夏のお祭りイベント3
海辺でガッツリ遊んでいたヒメちゃんを連れ戻し、ヤモリ達はカメに連れられ海へ入った。
海中に竜宮はあるがカメが先導すると息ができる。これは毎回不思議だが、カメのデータが水というデータを弾いているようだ。
だから濡れない。
いつの間にか海底の先に進み、地面に足をつけていた。
上を見上げると海がある。
これも不思議現象だ。
「ふぅ、これでよしさね? じゃあ、夏祭り、楽しんでー」
カメは笑顔で地上へと帰っていった。
「さあ、行こうか。おはぎちゃんはあの使いのカメを真似するの」
「え、ええ……わ、わかったさね?」
ヤモリに向かい、とりあえず真似をしたおはぎは顔を真っ赤にして恥ずかしがった。
「いいじゃない」
「夏祭りじゃあ!」
ヒメちゃんはひとりで盛り上がっている。
「今回は栄次、あなたに頑張ってもらうね」
「……俺はいつも頑張っている……」
一同は竜宮内を歩きだした。
スタンプラリーに屋台、遊具はなんだか華やかだ。夏のアトラクションの水を頭からかぶるジェットコースターが人気らしい。
ちょうちんが灯り、なんだか本当に祭りだ。
「夜は花火もやるらしいぞい!」
ヒメちゃんはいつの間にかパンフレットとスタンプラリーの紙を持っていた。
「……ここではね、もうひとつ、大変人気なアトラクションがある」
ヤモリが冷や汗をかきながら飛龍がいる建物の階段をのぼる。
この受け付けを抜けた先の階段の一発目でかち合うのが飛龍。
「この飛龍が人気なアトラクションをやり始めたわけ」
ヤモリが階段をのぼった先に飛龍の闘技場アトラクションがあった。とりあえず、中に入る。
アトラクションはめちゃくちゃ混んでいた。
「よーう!」
すぐに飛龍が声をかけてきて、おはぎは縮こまる。
「アズマカタ ゼロウスへようこそ~!」
「……ふう、なんかシューティングゲーム色々混ざっているような気がするけど……」
飛龍は水鉄砲をヤモリに投げてきた。おはぎ、栄次が顔色青くなり、ヒメちゃんは水鉄砲のひとつをとって撃ってみた。
すごい勢いで水が飛んでいく。
「ああ、それをあたしに当ててみろ! 皆! すごいゲストが来たゼー!」
飛龍は栄次を見て楽しそうに笑い、観客が沸いた。
「さあ、現れたのは四柱の勇者達! あたしに勝てるかな?」
四柱はとりあえず水鉄砲を持つ。
「嫌な予感がするのだが……」
栄次が眉間にシワを寄せたまま、つぶやいた。
飛龍は水流を纏い、栄次達にぶつかってきた。
「お前らは死なないようにしな! あたしに当たれば勝ちだ! 水鉄砲は竜宮の巻き戻しシステムで何回も水が補充されっから安心だな!」
栄次がおはぎを抱えて慌てて後ろに下がる。
飛龍の水流は当たったら一撃で大怪我確定なくらい固かった。
なぜか地面が抉れている。
「ひ、ひぃぃ!」
おはぎが悲鳴を上げ、飛龍が笑う。
「また上にバーがあるから、なくなったら負けな!」
飛龍が再び水流を纏わせ、今度は渦潮を発生させた。
「あーもう」
ヤモリが手をかざし、結界を張り、かわす。
「で、で、これどうするの!」
おはぎが悲鳴をあげながらも作戦を聞こうとした。
「このまま、あの封印があるところまで走れたら走って」
おはぎはヤモリにそう命じられたが首を激しく振った。
「ワシはここで水鉄砲を楽しむぞい!」
ヒメちゃんは神力を放出し、水鉄砲に神力を纏わせて放った。
