かな強さを秘めている。しかし、凄いというよりも「ヤバい奴」という印象が強めだ。


 「もはや神の領域です。彼がここにやって来たのは1年前でした」


 古参の転生人か。


 「最初はその風貌に誰もが怯えていましたが、ステファン様は魔物に襲われている騎士を救ったり、帝都に攻めて来た共和国のスパイを捕縛したりと、とにかく数え切れない程の貢献をしてくれているのです。この前は、正規軍と騎士団から表彰を受けていましたね」

 「すっげぇ人だな……」


 ステファンさん、申し訳ない。俺はさっきまでのあなたの事を残虐な人間だと思っていた。でも実際は、皆の役に立つ英雄であった。

 ユーゴスラビアの戦士、恐るべしだなと心で呟いた。


 「まあ立ち話もここまでにして、こいつはやるよ」


 クッキーの詰められた箱をレベッカに手渡す。


 「本当にいいのですか? こんな高級品……」

 「いいって事よ、さあ俺に甘えなさいな」

 「……すみませんが、納得できません」

 「ええ、じゃあ後ろの人達と一緒に食ったらどうだよ?」

 「数が圧倒的に足りません」


 じゃあ、1人で何とか食うしかないなと言おうとした時――――いきなり、手を掴まれた。


 「クッキーは10枚、2人で5枚ずつ分ければバランスよく食べられます。さあ、賞味期限もあると思いますし、私の兵舎に行きましょう」

 「おいおい、俺はまだ行くとは――――」


 兵舎とはいっても一応は女性が、それも美女が住まう空間だ。こんな便衣兵が足を踏み入れるなんて到底許され難い行為だ。

 だがレベッカ以外の男性騎士達から「行った方がいいぞ」という眼差しを受け、俺は渋々彼女の馬へと跨った。

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