情報②春
封印の機械がある前で飛龍と栄次が暴れており、だいぶん目立っていた。
「栄次! もういいから帰ろう!」
階段をのぼってすぐ、ヤモリは叫んだ。その声に栄次が気づいたが、飛龍に炎を飛ばされ、避けるのに精一杯で逃げられなかった。
「……はあ、戦う気はないのだが……目をつけられてしまった」
栄次が雷を軽く避けながら静かにつぶやく。だいたい軽く避けられるのがすごい。
「ゲッ! オーナーが来る! 逃げろー!」
ふと飛龍が何かを感じ、慌てて持ち場へと走り始めた。
「……ヤバイ! 逃げなきゃ!」
飛龍の言葉にヤモリも焦り、怯えているおはぎをとりあえず引っ張り走った。おはぎは竜宮に来ることができる神格がない。
まわりはだませても、オーナーはだませない。
「ヒメちゃんは!?」
ヤモリはいつの間にか横を走っていた栄次にたずねた。
「……入り口の景品交換所か」
「楽しんでる……。何しにきたのよ、あの子は……」
従業員用の通路を通り、近道をして入り口まで戻ってきた。途中で飛龍がオーナーに捕まっていたのを確認。
「ヒメちゃん! 行くよ!」
ヤモリが入り口付近にいたヒメちゃんに声をかけ、ヒメちゃんは笑顔を向ける。
「おお、景品の竜宮お菓子セットをもらったぞい! 中身を……」
「後にして! いかないとオーナーが」
ヤモリはヒメちゃんも急かし、とりあえず竜宮から出た。
門をうろついていたリュウを捕まえて半分脅しながら竜宮外の海へ戻ることができた。
「なんなんだよ、もう」
砂浜で困惑しているリュウに軽くお礼を言い、すぐに神々の使いツルを呼ぶ。
「なんか行き当たりばったりだからか、そろそろオーナーに気づかれそう……」
ヤモリはヒメちゃんを少し睨みつつ、おはぎと栄次に疲れた顔を向けた。
「よよい! 行き先は?」
ツルが来たので駕籠に乗り込む。
「現世だ、俺達の家あたりまで」
栄次が疲れきったヤモリに代わり行き先を指示する。
「よよい!」
独特な話し方をしながらツルは空へと飛び立っていった。
「それで? なにか収穫はあったのかの?」
呑気なヒメちゃんが竜宮のお菓子を食べながらヤモリに尋ねた。
ツルが引く駕籠は電車のボックス席。ヒメちゃんは旅行気分か?
「まったく……。あのね、冬におはぎちゃんが行った竜宮の結界は何かの神が封印されているらしく、イドさんとオーナーがそれのカモフラージュのために遊園地を作ったことが判明したの」
「なんじゃと!」
ヒメちゃんは口のまわりにお菓子をつけて叫んだ。
「うん、だからさ、旅行しに行ったわけじゃないじゃん……」
「まあまあ、なんとかなったんだし……」
おはぎは小さくヤモリをなだめ、ヤモリはため息をついた。
「……それで次は?」
栄次がヒメちゃんにどうするか尋ねた。
「そうじゃなあ……できればパァパとオーナーが何かを封印する前を見たいのぅ」
「それはすぐには無理ね。今回はかなり危なかった。バレたかも。あそこスタッフも立ち入り禁止だったの」
ヤモリはヒメちゃんのお菓子をつまみ食いしながら答えた。
「じゃあの、次は過去を見る栄次をそこに連れて行こうぞ!」
「話、聞いてた?」
話を聞いていないヒメちゃんにヤモリはうんざりした顔を向ける。
「あ、えっと、じゃあ私、もう関係ないよね?」
おはぎがこの際だからと抜けようとしたら、ヤモリとヒメちゃんに首を横に振られてしまった。
「よっ、竜宮御用達! 情報を運ぶのだ!」
「じゃ!」
「ちがうからね!?」
二人に半泣きで答えたおはぎはまだまだ協力は続くのだと肩を落としたのだった。