最終決戦1
あたたかくなった頃、桜が咲き始める不安定な時期だった。おはぎは再び時神さんのおうちにいた。
外は季節の変わり目で激しい雨と風。
春の嵐なのか現在はそこそこ寒い。
時神の家に集まった面々に笑顔はなかった。
「どうなっちゃうのかな……」
おはぎは青い顔でつぶやいた。
「とりあえず、竜宮に招集命令がかかって、外には臨時休業って話を出してる」
ヤモリが栄次を見て、確認をとった。
「だよね、栄次」
「ああ。竜宮に来たれとの通信が届いた。おはぎ、お前は今回、竜宮に来なければならない」
栄次は緑茶を飲みながらため息をついた。
「……な、なんで……?」
「お前はあの龍神を止めた飛龍が住む地域のイシガメの子孫。不老不死と知恵の象徴、竜宮との関係もある。飛龍はあの龍神が出てきたら止めに入るだろう。もちろん、俺もだ。お前の力は飛龍を強くするはずだ」
「で、でも、私は何の力も出せないただの亀神なんだよ!」
おはぎは不安げに叫んだ。
「……飛龍が力を引き出すだろう」
「飛龍さんだってそんなに知らないのに、大丈夫なのかな」
「お前には先祖の亀達から受け継いだ力がある」
栄次に言われ、おはぎは首を傾げた。
「そう? ……平和のために私の力が必要なら行くかあ……」
おはぎが出されたお茶を一口飲んだ時、障子扉が開いてヒメちゃんが現れた。眉を寄せている。
「ああ、ヒメ……大丈夫?」
ヤモリが尋ねた。
「ワシは問題ないぞい。パァパの謎はわかったのじゃが、ワシが何故、西の剣王軍なのかはわからぬ……。パァパは東のワイズ、オモイカネの軍じゃ。竜宮から追い出されて東に助けを求めたのじゃろう。竜宮の記憶をこないだ聞かせてもらったが……ワシがしばらくツクヨミに守られていたことは記憶にないし、いつタケミカヅチの軍に加入していたかも覚えておらん……」
「イドさんが信仰が集まらないヒメちゃんを心配して西に入れたのかなあ」
おはぎが小さくつぶやくと、ヒメちゃんは下を向いた。
「だったら……パァパと同じところが良かったのじゃ……。なぜ、わける意味が……」
「まあ、それは……もう、本神がしゃべるはずだから、本神に聞いた方がいいかもね」
ヤモリに言われ、ヒメちゃんは眉を寄せつつ、子供らしくむくれながら頷いた。
「……では、そろそろ、行こうか」
栄次が顔を引き締めると刺々しい気が舞った。おはぎ達はやや震えつつ、立ち上がった。




