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4.戻りました-頑張って乗り越えてね-

全43話予定です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です

 その三日後、クリスたちはエルミダス基地に帰って来た。


 クリスの、


「戻りました」


 としょげる顔に両手で頬をギュッとして、


「ダメだろ、下を向いちゃ。きみは副隊長だ、これからだってそういうシチュエーションが起こらないとは言い切れないし、実際起こりうると考えている。敵もこの半年で多分強くなっただろうし。もしかしたらパイロットの死というものも経験するかもしれない。だけどね、それを乗り越えるのもきみの[仕事]だよ」


 そう言って抱きしめた。


 その時、クリスは泣いていた。その涙の意味はさまざまであろう。負い目から来るもの、カズに[許されてしまった]事、ふがいない自分への怒り、敵への怒り……。


 それでもクリスは返って来たのだ。


 ――頑張って乗り越えてね。


 カズはそう思いながら、


「で、だ。感動の再会を続けていたいのはやまやまだが、肝心のマリアの容体を見せてもらおうか」


 ゼロフォーと行き違いで、カズは研究所の女性看護師を一名現地に派遣していた。もちろんそれはマリアーナがパイロットだから、という理由である。そしてリェルヴァルテ市に着いてマリアーナの看護の引継ぎを行い、まさに行ってコイで戻って来た、という訳だ。なのでクリスの乗った輸送機の他に軍用の非戦闘型の飛行機が一緒になって順次着陸して来たのだ。


 カズとクリスはその飛行機に向かう。後部ハッチが開くと中からマリアーナが看護師に連れられて出てきた。


「容体は?」


 カズが聞くと、


「はい、全体としては良好、と言ったところでしょうか。バイタルも安定していますし、所見として特異なところは見当たりません。傷の具合も良いようです。脳波からして、覚醒状態に移行しつつありましたので、もしかしたらそろそろ目覚めるかも知れません」


 研究所の看護師は一般の医師とほぼ同等、いやそれ以上のの技能、経験を有している。それはあの研究所勤務、というところからも分かる通りだ。


 実際、カズがトリシャの首のケガの緊急手術をした時にもこの看護師は立ち会って麻酔深度を測っている。もちろん他にも看護師はいるし、その能力はこの看護師にも負けじ劣らじである。逆に言えば、今いる研究所職員である彼ら、彼女らはそれだけの事をしてきたし、それだけのものを見てきた、それでもまだなお現役の職員でいられているのである。


 その職員の言う通り、ドンピシャなタイミングで、


「あっ、マスター……、わたくしは一体? ここは天国ですの?」


「マリア!」


 思わずクリスが駆け寄る。


「少佐殿、すみません、わたくしボーっとしていましたの。そのせいで被弾して……ゼロフォーは?」


 まだ状況が呑み込めていないのだろう。だが、自分の身体の欠損よりゼロフォーを優先するのは[調律]のお陰か、それともそれだけウエイトが重要だと思ったのか。


「マリア、今回は大変だったね、お疲れ様。機体としてのゼロフォーは廃棄処分になったよ。サブプロセッサーのセロフォーは三五FDIに乗せて勉強してくるように言ってある。そこで気になるのがきみの処遇なんだけど」


 とまで言って一息置いてから、


「今回、きみは左腕、左脚、左わき腹を損傷している。今は痛み止めが効いているからだいぶマシだと思うけど、これはこのままにはしておけない。そして、過酷な話ではあるけど、きみはパイロットを辞めることは出来ないんだ」


 と説く。


 マリアーナは、


「わたくしは廃棄されるのでしょうか? そもそも被弾して動けなくなった時点で起爆されるはずではなかったのてすの?」


 当然の疑問だ。


「それは、ね、クリスが助けたんだよ。[起爆は頭になかった]ってね。だけど、それできみは解放されるのを逃した、ともいえる」


 ――そう、きみは死ねなかったんだ。


 その言葉の意味が分かったのだろう、横にいたクリスが辛い顔をする。


「で、だ。きみはこれからあるところに連れて行く事になる。このあとの順序について話しておこう」


 カズはそう切り出した。


全43話予定です



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