12.話は聞いたで、大変やったな-そう言えばその辺りの話は知らないのよね-
全43話予定です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
時間は少し戻って、クリスはカズに言われた通り、一足先にレイドライバーと一緒にアルカテイル基地に戻っていた。この地は帝国が優位な土地だ、移動も必然的に時間帯が限られてくる。そうは言っても、エルミダスから車で二日、そんな距離にアルカテイル市はある。その中でも唯一の軍事基地なのがアルカテイル基地であり、現在のレイドライバーの母港になっている場所だ。
そこへ時間はかけたが帰って来た。
帰ってきてまず出迎えたのが、ヤマニだ。
「話は聞いたで、大変やったな」
降りてきたクリスに近づいていく。この辺りは、レイリアなら問答無用で頭をグシグシでもしていようものだが、ヤマニは少し前までのクリスの内情を知っているからぐっとは近づかないで少し距離を詰める程度にしていた。男性恐怖症の件である。
「ありがとうございます、でも、マリアを負傷させてしまいました。それに」
「それは仕方ないんやないかな。実際、今までがようやっとったというべきなんやろな。その辺りはもう少しドライで良いと思うで」
そんな会話をしていると、
「クリスだー、おかえりー」
次にレイリアと、
「おかえりなさい」
トリシャがやって来る。
「他の方は?」
というクリスの疑問に対して、
「ああ、アイシャたちとアニーたち? アイシャたちは立ち番、アニーたちは今は待機してもらっているわ。そう言えばその辺りの話は知らないのよね」
そう言うとトリシャは事の成り行きを説明し始めた。
ワンワンとワンツーはケンタウロス型のレイドライバーである。この型のレイドライバーは装甲が厚く出来ているので、単純に撃ち合いになってもしばらく耐えられるだけの能力を有している。もちろんこの二体だけで防衛任務をとらせてる訳ではないが、先の日本奪還作戦時から二十四時間体制でのレイドライバーによる警戒が採られるようになったのだ。
そして、今は帝国の侵攻だけでなく共和国にまで神経を張らないといけなくなった。必然的に装甲の厚いワンワン型は砲台としてはうってつけである。それにレイドライバーにはリンクという機能も備わっている。
なので交代制で立ち番をしている、という訳だ。
「そんなにピリ付いているんですか?」
クリスの疑問に、
「まぁ、アルカテイルを占領してからの警戒態勢よりも厳しくしてるって感じかな」
レイリアだ。レイリアだって、その立ち番に加わってもいるのだから。
「カズは何て?」
トリシャが尋ねると、
「先に帰るように、と。もし自分がいない時に敵襲があれば指揮をとれ、と」
そう言うクリスの声は浮かない。
「何を落ち込んでいるの、と言うのは簡単なんだけど、ね。まぁ、私が貴方の立場ならやっぱり色々考えてしまうわ。でもね、普通の軍隊と違うのは、私たちはチームであると同時に運命共同体でもあるのよ。誰かが失敗したからそれを責める、なんて事はしないわ。それは他の軍隊でもいえるのかも知れないけど、それでも私たちは少し特別だと思うの。それは信じてもらっていいわ」
トリシャが静かに説く。おそらく、それが真実なのだろう。一般の軍隊でももちろん統率というものは取れているのであろうが、レイドライバーのパイロットたちは人権を奪われ、過酷な戦場に[行け]と言われれば拒否権もなく向かう。今では全員がカズのコントロール下にある。そういった中で、ある意味[家族のようなもの]になっているのかも知れない。
「トリシャさん……」
「今は、いえ、今も落ち込んでいる場合ではないわよ。貴方がしっかりしないで誰がここを守るの?」
その一言に触発されたのだろう、
「ありがとうございます、そうですね、この地は絶対に守らないと」
「その意気よ」
トリシャが微笑む。もちろんその横には笑顔のレイリアがいるのだ。
全43話予定です