水は鋭い針になり、飛龍を襲う。
「やるな!」
飛龍は軽く避けて着地。
壁に神力が刺さり、壁にヒビが入った。
「もう、尋常じゃないよぅ!」
おはぎは怯えていた。
「目標は栄次をあの封印の場所まで吹っ飛ばすこと!」
「なんだと!」
栄次が目を見開いて焦っていた。
「た、確かにこないだの戦闘であそこまで吹き飛ばされたが、あれは壁を貫通してだな……」
「……なんかうまくなんでもいいから自然に貫通できるようにして!」
ヤモリは水鉄砲に龍神の神力を入れ、飛龍に向かって放った。
弾は飛龍を追尾し襲う。
「そ、それはどうやってるの!」
ひとり戸惑うのはおはぎだけ。
「おはぎちゃん、龍神の使いらしくして」
「わかんないってば!」
「栄次が壁を貫通したら、私と龍神の使いらしく、栄次をお客様として扱うの、わかった?」
「その、俺が貫通とは……」
栄次が困惑しながら飛龍の水流を斬っている。
「あれ、斬れるのかの?」
ヒメちゃんは楽しそうに飛龍から逃げ回っていた。
「うん、イイ感じ。お客様の栄次とお子様のヒメちゃん。おはぎちゃん、私らは一応従業員。飛龍と戦う必要はないからね!」
ヤモリがおはぎをすばやく背中に回し、ヒメちゃんと栄次の戦闘を見守る。
「水鉄砲……使い方がわからぬ」
栄次は水鉄砲片手に刀で水流を斬っている。そのうち飛龍が肉弾戦に入った。栄次が水鉄砲で飛龍の蹴りを受け止めて受け流す。
「さあさあ! 過去神栄次は強いんだ! 見ろ!」
飛龍が盛り上げ、観客の歓声が響く。
「ここ最近、あたしに会いに来てくれるじゃないの! 戦闘にハマってきた?」
「……そうではないが……」
栄次は飛龍に深くは話せない。
飛龍の拳をうまく避けながら栄次は迷う。
「じゃあ、なんだよ? なんかやべぇこと、してんの?」
飛龍が笑いながら回し蹴りをし、栄次が慌てて反ってかわした。
気がつくと後ろの壁が崩れていた。
「あー、避けて正解。ちょっとかまいたちが出ちゃった!」
「……ふぅ」
栄次が冷や汗を拭いながら崩れた壁を見た。壁が崩れたが、不自然なく向こう側に行かなければならない。
「なんだよ、壁が気になるのか?」
「……いや」
栄次が言った刹那、飛龍のかかと落としが勢いよく落ちてきた。
栄次は後ろに下がりかわす。
「なんだよ? なに隠してんだよ、なあ?」
「……仕方ない」
栄次は霊的武器刀を消し、水鉄砲を構えた。銃は使ったことがない。なのでただ構えただけだ。
飛龍は楽しそうに笑うと栄次に向かい神力の拳を振り抜いた。
「撃ってみろよ!」
栄次はわざと飛龍の拳に当たった。勢いよく壊れた壁に突っ込んで飛んでいった。
「あー! お客様!」
ヤモリが慌てて走り、おはぎもついていく。
「えー、お客様ぁ! てか、あれ生きてるのー!?」
闘技場に残ったのはヒメちゃんと飛龍だ。
「で? なにしてんのさ?」
「何にもしておらぬが……」
ヒメちゃんは水鉄砲をクルクル回して笑顔を向けた。
「なんかあるんだろ?」
飛龍が栄次の方へ向かおうとしたので、ヒメちゃんが神力を放出した。
「どこにいくのじゃ。ワシはまだ遊びたいぞい」
「ああ、そう!」
飛龍が水弾を指から発射させた。ヒメちゃんは結界で軽く弾く。
「まあ、ワシもそこそこ、強いぞい?」
ヒメの含み笑いに歓声が沸いた。




