1話 初めまして異世界
目を開けたら、神々しい輝きを放つ御仁が立っていた。長く、とても美しい金髪に黄金のような目をしている。彼女は私を見つめて微笑んでいた。はて、このような美人な知り合いはいなかったはず。
「目が覚めましたね」
「...あの、貴女は誰ですか」
透き通った心地良い声を聞くと、不思議とここが何処か、何故自分の記憶に所々モヤがかかるのか気にならなくなった。
「私はミシュレーン。人間たちには神とも呼ばれています。貴女には提案があってここに連れてきました」
「提案ですか?」
「はい!、私が見守っている世界に転生していただきたいのです。そこは地球よりも科学が劣っているため生活水準が低くなりますが、その代わりに魔法があります!想像しただけでわくわくしませんか」
どうでしょう!と笑顔で私を見つめる神様。
転生というと私は死んだことになるのかな。思い出せないがそういうことだろう。確かに魔法という響きには一瞬期待したが、勇者や聖女といった存在を思い浮かんで、すんっと気持ちが沈む。
ラノベとかでは魔王やモンスターを倒す戦闘シーンが多かった。これはもしかして世界の危機を救って欲しいという展開なのでは?冷静に考えてチキンな私では戦うなんて事、到底出来ないと思う。無理。絶対。
「転生すること自体いいですけど、世界を守って欲しいとか言わないで下さいね」
私の言葉にとても喜んだ様子で手を合わせる。
「それでしたらご安心下さい。貴女に強要することはありません。それに既に勇者と聖女はある国で召喚されました。それも他の国よりも優位に立ちたいという醜い欲望のためだけに」
神様はニコニコしているが、寒気がするのは気のせいだろうか。
と、とりあえず、ただ転生するだけでいいんだとほっとした。
「ちなみに断ったら「もう転生することは出来なくなり永遠と彷徨い続けますね」......え」
彷徨う?このまま?生まれ変わることなく?
ふとに脳裏にうらめしやーと透明になって苦しんでいる自分がよぎった。
クワっと目を見開く。
「それって半強制じゃないですか!?」
「元の地球では少子高齢化の影響で、生まれ変われる器が少ないのですよ。私達の間でも問題視されている案件でしてね。私も神として迷える魂を見過ごせないと思い貴女を連れてきたのです」
眉を下げて申し訳無さそうに説明された話に
なんで、どうしての言葉が出なくなった。
もう一択しか残っていない状況で嘆いても仕方がない。むしろ人として生まれ変われる機会を貰えたんだから幸運だよね?
自分の中で納得していると、私が黙っていることに焦ったのか「こちらの世界で転生した暁には、できるだけ魔法が使いやすい身体を用意しますので!!どうか!」
目の前の神様の必死感が拭えないが、もう決まっている。
「...転生でお願いします!」
「!よかったです。断られたらどうしようかと...実は貴女がここにいられる時間はあと少しの様です。色々説明をしたかったのですが、仕方がありません。転生をした後はお任せします」
神様の言葉を最後に視界が徐々に暗くなっていく。
え、そんないきなり!案外適当なところがあるんだなと思い、そのまま意識が遠のいていった。
ピー...ピー...
鳥のような鳴き声が聞こえる。
ガバッと起き上がる。まずは状況を確認しよう。
よし、神様との会話は覚えている。転生するという話で、、そういえば身体を用意するとか。
立ち上がって確認してみると前より綺麗な肌にほっそりとした腕があった。鏡はないがどうやら小さい子供ではないようだ。赤ん坊からやり直すんじゃないんだなぁと考えながらべたべた身体を探ってみると、着ている白いワンピースのポケットに何か入っている。
取り出してみたら、ずっしりした巾着が出てきた。
中身は、、全て硬貨だ。お金!
神様が配慮してくれたみたいだ。とてもとてもありがたい。ただ、見たことのない硬貨だからいくらになるのか不明だ。知識がないのは不便だな。
鞄がないため巾着をポケットに戻した。
他にあるか探したが何もなかった。
ここがどこかは知らないが周りは木でいっぱいだ。森かもしれない。日が暮れるまでに移動したほうが良さそうだ。近くに村か街があればいいんだけど。
と言ってもどこに向かえばいいのやら。序盤で心が挫けそうになる。
...とりあえず、歩こ
道はないけどなんとなくこっちかなと思う方角に進む。