19話 立ちはだかる大要塞
高所の崖。
自分は双眼鏡を、レベッカは単眼鏡を持って眼前に構える保管庫を偵察していた。
「ここがそうか」
「はい、慎重に入らなければなりません」
皇帝の鏡があるとされる保管庫の外観は野営地だが、今回のは規模が途轍もなく広大で、警備も非常に厳重なものとなっている。
歩哨は今までの装備とは比にならない程の重厚なアーマーを身に着けており、現代兵器の価値観では脅威でないものの、古めかしいデザインの銃や大砲を装備した部隊まで確認できた。剣や槍相手なら遠距離から一方的に黙らせられるが、向こうも銃を持っているとなると下手な動きは禁物だ。
「とんでもねえ所に来たな」
双眼鏡を下げ、独り言を漏らす。
「今回ばかりは戦闘をなるべく避けておいた方が得策でしょう」
うっかり漏らした呟きは相手の耳に伝わっていたらしく、返答がなされた。
「では、行きましょう」
レベッカが崖の緩やかな坂から下っていたのを見て、自分もそれに続いた。
野営地の建つ地面に着地したと同時、歩哨がこちらに近寄って来ていたので咄嗟に近くにあった木に隠れた。
物陰から、野営地の全貌を改めて覗く。
昨日に行った野営地はテントだけが並ぶ簡素な基地だったが、目の前にある野営地……もはや要塞と表現した方が正しいか。要塞にはテントはもちろんの事、石で造られた耐久度抜群な建物があり、防衛戦を展開するために使われる長い塹壕が四方に掘ってあるのも見えた。
難攻不落の大要塞という例えがお似合いな場所だ。
歩哨がどこかに去ったのを確認すると、俺達は木を離れ、野営地に接近した。
「どこから入るんだ?」
野営地は全体を木の柵で囲われていて、入れる所は真正面のゲートしかない。そこから入ろうなどとは思わないが。
「あそこは如何でしょうか」
レベッカが指さす方向を見ると、柵が壊れている箇所があった。人が1人通過できるぐらいの穴が開いている。
夕方の闇に紛れつつ少しの音も発さないように移動し、そこへ辿り着いた。周りには大量の兵士が居たので見つかるかもしれないと思ったが、暗い事もあってか全く気付かれる気配はなかった。さらに運のいい事に破損した柵の周辺には見回りの兵士が1人も居ない。
「先に入れ」
「ありがとうございます」
銃を構えながら、レベッカを先に通させた。
「よし、俺も行くか」
最後に敵の確認をし本当に1人も居ない事を把握すると、穴をくぐり抜けていった。
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