10.こんなに綺麗に?-内臓に関しては……秘密にしていいかい?-
全43話予定です
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カズはそう言うと、
「まず目を引く部位は置いておいて、左側の皮膚からだ」
そう言うと小型カメラとハンディーモニターを出してきて、
「見えるかい? ちょうど胸の境の部分から左側部を[ある方法]を使って手術したんだ。だからこんなに皮膚のつきがいいでしょ?」
そう言いながらカメラを手術着の脇の部分に充てる。研究所で使用されている手術着というのは前と後ろに布がかぶさっているが、前後をただ紐で縛られているだけなので、横は露出している。なのですこし隙間を開ければ中までのぞき込めるのだが、今はそんな場合ではないので必要部位だけを写す。
それをモニターで見ていたマリアーナは、
「こんなに綺麗に?」
――こんな技術があったなんて。
そう思うのは無理もない。止血のためとはいえ左半身を[焼かれた]のだから。その焼き跡も全く残っていないのである。
「だけどまだ定着していないから、ベットの中でも身動きは禁止ね。世話をする人間を一人ここに置いていくから。あ、名前は看護師さんでいいから。常にこの部屋で待機してもらうようにするんだ。で、身の回りの世話をしてもらう、と」
そう紹介されたのは研究所の職員である。本名を教えないのはカズなりの配慮なのかもしれない。何しろパイロットであるマリアーナは自分の名前以外、両親の、姉妹の名前すら憶えていないのだから。
「拒絶反応もまったく見られないようだし、他に所見もないから皮膚に関してはそんなところかな。内臓に関しては……秘密にしていいかい?」
どうやら聞かれたくない様子である。
――マスターが仰るなら。
「必要以上の詮索は致しませんの。それがマスターの益になるのであれば」
即答である。
「よかった、もしかしたら話せる場面が出てくるかもしれないけど、まぁ、おいおいね。さて次だ」
そう言って看護師が持って来た腕と脚を見せる。
「これは? 義肢、でしょうか? 触ってみても?」
カズか笑みを浮かべながら頷くのを確認して、自由の利く右手でそれらを触る。まるで感触が皮膚そのものなのだ。これはレイリアの義手にも言えるのだが、この時代の同盟連合の義肢技術は帝国のそれと同等か、それ以上なものが出来上がっている。
もちろん、この義肢技術が同盟連合の国土全体に行き渡っている訳ではない。これはあくまでも[ここだから]可能になったものなのだ。その技術にはレイドライバーのものが応用されているから当然といえば当然なのだが。
「まぁ、接続部位にも皮膚移植したから無理は出来ないけど、付けてみる? あ、重ねて言うけどしばらくは動かないでね。寝返りも無しだ、その為の専用ベットだから。眠る時は鎮静剤を使用するつもりだよ、動かないようにね」
そう言いながら看護師と一緒に接続していく。
「神経を触るような痛みは……ないね、よしっと」
姿勢を変える訳にはいかないので付け根を少しだけ浮かせてベットと身体との隙間を作って取り付ける。
「で、今取り付けたんだけどまだ動かないんだ。これには仕組みがあってね」
そう言うと左腕と左脚のそれぞれ結合部にあるプレートのスライドスイッチをスライドさせる。すると、
「あれっ、感覚がある?」
レイリアの時もそうだが、失われた感覚が突如として戻って来る、そんな感覚なのだ。
「この義肢にはレイドライバーの技術の一端が使われているんだ。接続した時に痛みが出なかったのは、スイッチを付ける事で接続時の衝撃を抑えているからでね。そして、スライドする事で神経系が繋がって」
そう言いながら看護師はマリアーナの手を腕から指先まで撫でたあと、脚をさするようにすると、
「すごい、感覚がある! これが義肢なのですか?」
それ程に自然な感覚なのだ。
全43話予定です




