3.ゼロフォーはどうなるんですか?-カレルヴォ大尉としばらく組ませることにしたよ-
全43話予定です
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「それはよかった。マリアーナについてはこちらに帰って来次第治療を継続しよう。ゼロフォーは……大破して使い物にならくなったよ。部品を取ってあとは廃棄処分だ」
――大切な機体を一体失ってしまって……。
クリスは歯止めが効かなくなるのを知っているのでそれ以上思考を止め、
「サブプロセッサーは、ゼロフォーはどうなるんですか?」
と尋ねる。
カズは、
「それね、日本奪還作戦の時にマリアと一緒にいた三五FDIのパイロット、カレルヴォ大尉としばらく組ませることにしたよ」
そう言って少し間を置いたあと、
「今回、クリスにも落ち度があった。それは言うまでもない、撃破を確認しなかった点だ。それは叱責されて然るべき問題だ。だが、マリアも全周警戒を怠ったというミスを犯している。さらには本来パイロットをサポートするべきはずのサブプロセッサーでさえ全周警戒を怠ったんだ」
カズはそう語って聞かせた。
「だからカレルヴォ大尉と組ませた、と?」
クリスが問うと、
「そう。もう一度しっかりとしてもらわないとね。それにゼロフォーの為を思って、という側面もあるんだ」
クリスにはその辺りの事情が分からないので[ああ、きっとご主人様にも事情があるんだろうな]くらいに思ったのだろう[なるほど]と一言いってから、
「では、引き続き前線に立つ、という事なのですね?」
と返す。
――そうか、廃棄という最悪だけは逃れたんだ……。
クリスは少しだけ安心した。が、同時にもう一つの懸念が頭をよぎる。
「マリアさんはこれからどうなるんですか?」
恐る恐る尋ねると、
「それは帰って来て、容体を見て、かな。聞いた限りでは重症なのは間違いない、のは言うまでもないんだけど、意識が戻ればかなりの確率でパイロットに戻る事になると思う」
――えっ? あれだけの傷を負って?
そんな声を発した訳ではないが、
「あ、もしかして[廃棄処分]たとか思ってた? そりゃあ自分を責めたくなるよね」
カズの声が明らかに変わる。
「ああ、そういう事ね。自分のせいで人が一人、それも貴重なパイロットがいなくなる、と。それが自分のせいだ、と。そう感情が動いてきみは上気してしまったんだね。だから決定打になる[罰]が欲しいと」
無線通信越しでもカズの声が[ご主人様モード]になっているのが分かる。
「そ、そうです、そうなんです。ご主人様に罰して頂く事で私は正常を保っていられる、そんな風に思ってしまうのです。もしマリアが亡くなってしまったらみんなは何と言うだろう、ご主人様は何と言われるだろう、そんな事を考えると思考が止まらなくて」
――そう、私は私を罰せない、だから罰してくれる人が必要なんです。
カズは少し黙ると、
「前にも言ったけど罰したりしないよ。その感覚を持って悶えるんだ。それが人の成長ってやつなのかもしれないな」
実際、カズの言った事が正しいのだろう。
人間、誰しもが[傷]を抱えて生きている。それに耐えられないものは自死を選ぶものもいるだろう。だが、それでも前に進んでいくのが人なのであろう。そうして傷つけ傷つけられて人は大きくなっていく。つまり、成長していくのだ。
ここでカズがクリスの欲しいままに[罰]を与えては彼女の為にならない、そう思っての発言であろう。逆に罰しない事が罰なのだ、と。それはお互いが信頼関係にないと出来ない芸当である。その一例が、人に裏切られた絶望感や、家族を殺された者の復讐劇、等というものなのだから。
――だから、私は罰せられないの?
クリスは自問するが、自答の可能性は様々にある、といっていい。
全43話予定です