秋の大遊園地3
順番が来た。おはぎは緊張して忙しなかったが、本当は案内役の役をやっているため、お客さんとアトラクションに乗る必要はない。
ただ、おはぎはそこまで考えてはいない。
「大丈夫か……これに乗りながらあの封印の神力がこちらに流れているのかの確認をするということか?」
栄次に問われ、おはぎは首を傾げながらヤモリに連絡をする。返事はすぐに来た。
「そう、そのとおり!」
「……はあ。そうだって」
「おおう……ガゴンガゴン言っておるのぉ! 一回転するのかのぅ!」
なんだか楽しんでいるのはヒメちゃんだけだ。
龍がモデルの乗り物に乗せられ、ジェットコースターは稼働した。
ジェットコースターが登る中、アナウンスが入る。
「秋の大遊園地! 過去最高スピードでいっくよー!」
「はあ! えっ!」
おはぎはかなり高いところまで来てから顔面蒼白になった。
「最高スピードの最高を目指す! シャアアウ!」
ふと、後ろにいたお客さんの声がした。シャウシャウとシャウト……している。少し前に聞いたヤバい雷神の特徴にシャウと叫びながら蓄電するというものがあった。
「まさか……」
おはぎは少しだけ後ろを振り返った。
テンガロンハットをかぶった、袴にワイシャツで眼鏡の青年がノリノリで蓄電していた。
「なにしてるの……まさか……」
「シャシャシャシャーウ! そろそろ放電して最高スピードに!」
「ひぃい!」
「あ、くしゃみ出そうなんだナ……」
ジェットコースターが落ちる瞬間、シャウと叫ぶ青年が、小さく声をもらした。
「ぶあっくしょん! シャーウ!」
青年からものすごい量の電気が流れた。
「ひぃぃ!」
おはぎは死んだと思ったが、最高スピードでくだるジェットコースターを楽しむヒメちゃんが結界をおはぎに張っていた。
隣の席では栄次が安全バーを外して刀を構えていた。飛んでくる電気の神力を霊的武器の刀で神力ごと切り裂いたらしい。
しかしどういう現象か、栄次は平然と安全バーを外してジェットコースターに乗れている。
「くしゃみとして出ちゃったんだナ……シャウ……。神力をジェットコースターに流すつもりだったのに」
ジェットコースターが高速で動いているが彼も平然と安全バーを外して話している。後ろにいた神々も結界をそれぞれ張り、何事もなかったかのように騒いでいた。
「もう一回やるんだナ! シャシャシャシャーウ!」
「……やめろ」
栄次はあきれた声をあげた。
「シャウシャウシャーウ!」
「はあ……」
高速でジェットコースターが動く中、栄次は飛んできた雷を神力で切っていく。乗客は何かのショーかと楽しそうだ。ジェットコースターの上で普通はショーはしないが、竜宮に来ている客は皆、おかしいらしい。
ちなみにおはぎはもう白目を向いている。
「行くのじゃ! ゴーゴー!」
ヒメちゃんも元気に叫び、まるで映画撮影だ。
「な、なんで平然とコースターの上に立てるの……」
おはぎは瀕死のままつぶやき、ジェットコースターは一回転をした。
栄次は片手でバーに掴まりながら電気を帯びた雷神の電気を斬っていく。火花が高速で後ろに流れる。
「なんだ、これはグルグルと……」
「シャシャシャシャーウ! ハイスピードなんだナ!」
一回転が終わり、元に戻った栄次はまたもコースターの上に乗り、雷神の謎の攻撃を斬っていく。火花が散る度にややコースターが加速している。
「うははー! 楽しいのじゃあ!」
「ちょっと、ヒメ、君ね、この動作が神力のものか調べているわけ? おはぎが気絶してて電話に出ないの!」
楽しそうなヒメちゃんにヤモリがテレパシー電話をかけ、怒りをぶつけた。
「大丈夫じゃよ。調べたからの。シャウが邪魔をするんじゃが、これはシャウの神力ではないのう。このジェットコースターを動かしている動力源は、龍神の神力じゃ。あの封印のな。封印の神力にかすかにパァパの力を感じるが、パァパは雷神でもある。シャウの転生前個体からもらったと、こないだわかったからの、この神力はパァパではなく、あの封印されている神のものじゃ」
「なるほど。やはり、あの封印されている神の神力を遊園地に流して動力源とすることで、封印されている神の力を落として封印させているわけだ」
ヤモリが言葉を発した直後、ジェットコースターは定位置に戻ってきた。
「終わっちゃったんだナ……」
雷神シャウは悲しそうにジェットコースターを降りていき、まわりからは謎の拍手が送られた。
「厄介な神だ……」
「賀茂別雷神なんだナ! シャウは別雷じゃないといけないんだナ! 若くないといけないから自分が若くないと思ったら転生するんだナ! シャシャシャシャーウ!」
雷神シャウは持っていたステッキを楽しそうに振っていた。
「……シャウって……一人称……なんだ」
未だ白目をむいているおはぎが小さくつぶやいた。
「転生個体……どこの前世かわからないんじゃが、パァパに雷の力を与えたことを覚えておるかの?」
ヒメちゃんが尋ねたがシャウは首を傾げた。
「んー? 知らないんだナ! シャウシャーウ!」
シャウは楽しそうに踊り始めた。
「ヒメ、栄次を使うの」
ヤモリに声をかけられ、ヒメちゃんはおはぎを回収している栄次を呼んだ。
「栄次、シャウの過去を覗けるかの?」
「ああ……そうだな」
栄次は頭を抱えつつ、シャウに過去見をおこなった。




